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ITジュニア通信2022年12月<第11号> 若者よ、どんどん「化けろ」──日本の将来を左右する中学・高校のプログラミング教育

2023/01/16 12:45

週刊BCN 2022年12月19日vol.1950掲載


 「ITジュニア賞の表彰式に出席した際、親御さんたちのお話をうかがう機会があった。学校の勉強が大嫌い。スポーツも大嫌い。でもゲームやプログラムだと目を輝かせ、やめろというまでやり続けると。ハッとした。古い社会的感覚だと劣等生かもしれないが、若者の新しい能力を開発して、大きく育む活動は本当に意義がある。改めて気が付いた」。コールセンターなど顧客サポートビジネスを展開する、キューアンドエーを率いる川田哲男・代表取締役社長に、IT、プログラミング教育の重要性について聞いた。
 
 

 日本人で初めてマスターズ優勝を成し遂げた松山英樹氏や「二刀流」でMVPを獲得した大谷翔平氏、カタールW杯で2度のジャイアントキリングを達成したサッカー日本代表の例を引くまでもなく、スポーツでは、世界で戦える人材が続々と誕生している。「若者の能力は鍛え方次第で『化ける』というのは、スポーツで立証された。IT、プログラミングの領域でも世界と伍して戦える素地はあるはずだ。スポーツと違ってテレビなどのメディアがあまり派手に取り上げない。どうやって入り口まで誘うかが、とても大事だ。手取り足取り教える必要はない。あとは、若者が備える、突っ走る力で自ら道を切り開いていくはずだ」と川田社長は話す。日常的にスマートフォンやPCがある時代に育つ現代の若者であっても、仕組みを作る側に回るとなると、仕掛けが必要、というわけだ。「ITジュニア育成交流協会(協会)がサポートしているU-16プロコンは、幅広く機会を提供できる点で有意義だと思う。人材を成長させるには、まずその分野の人口を増やすこと。そうすれば、天才が見つかる確率も上がる」。
 
キューアンドエー
川田哲男
代表取締役社長

 しかし、いくら隠れた才能を発掘できても、社会で開花できなければ意味がない。川田社長は「才能をどう生かすか、産業界の責任は重い」とし、「これから日本のコアな産業として、プログラミングは有望な分野だ。成功すれば日本経済全体の活性化にもつながる。しかし、日本企業の人材観は、得てして基礎的な人間性が前提。才能はそこから先という考え方だ。仮にプログラミングで頂点を極めた若者が産業界に入ったとしても、企業が型にはめてしまいがちだ。多様性を重視する社会では、まず才能ありきでもいいのではないか。個人の強みとペースを尊重して働ける環境づくりを考えなければいけない。企業として、個々のタレントに対するサポートは、ひと工夫、ふた工夫する必要がある」と指摘する。

 コロナ禍を経て働き方の多様性は一気に広がった。これを一つの契機として、産業界の大胆な変化にも期待したい。

 「人口が減少していく日本で、企業の成長と豊かさを右肩上がりで維持するのは簡単なことではない。質を上げていく必要がある。人間の伸びしろがもっともあるのは中学から高校の年代。彼ら、彼女らをどう育てるかが、日本の成長にとって最も重要だ。しかし企業単体では、できない部分もある。協会に協賛することでそこを託している」と川田社長は語る。協会も、この期待に、しっかりと応えていかなければならない。
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外部リンク

ITジュニア育成交流協会=https://www.ajitep.org/