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<対談>ERPの理想像とは? コロナ禍でも進化を続け実績を伸ばすBiz∫の戦略 【NTTデータ・ビズインテグラル社長×週刊BCN編集長】
2022/11/10 09:00
大型グループ会計に強い「Biz∫」
――日本のERP市場の動向をどうみていますか。田中 ERP市場は毎年高い成長を遂げている分野ですが、2020年は新型コロナウイルス感染拡大による案件の先延ばしなどにより、成長は鈍化傾向でした。当社も思ったような営業活動ができず 苦戦しましたが、昨年度から商談も一気に増え始めました。また、お客様が望まれるERP利用形態がクラウド型にシフトしているため、ベンダー側の提供形態にも大きな変化が起きています。市場でもクラウド型やSaaS型が急伸しており、当社の場合、オンプレミス型での商談はほぼないに等しい状況です。
――そのような市場動向の背景には何があるのでしょうか。
田中 コロナ禍という大きな波が押し寄せた結果、多くの企業がビジネス継続の手段にテレワークを選択しました。ところが、従来の基幹システムは在宅勤務を想定していないため、テレワークではできない部分がどうしても残ってしまいます。そこで、クラウドベースのERPへのシフトが加速しているのだと思います。また、企業はDXのためのさまざまなデジタル商材を導入しており、それとERPを連携させて業務を円滑に進めたいというニーズも鮮明になっています。
――競合製品と比較して、Biz∫の優位性はどこにありますか。
田中 まず、NTTデータ イントラマートのワークフローエンジン「intra-mart」の上に業務アプリケーションをのせた仕組みになっている点が大きく異なります。ですから、業務プロセスの自動化に強く、すでにintra-martをお使いのお客様には最適なERPになります。第2に、開発基盤が同梱されています。intra-martのローコード開発環境や、Biz∫独自の開発基盤であるAPF(アプリケーションプラットフォーム)により、ERPではカバーできないユーザ固有の業務や機能を補うことも可能です。第3に、業界固有の要件を満たすためのテンプレートを用意しています。これらのテンプレートは当社のパートナーが作成したもので、商社、建設業、ITなど、さまざまな業種・業態向けのものがそろっています。
――大企業向けのシェアも高いと聞いています。
田中 おかげさまで2021年度は大規模企業向けERPパッケージ市場で年間採用数No.1(注1)を獲得しました。コロナ禍を脱したこと、当社が持っているテンプレートにうまく合う案件を獲得できたこと、マーケティング活動が功を奏したことなどが主な要因と思います。Biz∫は大型のグループ会計を得意としており、多角化経営を進めている大企業でグループ全体のガバナンスを統一して管理・強化しようとするお客様に数多く採用されています。また、販売管理や原価管理などのロジ領域の業務アプリケーションもありますので、商社、小売などの流通業からも高い評価をいただいています。
パートナーに手厚い支援を提供、コンポーザブル指向の製品提供へ
――Biz∫を採用した企業には、どのようなメリットがありますか。田中 例えば、大手小売業のお客様は、「決算の早期化」「基幹業務の効率化」「経営の高度化」「グローバル展開を視野に入れたレガシーシステムの刷新」「内部統制の強化」などの課題を解決するためにBiz∫を導入しました。その結果、従来は約1カ月かかっていた決算処理を10日に短縮することができ、会計業務の作業時間もほぼ半分になっています。また、管理会計のデータを収集・分析する仕組みが完成したことによって、当月の確報を翌月10日までに経営層に提出できるようになりました。このほか、ガバナンス強化や帳簿電子保存によるペーパーレス化も実現できています。
――Biz∫の販売や導入に携わるパートナーに、どのような支援を提供していますか。
田中 当社には約60社のパートナーがあり、OEM製品を提供するOEMパートナー、販売を担当するセールスパートナー、案件においてセールスパートナーを開発面で支援する開発パートナーといった役割をお願いしています。サポートメニューはいくつかあり、例えばBiz∫の経験が少ないパートナーには基礎を学んでいただくための研修コースを受けていただきます。また、パートナー間のマッチングをする仕組みも用意していますので、案件の中で自社では対処できない部分を他のパートナーに受けてもらうことも可能です。さらに、当社の技術者は、提案書作成のお手伝いや要件整理でのコンサルティング、開発工程でのご支援などにも対応しています。
――Biz∫の今後の方向性について教えてください。
田中 当社の戦略や製品にマッチする考え方として、われわれはGartner(ガートナー)の、「未来のERPは『コンポーザブル』になる」(注2)という考えに注目しています。我々が考えるコンポーザブルERPは、ERPそのものの部品化を進めることで、柔軟なシステムの利用を可能とし、ERPでサポートできない領域には、多様なDXソリューションをクラウド上でAPI連携することで、外部の業務プロセスを自動化・効率化します。また、Biz∫内蔵の開発環境基盤については、独立性を高めて、ERP側のバージョンアップによる影響を受けないようにするつもりです。このような方向を目指す“コンポーザブルERP”の新製品は、2023年春にリリースを予定しています。
(注1)富士キメラ総研『ソフトウェアビジネス新市場2022年版』の「大規模企業向けERP」パッケージ(数量)部門2021年度実績
(注2)Gartner, 未来のERPは「コンポーザブル」になる, Koji Motoyoshi, 5 January 2021, Gartner Foundational, 7 July 2022
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