Special Issue
磐梯町 自治体本位のシステムをベンダーと実装
2023/02/23 09:00
週刊BCN 2023年02月20日vol.1958掲載
特別講演では、磐梯町のCDO(最高デジタル責任者)/愛媛県の市町DX推進統括責任者である菅原直敏氏が登壇。「自治体本位のシステム実装に向けた自治体とベンダーの共創のあり方~なぜ、磐梯町はシステム開発で既存ベンダーを切り替えたか~」をテーマに講演を行った。
福島県会津磐梯山の麓に位置する磐梯町の人口は3309人(2022年6月30日現在)。21年7月1日には「磐梯町デジタル変革戦略第2版」を策定し、誰もが自分らしく生きられる共生社会の共創を目指している。その戦略に掲げられている六つの将来像の一つが、町役場職員についての「働き方の再デザイン~いつでも、どこでも、誰とでも~」。これらのデジタル変革の司令塔となっているのが、同町のデジタル変革戦略室だ。
「ただ、それを実現するには三つの壁があった」と菅原氏は振り返る。
一つは、システムの要件定義を実現するための人材が少ないことによる“要件・要求定義の壁”。従来はITベンダーなどの民間事業者に要件定義を任せていたのだが、それでは住民本位のシステムは作れない。そこでデジタル変革戦略室は官民共創型副業人材を大幅に採用して、要件定義能力を拡充。副業人材が東京・渋谷のサテライトオフィスから完全オンライン・ペーパーレス・リモート型で仕事ができる体制を整えた。
二つめは、“既存ベンダーの壁”である。要件定義を済ませてゼロトラスト型のクラウドシステムの構想がまとまり、過去に取引のあったITベンダーに見積もりを依頼したところ、提出されたのはオンプレミスでの提案だったのである。そのため、磐梯町はこれまで公共事業を手がけてこなかった別のITベンダーと協定を結んで、開発を依頼することにした。
さらに、開発作業に着手すると、“実装の壁”という三つめの壁にもぶち当たった。例えば、自治体はクレジットカードを持っていないので、クラウドの利用契約を結びにくかったのである。そこで、磐梯町は法人クレジットカードを取得して対処。アジャイル型やスパイラル型での開発をしやすくするために、ITベンダーとは準委任契約を交わして仕事を発注することにした。
「民間の事業者さんは、顧客とは誰か、自分たちは顧客本位の価値を提供できているのかを、ぜひ考え直してほしい」と菅原氏。ITベンダーは既存のビジネスモデルに固執するのではなく、自治体とミッションを共有して住民に価値を提供してほしいことを強く訴えた。
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