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ITジュニア通信2022年7月<第6号> 旭川の熱気を長野にも──最も成功した立ち上げ事例の一つ 「U-15長野プログラミングコンテスト」
2022/07/21 09:00
週刊BCN 2022年07月18日vol.1931掲載
小・中学生にプログラミングの楽しさを広めたい。そんな思いから全国でU-16/U-15プログラミングコンテストの輪が広がりつつある。長野県では2018年に「U-15長野プログラミングコンテスト」がスタート。今年も10月に5回目を開催する予定だ。立ち上げのキーマンは、長野商工会議所の北村正博会頭だ。きっかけは17年11月。北海道旭川市でU-16プログラミングコンテストを視察したことだった。「長野でもぜひとも、あの熱気ある大会を開催したいと思った。帰りの飛行機の中で早速、どうやれば長野で実施できるかを考え始めた」。そう語る北村会頭に、立ち上げまでの経緯を聞いた。
プロコンを始めるにあたり、「三つのことを同時に始めた」という。「一つは子どもたちを集めること。まずは教育委員会と思って長野市の教育長に話し、小中学生を集めてもらおうと考えた」。具体的には、商工会議所で作った募集チラシを校長会の場で配布し、小・中学校に展開してもらった。
「次は講師を集めること。信州大学や長野高専、長野工業高校を訪ね、協力を依頼した」。それぞれの学校から先生や生徒の協力を得て、事前講習やコンテスト実施の核ができた。
長野県の老舗SIerのシステックス社長も務めている北村会頭。地元の政財界をはじめとする人脈は豊富だ。プロコンの意義を各方面で熱く語り、次々と賛同の輪を広げていった。
「三つめはPCの用意。事前講習会を開き、その場でプログラミングを教えても、自宅で自由に使えるPCがなければ意味がない」。北村会頭は地元のマウスコンピューター飯山工場の工場長に会いに行く。粘り強い交渉の末、30台ものノートPCを提供してもらえることになった。
プロコン開催に必要な要素はそろってきたものの、もう一つ必要なものがある。予算だ。実は、当時の加藤久雄長野市長は長野商工会議所の前会頭。加藤市長の市長選出馬に際し北村氏が会頭が引き継いだという経緯があった。もちろん両氏は懇意な間柄だ。プロコン開催にあたっても加藤市長を巻き込んで、長野市から補助金を獲得することに成功した。
商工会議所の予算も加え、初年度から実施に必要な額を確保することで、U-15長野プログラミングコンテストの本格スタートにこぎつけた。
会場は、長野冬季オリンピックでアイスホッケーのメイン会場として使用された大型多目的アリーナの長野市ビッグハット。ここで毎年開催している産業フェアin信州のイベントとして行うことになった。北村会頭がフェアの実行委員長だったこともあって、スムースに決まったという。
長野U-15プロコン立ち上げの経緯は、おいそれと他の地域で真似できるようなものではないかもしれない。しかし、精力的に人に会い説得し、輪を広げる地道な努力があったからこそ実現したのもまた事実だ。
北村会頭に、これからコンテストを始めようとする人たちに向けたアドバイスを求めると「最初、手掛かりがないように見えても、伝手をたどれば絶対できる」と、自信に満ちた表情で語った。
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