Special Issue

経営共創基盤 DXは抽象化とレイヤー化がカギ 公開サービスを最大限活用しコア部のみ自作すべき

2021/12/23 09:00

週刊BCN 2021年12月20日vol.1904掲載


 2日目の基調講演では、東京大学未来ビジョン研究センターの客員教授で経営共創基盤のシニア・エグゼクティブ・フェローである西山圭太氏が「DXの核心と課題」について講演した。

東京大学
未来ビジョン研究 センター客員教授
経営共創基盤シニア・エグゼクティブ・フェロー
西山圭太氏

 西山氏は、まずデジタル変革(DX)の基礎となるデジタル化の本質について「個別の解決策ではなく、どんな課題にも対応できる解決策を得るための『抽象化』がデジタル化の一つの基本要素になっている」と解説。加えて、各業務に含まれる共通部分を横割りに取り出した“レイヤー(層)”構造を挙げた。レイヤー構造は、「解いてほしいと人間が望む課題」と「コンピューターに分かること」の間のギャップを埋めるためにも役立つ。

 本題のDXについても、抽象化とレイヤー化はきわめて重要だ。DX実践の第1歩は現状のビジネスをレイヤー構造として捉え直すことから始まる、というのが西山氏の考え。例えば、書類を伴う業務をそのままデジタル化すると、印刷した書類をスキャンしてメールで送るだけの対応に終わってしまい、書類は結局なくならないと西山氏はいう。

 また、「それぞれのレイヤーのソフトウェアは無理に自前では作らないことが大事だ」と西山氏。クラウドサービスなどの形で公開されているものをなるべく利用し、どうしてもできないものだけを社内で開発するべきだと勧めた。新たに開発する部分を他の企業でも利用できるように作っておけば自らがプラットフォーマーとなることも夢ではない。

 このような抽象化とレイヤー化でDXを成し遂げた企業として、西山氏は国内外の3社を取り上げて紹介した。例えば、ワシントンポストは記事を紙媒体やネット媒体に配信するためのコンテンツ管理システム(CMS)の部分だけを自社開発して業界の他社にも公開。また、ネットフリックスも「自前のデータセンターを持たない」「自前のデバイスを開発しない」戦略でビジネスのスピード展開を実現した。日本でも、旭鉄工は製造装置に取り付けたセンサーを使ったIoTシステムを自社開発することによって、製造ラインの状況を経営サイドがいつでも把握できるシステムを開発している。

 さらに、DX時代にはシステムが組織を規定する「逆コンウェイの法則」が優勢になるという。「今後は、システムのレイヤー構造が社内組織や人事制度に反映されることになるだろう」と締めくくった。
  • 1

外部リンク

経営共創基盤=https://www.igpi.co.jp/