Special Issue
ビジネス知識の獲得と自己啓発にChatworkの動画メディア「ビズクロ Channel」、動画の出稿元に視聴会員の情報を提供
2022/09/21 09:00
ビジネスパーソン向け動画を提供
コーポレートミッションとして「働くをもっと楽しく、創造的に」を掲げる同社の主力事業は、ビジネスチャットの「Chatwork」。組織の生産性向上やコミュニケーション活性化に役立つツールとして、534万ID/36万5000社(22年6月末時点)に活用されているサービスだ。その同社がなぜ動画メディアを始めるのか。このサービスのプロジェクトマネージャーを務めるビジネス本部ビジネスデベロップメントユニットDXソリューション推進部の佐々木康正氏は、「当社は以前からオンライン展示会を開催しているが、獲得できるリードに継続性がなかった。出展社にとっても参加者にとっても1回限りの接点なので、顧客接点を持ち続けることが難しく次につなげられない。そこで、会員登録制の動画メディアを立ち上げて、継続的に見てもらおうと考えた」と説明する。
ビジネスモデルはとてもシンプルだ。ビズクロ Channelのトップ画面には出稿社が制作・登録した多数の動画ブース(動画コンテンツ)がカテゴリ別に並んでおり、会員登録(無料)したユーザーは何度でも自由に視聴が可能。登録されている動画コンテンツはビジネスパーソン向けのものばかりなので、会員はビジネスの即戦力となる知識を獲得できるほか、自己啓発のためのヒントを手にすることができる。
一方、出稿元企業には、動画コンテンツの掲載に所定の費用がかかる。その代わりに、その動画コンテンツを視聴した会員に関する情報(リード情報)がリアルタイムで提供される仕組み。つまり、動画コンテンツの視聴者に個別に接触して、自社ソリューションについての補充説明をしたり、購入を促したりといったセールス活動に活用できるわけだ。
サービスの立ち上がりスピードも速い。開始後約4カ月の時点(22年8月末)で、登録済みの会員は約2000人。すでに、30を超える出稿社が40点超の動画コンテンツを掲載している。
自分が見たいカテゴリから効率よく動画コンテンツを選べる
視聴する会員にとってのビズクロ Channelの最大の魅力は、コンテンツの全てが動画になっていることにある。もちろん、従来から広く使われているWebサイトも作り方によって理解しやすく分かりやすいメディアにすることはできる。しかし、テキストを読み込まなければならないことが多く、複数のWebページにまたがっているコンテンツではURLのリンクをたどっていく必要もある。画面デザインもPCでの閲覧を想定したものも多くあり、移動中やスキマ時間にスマートフォンやタブレット端末で手軽に見るのには向いていない場合もある。
それに対して、ビズクロ Channelのトップ画面は動画コンテンツのサムネールがタイル表示で並んだデザインになっている。それぞれの動画コンテンツはカテゴリにまとめられているので、視聴者は自分が見たいカテゴリの中から選んでいく仕様だ。
ビズクロ Channelでは、カテゴリの構成にも一工夫している。「単発的なテーマをばらばらに掲載するのではなく、実務や会社経営に生かせる課題設定型のカテゴリをいくつか設けて、その中に動画コンテンツを並べるようにした。そのようなカテゴリ構成にすれば、自分が何を見ればいいのか分かっていない視聴者に導線を提供することもできる」と、佐々木氏。特に重要な課題と判断しているのは、「最新のビジネストレンドへのキャッチアップ」「最新のビジネス課題」と「職種特有の課題」の二つだ。
22年8月末の時点で、最新のビジネス課題に関連するカテゴリは「講演」「お悩み別にサクッと解決! これ1本で丸わかりシリーズ」「今から始めるDX推進」「脱・自転車操業! 売上UPのすゝめ」「人を伸ばす人材マネジメント」「伸びる企業の業務効率化」「知られていないコスト削減特集」の七つ。ほとんどの動画コンテンツは管理職~経営層向けだが、中にはデジタル変革(DX)や検索エンジン最適化(SEO)などの現場担当者に役立つものもある。また、最新のビジネス課題についてはテーマの鮮度も重視。佐々木氏は「特集タイプのカテゴリは毎月のように入れ替えている」と話す。
これに対して、職種特有の課題についてはカテゴリの入れ替えはほとんど行われない。同じく22年8月末時点で設けられているのは、「セールス・マーケティング」「経営」「人事・労務」「法務・総務」「情報システム/セキュリティ」の五つ。「例えば、人事向けの動画コンテンツを経理の人が見ることはまずない。だから、カテゴリを固定しておけば、その人の仕事に関連する動画コンテンツだけを継続的に見てもらうことができ、効率の良い課題解決を示唆できる」(佐々木氏)としている。
Zoom録画機能で10分程度の動画を出稿社が自ら制作して登録を依頼
では、ビズクロ Channelに出稿しようとする企業は、動画コンテンツをどのように制作し、登録すればいいのか。まず、動画コンテンツは出稿社が自ら制作するのが基本だ。「推奨しているのは、Zoomの録画機能を利用して制作する方法だ」と、佐々木氏。PCへのローカル録画(.mp4形式)は全てのZoom契約で可能なので、費用もほとんどかからないことが魅力だ。もちろん、ビデオ撮影の施設や装置を持っている企業はそれを使えばいいし、出来栄えを重視するのなら外部の専門業者に制作を依頼することも可能だ。
動画コンテンツの長さ(尺)に特に制限はない。ただ、長い動画コンテンツは視聴者に途中で離脱されてしまいがち。佐々木氏は「10分を超えると離脱率が高くなり、3分より短いとCMっぽくなってしまう」「10分の動画作成であれば、(Chatworkの担当者のフィードバックも受けながら)未経験でも工数を最小化して動画作成していただける」と指摘する。
実際の制作にとりかかる前に、Chatworkの担当者に内容を確認してもらうこともできる。「最初に、作ろうとしている動画コンテンツの意図を1時間程度のWebミーティングで確認する。その後に原稿やプレゼンデータなどの資料で誤字脱字をチェックし、ストーリー構成などについての提案をフィードバックする」と佐々木氏。このようなプロセスを経て制作される動画コンテンツについて、登録時の審査は行われない。
ビズクロ Channelへの動画コンテンツの登録は、Chatworkの担当者が行う。この点が、出稿社が自らアップロードできるYouTubeなどとの大きな違いだ。また、掲載期間(掲載期限)も特にナシ。佐々木氏は「出稿社が取り下げない限りは、掲載が続くことになるが月額固定費用は徴収していないので、視聴数がゼロのまま推移すれば請求額も発生しない」と説明する。
情報感度が高い決裁権限者が多くセールスでの成約率に期待
このような仕組みで運営されているビズクロ Channelは、製品やサービスを企業に提供している企業にとってマーケティングやセールスのための有力なツールとなる。「ビジネスパーソンがかかえる課題から、それらを解決するための製品やサービス」というストーリーで動画コンテンツを制作しておけば、質の高いリードを獲得することができるからだ。また、“母集団”となるビズクロ Channel会員の特性も魅力的だ。「現在のところ、経営者層の比率が約30%。係長職まで含めれば約70%に達する」と佐々木氏。情報感度が高い決裁権限者とのアポイントを取得しやすいので、それだけ高い成約率が期待できると強調する。企業規模(従業員数)もSOHO・中堅中小企業から大企業までをカバーしているので、どのような商材を訴求する場合でもターゲットを見つけるのは容易だ。
ビズクロ Channelへの動画コンテンツ掲載申し込みは、二つの方法でできる。
一つは、企業がChatworkに直接に連絡して申し込む方法。本記事末に記載されている「掲載希望企業用お問い合わせフォーム」か「その他お問い合わせフォーム」に必要事項を入力して送信すると、3営業日以内にChatworkの担当者から連絡がくる。
もう一つは、Chatworkの営業担当者からのオファーに応える方法だ。特集タイプのカテゴリを新たに企画するにあたって、Chatworkはそのテーマに合った製品やサービスを販売している企業を調べてオファーを出すようにしている。このようなカテゴリは最新のビジネスニーズに即して設定されるので会員の注目度も高く、同じテーマに関係する製品やサービスが集まるので高い集客率も見込める。必ずしも全ての企業が利用できる申し込み方法ではないが、オファーを受けた企業はなるべく応じたほうがいいだろう。
佐々木氏は「今のところ、534万IDを数える『Chatwork』の会員を『ビズクロ Channel』に直接に取り込むことは考えていない。しかし、『Chatwork』も『ビズクロ Channel』も『中堅中小企業の課題を解決する』という当社のミッションを実現するためのサービスであることは同じ。われわれは多様なサービスで中堅中小企業のDX化を支援していきたい」との考えを示す。
平均寿命の延長と社会変化のスピード化を背景に、今、最新のITを活用したリスキリングやリカレント教育(学び直し)が注目されている。また、セールスや接客の現場ではスマートフォンの動画を活用したロープレ(役割演技法)によるトレーニングも盛んだ。そうした流れの中で、自社制作の動画コンテンツを活用したリード獲得には大きな意味があるはず。展示会やセミナーなどの従来のやり方で集客に悩んでいた企業も、ぜひ試してみるべきだろう。
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