Special Issue
経済産業省 デジタル化で産業構造と競争力の変革へ
2023/02/23 09:00
週刊BCN 2023年02月20日vol.1958掲載
基調講演では、経済産業省の商務情報政策局情報経済課アーキテクチャ戦略企画室長の和泉憲明氏が登壇し、「デジタル化による産業構造と競争力の変革 -DX推進の国内外動向から方向性を読む-」をテーマに講演を行った。
経済産業省がDXレポートを発表してから、すでに4年が経過。DXに取り組む企業は中堅・中小企業を含めて増えつつある。和泉氏は「DXレポート2.xでわれわれが伝えたかったのは、業界横断のエコシステムを構成するデジタル産業が立ち上がり、これに参画できればビジネスをグローバルにスケールすることが可能になる」と説明した上で、海外プラットフォーマーはこの領域で戦略的にデータを収集して競争優位性を獲得しようとしていると指摘した。
では、DXの推進によって日本の産業競争力はどのように変わるべきか。和泉氏は「高速鉄道システムの分野で欧州企業の国際競争力が高まっているのは、車両や保線など、システム単体で勝負するのではなく、包括的な事業パッケージとしての社会的な収益モデルを相手国に提供しているためだ」との仮説を提示。データ連携を規格化することで、さまざまな組織・企業が迅速・容易・安価に連携可能になっていると述べた。
この仮説に立つと、DXに向かう変革期においては、経営者や技術者などのDX人材による見通しや目利きの力が重要というのが和泉氏の主張。デジタル中心のプロセスとして既存ビジネスを再設計し、専門家の役割が再定義できれば、ゲームチェンジが実現可能になるという。工業製品の競争力の源泉はソフトウェアと半導体に収れんされ、製造業においてはデジタル化された共通プラットフォームが普及し、内製指向から外部共有化への変革が進むはず。結果として、仮想化とシミュレーションを駆使して、製造プロセスを俊敏に企画・設計するラインビルダーや、実装・稼働までをフルターンキーシステムとして提供するプレヤーがデジタル変革で台頭している。
DXは100年に1度の大変革。この変革期を勝ち抜けるには、他社の先行事例に頼って自社サービスの未来を描くのではなく、デジタルアーキテクチャーの設計が重要だ。人口増加を前提とした従来の社会インフラが人口減少期に適応するには、デジタルインフラの導入により、人間中心で社会問題の解決と産業の発展を可能とする社会全体のDXが不可欠。「その方法論としては、将来のビジョンから逆算して現状とデジタルインフラのアーキテクチャーとのギャップを可視化し、デジタル産業としての変革を検討するバックキャスティングが適している」と、和泉氏は強調した。
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