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rhipeとアクロニスが協業で進める 物販型リセールからMSPへの転換 サイバープロテクション製品と MSP事業運営の仕組みを提供
2021/09/16 09:00
週刊BCN 2021年09月13日vol.1890掲載
クラウド時代を迎えて、リセラーには「物販だけ」のビジネスモデルから脱却することが求められている。その具体的な目標となるのが、ITシステムやサービスと運用管理をあわせて提供するマネージドサービスプロバイダー(MSP)への転換。そうしたニーズを持つリセラー向けの支援で協業するrhipe Japanの後藤徳弘カントリーマネージャーとアクロニス・ジャパンの嘉規邦伸社長が語り合った。
クラウドディストリビューターとクラウドサービスベンダーがMSP化を支援
――まずは両社の自己アピールをお願いします。嘉規 アクロニス・ジャパンはAcronis International GmbHの日本法人として2009年に事業を開始しました。当初、バックアップソフトのベンダーでしたが、15年にクラウド事業にも進出し、現在はデータ保護とセキュリティを含むサイバープロテクションの製品とサービスをオンプレミスおよびクラウドで展開しています。直販をしていない当社が特に気を配っているのは、「エンドユーザーまでの流通を担当されるディストリビューターとリセラーの方々のビジネス差別化をいかにお手伝いするか」ということ。例えば、リセラーの方が独自ブランドで当社のサービスを提供することもできますし、自前のデータセンターを持つ場合、データをそこに格納してランニングコストを抑えつつ、他のサービスと統合することもできます。
後藤 われわれrhipe Japanは、19年に日本に上陸したクラウド専業のディストリビューターです。親会社は03年にオーストラリアで設立され、アジアパシフィック地域で多くのリセラーの方々にクラウド関連のビジネスを提供してきました。われわれが目指しているのは、これまでリセールを生業としてきた方々にマネージドサービスプロバイダー(MSP)になっていただくこと。当社はユーザー管理や課金管理のためのシステムをリセラーの方々に提供していますので、クラウドビジネス特有の事務作業にわずらわされることなく、エンドユーザーとのビジネスに集中していただけると思います。
――rhipe Japanの差別化ポイントはどのようなところにあるのですか。
後藤 国内ディストリビューターも同様のシステムを提供していますが、新規テナント作成やライセンス追加購入などのプロセスに手間と時間がかかります。Microsoft Azureの請求額確定に3カ月も待たされたりすることもあるようです。当社のPRISMというシステムはグローバルパートナーに対応するため多額の投資を行い継続的にブラッシュアップしていますので、全てがスピーディーでAzureの請求額も翌月初旬には確定できてしまいます。リセラー様のビジネススピードアップに大きく貢献します。
MSP転換を望むリセラーは多いがサービス化や仕組み作りが難しい
――そのMSPとは、どのようなものなのですか。嘉規 MSPはサービスプロバイダー(xSP)の一種で、ITシステムやサービスと運用管理をあわせて提供する業態のことです。エンドユーザー企業の情報システム部門が担っていた運用管理業務も有償のサービスとして提供することが付加価値になりますから、そこから新たに継続的な収益を得ることができるわけです。したがって、あらゆるモノがサービス化されるクラウド時代を迎えて、それまで物販中心だったリセラーの方々がMSPビジネスモデルに注目しています。
――国内でも物販中心のリセラーからMSPへの転換は進んでいるのですか。
嘉規 実際にMSPとなっているのはまだごく少数です。ほとんどのリセラーは「いつかはMSPに転換しなければならない」と理解して危機感も抱いているのですが、どのように転換すればよいか分かりにくいのが実情です。
後藤 MSP転換への足かせになっていることは、二つあります。まず、MSPのそうしたビジネスモデルをリセラーが理解できていないこと。従来は依頼された作業をただやっていれば良かったのですが、MSPとして活動するにはサービスに自ら値段を付けてメニュー化しなければなりません。いくら物販での経験が長くても、その知見からMSPとしての値付けやメニュー化のやり方が編み出せるわけではないのです。また、MSPには、セキュリティ脅威に関する最新情報を提供してエンドユーザーに対応を促すような役割も求められます。そのためには物販のときと違った仕組みが必要になるのですが、それを考えるのもリセラーにとって非常に高いハードルとなることでしょう。
――MSPへの転換の仕方が分からないリセラーは、どこに相談にいくのでしょうか。
後藤 今は、どうすればよいのか、聞きに行ける先がほとんどないと思います。だからこそ、アクロニスさんのようなクラウドサービスベンダーの力も借りながら、リセラーの方々からの相談に乗ってあげられるディストリビューターとして活動したいと、われわれは考えています。
嘉規 当社は契約されたリセラーに対して、MSPに必要なサービスプラットフォームを丸ごと提供しています。ですから、リセラーはエンドユーザ
ー企業の運用管理をネットワーク越しにリモートで実施することができ、従来のように客先に常駐したりする必要はありません。その意味で、MSPは従来の「駆け付け保守」が進化したものといってもいいでしょう。
管理コンソールの分かりやすさと“自社ブランド化”が大きな魅力
――では、アクロニスの製品やサービスは、MSPへの転換を図るリセラーにどのように役立つのでしょうか。嘉規 先ほども申し上げましたように、当社はバックアップソフトからビジネスをスタートしました。バックアップでは対象となるサーバーやPCにエージェントを組み込むことになるわけですが、エージェントをそれだけに使うのではもったいない。そこで、バックアップに加えてサイバーセキュリティやリモート管理の機能も提供するようにしました。現在ではアンチウイルス、ランサムウェア対策、パッチのリモート適用、脆弱性診断などの機能が使えますし、ネットワークを通じてシステム管理者が管理対象デバイスにアクセスすることも可能です。さらに21年内には、より強力なEndpoint Detection and Response(EDR)機能もサポートする見込みです。これが、サイバープロテクションソリューションのSaaSプラットフォームにおいて提供しているAcronis Cyber Protect Cloudというサービスです。
――MSPに歓迎されるポイントは何でしょうか。
嘉規 まず、管理コンソールのユーザーインターフェースに分かりやすいデザインを取り入れました。例えば、状況表示には円グラフや棒グラフなどを多用し、障害の重大度に応じて、注意が必要なものは黄色やオレンジ色、すぐに対応が必要なものは赤色で表示します。この直感的に利用できるユーザーインターフェースによって、エンドユーザー企業によるセルフサービスを容易にし、MSPの管理者はサービスの工数を減らしながら、多くのユーザー企業に高品質な運用管理サービスを提供することができます。
また、MSPの方々が当社のサービスを「ホワイトラベル」、すなわちMSPの独自ブランド名でエンドユーザーに提供することも可能です。Acronis Cyber Protectといったサービス名称を画面などに表示する必要はありませんから、MSPとしての価値も独自性も高まるのではないでしょうか。
後藤 また、アクロニスさんのプラットフォームでは機能をどのように組み合わせて一つのサービスに仕立て上げるかもMSPが自由に決められます。そのMSPが抱えているお客様のニーズに合わせてサービス設計をしてもいいでしょうし、MSP側の現有体制に合わせて、まずはバックアップから始めるといった段階的な活用も可能です。
嘉規 当社はオンプレミスのソフトウェアも提供していますから、全てを一挙にクラウドに移す必要はありません。いまオンプレミスでシステムを運用されているエンドユーザー企業においては、そのオンプレミス環境とクラウドサービスの利点を組み合わせてご利用いただく。そうした漸進的な使い方ができるソリューションですから、リセラーがMSPへの道を歩みだしたとしても、守備範囲が狭くなってしまうことはありません。
両社の製品力とサービス設計力を組み合わせた協業でMSPを増やす
――今回の協業はどのような経緯でしょうか。嘉規 クラウド専業ディストリビューターのrhipe Japanさんのお力をお借りし、当社のMSP向けサービスプラットフォームと併せて、「機能をどのように組み合わせてサービスとしてパッケージングするか」といった知見を提供できることに大きなメリットがあると考えました。
後藤 当社はリセラーのビジネスを作っていく「ビジネスデベロップメント」に力を入れていますので、サービス設計のところもお手伝いできます。一方で、サイバープロテクションのソリューションはどのMSPにも必要なものですから、互いの強みを生かした協業ができると思いました。
――MSPには、どのようなマーケティング支援やエンジニアリング支援策が提供されていますか。
嘉規 当社のパートナープログラムでは、セールスやマーケティングにとどまらないMSPビジネスへの取り組みを全面的に支援します。また、技術情報やトレーニングも豊富に用意しており、rhipe JapanさんとともにMSPの皆様をサポートして参ります。
後藤 当社はリセラーのMSPビジネス実現に向け幅広く支援を行います。アクロニスさんとの共催セミナーでは「MSPとは何か」「アクロニス製品を活用したMSPへのビジネス転換」などについて、広範なリセラーの方々に基本的な考え方をお伝えしています。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
嘉規 アクロニスはクラウドビジネスに力を入れており、日本法人でもクラウド人材を昨年対比で50%ほど増やしました。そうしたリソース増強の結果、クラウドで提供しているAcronis Cyber Protect Cloudについて機能の追加や拡張を毎月実施できています。また、今年5月にアクロニスはCVCキャピタル・パートナーズVIIを含む複数の投資家から2億5000万米ドルの資金を調達しましたので、それを原資に、企業買収(M&A)などを通じて新しい技術を積極的に獲得していくことになるでしょう。
後藤 われわれrhipe Japanは、これからも、MSPを目指すリセラーの方々を増やしていきたいと考えています。実績が増えてくれば、MSPになろうとするリセラーの輪はどんどん広がっていくはず。そのためには、われわれが軽快なフットワークで動き、タブーなく取り組んでいかなければなりません。
――ありがとうございました。
https://www.seminar-reg.jp/bcn/survey_rhipe
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