Special Issue
レノボとの協賛で新Azure Stack HCIセミナーを開催 専用OSをはじめライセンスや技術ポイントを解説
2021/12/16 09:00
週刊BCN 2021年12月13日vol.1903掲載
ネットワールドは11月10日、マイクロソフトの新Azure Stack HCIについて学ぶオンラインセミナーをレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(レノボ)との協賛で開催した。「新『Azure Stack HCI』をランチタイムにしっかり学べるセミナー」と題し、新しく専用OSを搭載したAzure Stack HCIについて、製品内容やライセンス体系、技術的なポイントなど、必ず押さえておきたい内容を「厳選」「凝縮」して解説する非常に興味深いセミナーであった。実は本セミナーは9月にも開催されており、受講者から「社内展開したい」「もっとじっくりと聞きたい」という反響を受けての再演となっている。総計300人の申し込みを数え、Azure Stack HCIの注目度の高さが伺えた。
Azure Stack HCIでクラウドやエッジもハイブリッドに
セッション1では、レノボからソリューション推進本部パートナープリセールス部で担当マネージャーを務める坂巻宏亮氏が登壇し、「Azure Stack HCIでクラウドやエッジもハイブリッドで考えてみよう」をテーマに講演した。冒頭、坂巻氏はレノボとマイクロソフトの関係について触れ、「レノボは Azure Stack HCIを史上最速で製品化し市場に投入したメーカーの1社である」と強調した。
現在、企業のITインフラには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤となり、ビジネス変革を推進する役割が期待されている。マイクロソフトのAzureの観点からITインフラをみると、Azure Hybridのもと、Azure Arcによってオンプレミスやマルチクラウド環境にある既存のリソースを単一のコントロールプレーンで統合。Azure Stackでデータセンターを最新化するとともに、Azure IoTでエッジまで適応範囲の拡大を図っていく。
「今後、Azure Stack HCIはWindows Serverではなく、Windows ServerをベースにAzure Arc機能を統合した専用OSとなり、サブスクリプション形式で提供される。Windows ServerベースのHCIもなくならないが、最新機能はAzure Stack HCIで提供される」としている。
次いで、坂巻氏はレノボのAzure Stack HCIへの取り組みを説明。レノボでは、Azure Stack HCIソリューションで認定済みのシステムとして「ThinkAgile MX統合システム」を提供。すでに認定ノードとして、九つのプラットフォーム、39個のソリューションを公開済みだ。
Azure Stack HCIのユースケースだが、既存基盤の仮想統合だけではなく、AI、Edge、コンテナ、最先端インフラまで及ぶ。また、膨大なIoTデータの処理に対応するため、エッジコンピューティングが進み、データの流れがクラウド間との双方向になる。こうしたエッジワークロードに対応するレノボの最新Azure Stack HCIソリューションが「ThinkAgile MX 1000シリーズ」だ。
同製品は、エッジに最適なフットプリント、高いセキュリティ機能を備え、簡単な導入・設置を特徴とする。サイズは、1Uラックサーバーの4分の1程度のサイズで、多様な設置を可能にするマウントオプションも用意。また、無線環境に対応した大変ユニークなサーバーである。業界は問わず、さまざまなユーザーに適応できる。
「ThinkAgile MX 1000シリーズは、高い耐環境を考慮した設計になっている。安全性でも、物理やサイバー改ざんの検知、暗号化ストレージを搭載。万が一、持ち出されてもGセンサーが働いてロックする。管理性も、Lenovo XClarity Administratorによるリモート管理で、数百台のデバイスも統合管理できる。パフォーマンスもサーバークラスの計算処理を備える」と説明する。
また、無償ツールのWindows Admin CenterでAzure連携も容易で、バックアップと災害対策、監視と更新管理、セキュリティ強化、ネットワーク拡張、ファイルサーバーのハイブリッド化などに対応できる。「しかも、Azure Stack HCI×Azureで、ハイブリッド環境の一元管理が可能になる」と語った。
Azure Stack HCIのライセンスとネットワールドのCSPのメリット
セッション2では、ネットワールドからソリューションマーケティング部システムソフトウェアソリューション課の駒木義弘氏が登壇し、「Azure Stack HCIのライセンスとネットワールドのCSPのメリット」をテーマに講演した。新Azure Stack HCIは、オンプレが前提の旧Azure Stack HCIと異なり、クラウドが前提で、Azureの1サービスとして提供されるハイブリッドクラウドソリューションである。今後、Azure Stack HCIは専用OSになり、サブスクリプション形式で提供される。
「新たなハイブリッドクラウドの選択肢が生まれたと理解していただければ」という。なお、オンプレベースはWindows Server HCIとして並行して提供される。
新Azure Stack HCIは、Software-definedストレージとネットワーキング機能が組み込まれた最新のAzureハイパーバイザー。課金は1物理プロセッサコア単位で月額1126円(2021年11月時点の為替レート)となる。常に最新機能が提供され、Azure管理機能の一部も含むため、マイクロソフトは他社HCIとの比較で50%のコスト削減ができるという。
Azure Stack HCIの特に注目すべき用途が、サポート終了サーバーの延命とVDIのプラットフォームだ。Azureファミリのため延長サポート終了後も3年間セキュリティ更新プログラムの無償提供が受けられる。VDIでは、Azure Virtual Desktopがオンプレ上のAzure Stack HCIでも稼働可能(プレビュー)となり、クラウドにデータを上げられないケースにも適応できる。
また、講演の後半ではCSP(クラウドソリューションプロバイダ)の概要を説明した。CSPは、AzureやOffice 365などマイクロソフトのクラウドサービスを月額課金方式で再販できる販売モデル。特徴は、月額課金、自動請求、サポートの付属だ。MSクラウドの購入方法で一般的だったOpen(年額)は、プリペイド方式なので、余分を見越して先に買う必要があり、残高が0円になると、利用中でもサービスが停止する。一方、CSP(月額)は従量課金の後払いなので、余分を先に購入する必要がない。しかも、スタンダード相当サポートの付属というメリットもある。なお、Openライセンスは今年年末で終息し、来年よりCSPへの移行が決まっている。
最後に、駒木氏はネットワールドのCSPのメリットを紹介。「ネットワールドは、一次店商材として、AzureについてはCitrix、VMware、NetApp、各バックアップベンダーなど、他のネットワールドが注力する一次店商材と連携した提案ができる」とアピールした。
Azureソリューションをまとめた冊子(Valore Azure)も提供。無料のクラウド相談窓口「ネットワールド Azure相談ステーション」では、製品・技術に関する内容とAzureの概算見積依頼に対応する。AVD(旧称WVD)にも対応し、ユーザー数・ストレージ容量・稼働時間の3項目を入力するだけで概算見積ができる。デジタル出前勉強会も実施しており、現在80コース以上をラインアップ。マイクロソフト関連の勉強会にも400人以上のパートナーが参加している。
「クラウド導入支援サービスでは、お客様のシステムをスムーズに構築するため、製品を熟知したスタッフによる導入サービスを用意しているので、気軽に相談してほしい」とアピールした。
Azureとオンプレとのハイブリッドクラウドの構築
セッション3には、ネットワールドから統合基盤技術部プラットフォームソリューション2課の武田光晴氏が登壇。「Azureとオンプレとのハイブリッドクラウドの構築は簡単!?」と題して実際の技術検証結果についての講演を行った。まず、武田氏が解説したのがAzure Stack HCIでの最小構成である2ノードの構築。今回、Azure Stack HCIで認定されたハードウェアとしてレノボの「ThinkAgile MX1021」を採用した。構築手順の説明後、Azure Stack HCIで構築した2ノード環境HCIの堅牢性を試す障害試験を実施。初めはノード障害試験で、レノボの管理ツール「LXCA」でNode1側の強制パワーオフを実行した。
「Node1側のIPとは疎通不可になるが、クラスタIPはNode2側に1パケットロス程度ですぐにフェールオーバーされる。ただし、仮想マシンはFT環境で稼働しているわけではないので、今回の環境では約3分後にNode2側への再起動で復帰した」としている。「Node1側に戻す作業が大変なのでは」という、よく受ける質問については、「実際に今回のノード障害試験の後で戻す作業を実施したが、Azure Stack HCIのクラスタは非常に優秀だった。ノード復帰後、ミラー同期は自動再開されるため、リカバリー処理は非常に簡単で、煩雑な処理が不要になっている」と強調した。
また、ディスク障害の検証としてネスト環境で疑似的にNode1側の4本のディスクのうち1本を抜く試験では問題が一切なかった。4本全てを抜く試験でも優れたSDS機能が働き、Node2側の共有ディスクにネットワーク経由でアクセスしてサービスを継続できた。
次に実施したのは、HCIの肝と言われるネットワークの障害試験。ノード間をダイレクトにつないでいる2本の10G NICのうち1ポートの抜線をしたところ、管理画面では可用性の低下が表示されたものの、仮想マシンは正常動作を継続していることを確認した。
今回のMX1021の標準構成では、Windowsが実装するSMBマルチチャネル機能の利用により、10G NICの2ポートをフル活用した負荷分散ができる。また、レノボのNICが持つRDMA機能の利用で、CPU処理の負荷を約20%程度軽減できる。その分をHyper-V上で稼働する仮想マシンに割り当てることで処理効率がアップ、集約率の向上にも貢献するとした。
最後に武田氏は、Azureとのハイブリッド構成について紹介。オンプレ側データのクラウドへのバックアップを可能にする「Azure Backup」、クラウド階層型ファイルサーバーを可能する「Azure File Sync」、Azureとの災害対策が容易になる「Azure Site Recovery」について解説した。
「これらのクラウドサービス機能の利用において、AzureとのVPN接続は必須ではなく、インターネット接続のみあれば利用できる」と締めくくった。
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