Special Issue
「ネットワールドIBM Day2022」を開催 サステナブルなITを導くカギ
2022/12/27 09:00
週刊BCN 2023年01月16日vol.1953掲載
SXソリューションで緻密すぎる ESG投資を把握しやすくする
ネットワールドIBM Day 2022の前半部は「IBMと考えるITで実現するサステナブルな社会」。ネットワールドの若松氏からの経営に関するサステナビリティの問いに日本IBMの小島氏が答えるトークセッションのスタイルで実施した。小島氏は、まず、投資基準の一つとして広まりつつあるESG(環境・社会・企業ガバナンス)の考え方を説明した上で「ESGへの投資を企業収益に結び付けるには、SXソリューションの活用がDX活用と同じくらい日本企業にとって経営の鍵になる」と指摘。経済産業省のデータによると炭酸ガスは世界で年間約350億トン、国内でも約10億トン排出と試算されている。カーボンオフセット(炭素相殺)取引など、事業の収益化に最適なKPI構成を明確にするSXソリューションの提供が会計コンサルタント会社などを中心に始まっていると説明した。
具体的なSXソリューションとして小島氏が紹介したのが、IBMコンサルティングが提供する「IBM Digital Twin for Sustainability Estimation(DTSE)」だ。デジタルツインを使ったシミュレーションにより国際基準のスコープ1,2,3にのっとった温室効果ガスの排出量削減を予測することはもちろん、どのような優先順位で対応を行えばよいか数理最適化で解明してくれるというものだ。ここではDecision Optimization/CPLEXというIBMの数理最適化ソルバーが利用されている。「数理最適化の技術、製品は、送配電、製造ラインの構成、トラックの配送経路などの領域に広く使われている」と小島氏。「近年注目されている他社製のアニーリング型量子コンピュータで脚光を浴びた数理最適化のユースケースでは従来型のコンピュータでも同等かそれ以上の計算がすでにされてきている」と説明した。
DTSE半導体など製造業向けのユースケースが用意されているが、ビジネスパートナーが知見を持つ業界向けのものを、Decision Optimization/CPLEXを使い独自のSXソリューションを作ることも可能。ベースとなるシステムの導入と運用、Webアプリケーション開発などシステムインテグレーションができる。
「システムインテグレーションのためにCPLEXの計算エンジンをIBM Cloud Pak for Dataで稼働させるにはRed Hat OpenShift、Watson Studio、Watson Machine Learningなどが必要となり複雑になりそうだ」と若松氏。この指摘に対して、小島氏は「ビジネスパートナー様と共に、Red Hat OpenShiftやIBM Cloud Pak for Data、CPLEXソルバーが事前にインストールされたアプライアンスなどの提供が進むことを期待している」と応じた。
IBMの最新情報を解説 AITとエルテックスはサービスを紹介
後半部では、日本IBM+ネットワールド、AIT、エルテックスの各社が製品やサービスについての最新情報を紹介した。日本IBMで最新のトピックスといえば、2022年10月4日に発表された「Red Hat OpenShift Data Foundation(ODF)のストレージ技術とIBM Spectrum Fusionの統合」。小島氏は「オープンソースであり優れた分散ストレージシステムでもあるCephを使う意義は大きい」と述べ、分散ストレージの概念と利点をストレージシステムであるNFSの歴史にさかのぼり解説した。
また、米VMwareと米IBMのパートナーシップ拡大(22年8月30日発表)によって、VMwareアプリの実行場所に関係なくIBM Cloud Satelliteを利用できるようになる見通し。WebSphere Application Server(WAS)でのJava SE 8サポートは30年までとなる。
続いて登壇したAITのアナリティクス&サービス営業部長の環貫修氏は、分析支援サービスを中心とする同社のAnalyticsビジネスについて現状報告をした。AITがIBM SPSSの取り扱いを開始したのは11年。環貫氏は「現在ではさまざまな業種・業界の100社以上にサービスを提供している」と述べて、自動車製造業、生命保険業、通信企業での導入事例を説明した。
AITの分析支援サービスはCRISP-DMに基づく分析業務を一気通貫でカバーし、顧客の分析ニーズに合わせたステップアップ式で提供されるのが特徴。「当社の分析ノウハウを紹介するためのWebサイト『AI365』の運用も始めた」と環貫氏はアピールした。
エルテックスのクラウドビジネス室長の寺田恵一郎氏は、VMware on IBM Cloudを長期間にわたって使っている顧客の移行事例について詳しく解説した。
エルテックスは17年からVMware on IBM Cloudの提供と構築・運用サービスを手がけており、その顧客は17年からのユーザー。当初は5台のベアメタルサーバーをVMware vSphere 6.0で運用していたという。
それから6年が経過した22年、VMware vSphere 6.0のサポート切れに対応する必要が生じた。寺田氏は「Advanced Cross vMotionを使って、7台のベアメタルサーバーをVMware vSphere 7.0で稼働させる新環境に移行。結果として、コストの低減を実現し、システムを停止させることなく約2週間で完了できた」と成果を述べた。
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