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ネットワールド リストア時に追加費用が発生しない「HPE Cloud Volumes」 バックアップデータを、パブリッククラウド上でのデータ活用にも利用可能
2021/06/03 09:00
週刊BCN 2021年05月31日vol.1876掲載
データをクラウドにバックアップしたいが、リストアの際に多額の費用が発生するのがこわい――。このような懸念を抱く企業に日本ヒューレット・パッカードが提供しているのが、データ保護専用のパブリッククラウド「HP Cloud Volumes」(HCV)だ。最大の特徴は、リストア時のダウンロードに課金されないこと。HCVにバックアップしたデータは、オンプレミスおよび複数のパブリッククラウドからも直接利用することができる。
クラウドバックアップは便利だが
ダウンロードには費用が発生する
「保管用の領域をクラウドに設定したら、あとはデータを投げ込むだけで良い」と説明するのは、日本ヒューレット・パッカードでプリセールスエンジニアリング統括本部ストレージ技術部部長を務める中井大士氏。パブリッククラウドへのバックアップは、バックアップ先の装置を用意する必要がなく、エンジニアの人数が限られていても運用管理を容易に回せるので、特に中堅中小企業では最適なデータ保護の方法になるわけだ。その一方で、普及につれてあらわになった課題もある。
まず、予想外のタイミングで多額の費用が発生することがある。「バックアップ用クラウドの多くは、バックアップは無料でも、リストア(復元)する際のダウンロードには課金する仕組みになっている」(中井氏)からだ。リストアは装置の故障や担当者の誤操作によってデータが失われた時にしか行われないので、費用を予算計上している企業は少ない。突然の出費に頭を抱えるIT管理者も多いだろう。
また、ダウンロードに費用が発生するとなると、リストアの訓練もひんぱんには実施できない。その結果、いざという時のリストアに失敗しやすくなり、実際の可用性が低くなってしまう。
さらに、バックアップ先がクラウドになっていると、特定クラウドサービス事業者へのロックインが起こりやすい。いったん、あるクラウドをバックアップ先として選んでしまうと、データを移し替えるための費用が障害となって、他のクラウドに乗り換えるのが難しくなるからだ。バックアップデータを分析などに二次活用する使い方も増えており、ロックインは避けなければならない。
HPE Cloud Volumesを利用すれば
リストア時のダウンロードが無料
このような課題を感じている企業に推奨できるのが、日本ヒューレット・パッカードが2019年11月に国内でも提供を開始した「HPE Cloud Volumes」(HCV)だ。データ保護専用のパブリッククラウドで、ストレージの容量と性能に応じて料金を支払う従量課金方式。ダウンロード(リストア)に費用はかからず予期しない費用が発生することはなく、ロックインも回避できる。また、HCVは信頼性の面でも優れている。国内向けのサービスは東京にある日本リージョンが担当していて、HPE Nimble Storageを用いたオールフラッシュまたはハイブリッドのiSCSIストレージをサービス提供の基盤として採用している。中井氏は、「基幹系システムで使われているストレージを利用しているので信頼性が高く、安心して使用できる」と説明する。
さらに、セキュリティとコンプライアンスについては、256ビットのデータ暗号化機能で対応。SOC 2 Type 1とHIPAAの認定も受けているので、内部監査や内部統制が厳しい企業でも安心してデータをクラウドにバックアップできる。
この他、HCVの利用状況は、ポータルサイトから確認ができる。作成したボリュームがどれくらい利用されているかが簡単にわかるようになっている。これは、クラウドベースの運用管理ツールHPE InfoSightと連携して実現しており、経験が少ないエンジニアでも運用管理は容易だ。容量や性能の拡張計画を立てる際の参考にするとよいだろう。
HCVには「Block」と「Backup」の二つのサービスがある。
Blockサービスは、HCVをブロック型ストレージとして扱うためのサービスだ。Blockサービスを使えばオンプレミス側のHPE Nimble Storageとの間で双方向レプリケーションをするようなことも可能だ。オンプレミスからHCVにレプリケーション、HCVからオンプレミスにレプリケーションをする事が可能である。
また、任意のパブリッククラウドからiSCSI経由でデータを読み書きできることもHCVのBlockサービスの優れたポイントの一つだ。現時点でサポートされているのは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の各パブリッククラウド。「パブリッククラウド側のサービスやVMからBlockサービスのボリュームをマウントすれば、データの実体をパブリッククラウド側に移さなくても、データ分析をはじめとする、さまざまなクラウドサービスでHCV内のデータを利用できる」と中井氏。いったんマウントを解除して別のパブリッククラウドからマウントしなおせば、マルチクラウド環境でもデータの移し替えは不要だ。
一方、Backupサービスはバックアップソフトによるバックアップ/リストアを専門に担当している。Backupサービスでは、HPEおよび他社製のストレージのデータをバックアップソフトから保存することが可能になる。現在対応しているバックアップソフトは、HPE自身のツールに加えて、Veeam、Veritas、Commvaultなど。これらの製品を使っているユーザーなら、バックアップ先をHCVに変更するだけでクラウドにバックアップできるようになるわけだ。
Backupサービスを使ってバックアップしたデータについても、一手間かけることで、外部のパブリッククラウドからマウントして利用することができる。具体的に、HCVには、Backupサービスの保管領域からBlockサービス側にリカバリーする機能があり、取得したデータが復元されたボリュームができあがる。そのボリュームをパブリッククラウドからマウントすれば、データ分析などのさまざまな用途に利用できる仕組みだ。
国内でもユーザー数は急速に増加
ネットワールドでも検証を行った
このような特徴を持つHCVは、すでに世界の多くの企業でデータの保護に使われている。「一足早く2017年にサービスが始まった欧米では、ユーザーは一気に増えた。サービスインは多少遅れたが、国内でも導入数は右肩上がりで伸びている」と中井氏。国内ユーザーの半分以上は中堅中小企業で占められている、と説明する。例えば、中堅の製造業A社はNimble Storageを新規導入するのに合わせてHCVも契約。それまでは運用管理工数と費用の制約ゆえにほとんどバックアップを取っていなかったが、HCVの導入を機に定期的にバックアップする運用形態に切り替えたという。
また、大手のサービス企業であるB社は、事業継続/災害対策(BC/DR)のためのソリューションとしてHCVを採用。自社データセンター内だけで行われていたバックアップを外部クラウドへのバックアップに切り替えることによって、データ保護のレベルを高めることを進めた。HCVが選ばれたのは、異機種が混在するストレージ環境に対応でき、従来から利用していたバックアップソフトがそのまま使えることの2点が決め手となった。今後、データをHCVに移したうえで、業務システムをパブリッククラウドに段階的に移していく構想もあるようだ。
国内企業への普及をさらに加速するべく、ディストリビューターとしての立場から、ネットワールドもさまざまな検証作業を進めている。「最初は、Nimble StorageとHCVを接続してデータのレプリケーションを試すところから始めた」と振り返るのは、同社のストレージ部門でSEを務めるSI技術本部ストレージ基盤技術部ストレージソリューション1課課長代理の片山大悟氏。
2020年10月からの検証作業では、「vSphere VVOLや通常ボリューム用途でのNimble Storageからのレプリケーション」「BlockサービスのボリュームにAWSからアクセス」「スナップショットの保存」「スナップショットをブロック型ストレージとしてアクセス」といった機能検証を同社のSEが実施した。
検証の結果は、非常に満足できるものだった。「普段Nimble Storageにさわっている人なら、30分ほどでレプリケーションができるという感触が得られた」と語るのは、片山氏とともに検証作業に参加した技術本部ストレージ基盤技術部ストレージソリューション1課課長代理の長谷部浩生氏。片山氏は「データをHCV上に配置すれば、オンプレミスからもパブリッククラウドからも利用できてデータの自由度が高まる」と評価している。
この検証結果を基に、ネットワールドは社内向けの技術資料をMicrosoft PowerPointで作成。販売パートナー企業やエンドユーザーにも読んでもらえるホワイトペーパーの制作を進めるとともに、SEブログ「ネットワールドらぼ」でも技術情報を発信していく。
ネットワールドは自社取扱商材と
組み合わせたメニューを拡充する
クラウドサービスとして提供されるHCVについては、これからもさまざまな機能拡張が加えられる予定だ。「当面は、InfoSightと連動した可視化機能をさらに高めていくほか、クラウド管理ツールから統合的に制御できるようにする予定だ」と中井氏。分析機能の拡張と使い勝手の向上を並行して進めていくというのがヒューレット・パッカードの考えだ。一方、ネットワールドはHCVを自社取扱の商材と組み合わせたソリューションのメニュー化を検討中だ。「最初にリリースするのは、Nimble StorageとHCVを組み合わせた災害対策(DR)ソリューションになる予定。その後、HPE Simplivity、HPE StoreOnce、HPE 3PAR、HPE Primeraなどのストレージハードウェアとの連携を追加していきたい」と片山氏は意気込む。長谷部氏は、「われわれとは別の部署が担当することになるが、バックアップソフトやパブリッククラウドとの連携についても技術支援を提供していく」と付け加える。
販売パートナーにとっては、利用料金をプリペイド方式で支払うサブスクリプション型になっていることと合わせて、販売パートナーにとっては売りやすい商材だと言えよう。導入前に試しに使ってみたいというエンドユーザー向けに、90日間・5TBの無償使用ライセンスも用意されている。
多くの企業がDXの実現を目指す今、データはビジネスをドライブするための資産としてますます重要になっている。そのデータを確実に保護するためのソリューションとして、HPE Cloud Volumes(HCV)はビジネスに欠くことのできない存在となることだろう。
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