Special Issue

ワークスアプリケーションズがOracle Cloud Infrastructureを採用、自社ERP製品「HUE Classic」新マネージド・サービスの基盤に(日本オラクル ユーザー導入事例)

2020/10/01 15:00

 ERPベンダーのワークスアプリケーションズは、自社ERP製品の新マネージド・サービス「HUE Classic Cloud」に日本オラクルのクラウド基盤「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」を採用した。自社ERP製品の動作基盤をユーザー企業に代わってワークスアプリケーションズが運用するマネージド・サービスは、同社にとって安定収益の重要な柱として開発された。そのインフラとなるOCIには、「他の有力なクラウド基盤と比べても、コスト面で優位性があり、かつ高い信頼性や将来にわたっての優れたパフォーマンスが期待できる」と評価する。

マネージド・サービスに最適なコスト構造

 ワークスアプリケーションズのERPパッケージソフト「HUE Classic」シリーズのマネージド・サービスである「HUE Classic Cloud」。この9月に始めた新サービスで、ワークスアプリケーションズが、ユーザー企業に代わってERPのサーバーを運用する。
 
HUE Classic Cloudシステム概要図

 HUE Classicはオンプレミス型のERPパッケージであり、本来であればユーザー企業が自社のデータセンターなどに設置し、情報システム部門が管理、運用するタイプの製品である。ただし、財務会計や販売管理といった基幹業務システムは企業のビジネス基盤ともいえるシステムであり、インフラの安定的な運用が不可欠。それなりのコストと人員が必要になる。昨今のテレワーク環境導入やDX推進を背景に、ユーザー企業側ではシステムの運用効率化が重要な課題となっていた。

 そのため、HUE Classicの開発元であり同製品を熟知したワークスアプリケーションズには、「運用を肩代わりしてほしいというユーザー企業からの要望が根強くある」と勝畑泰・オペレーション本部本部長は話す。また、「ワークスアプリケーションズにとっても、マネージド・サービスは安定した収益源になるというメリットがある」という。今回、新しくHUE Classic Cloud として始めたマネージド・サービスでは、ERPパッケージソフトのライセンスとリソース管理、監視、レポーティングなどの運用管理を一体的に提供する。
 
勝畑泰(かつはた たい)
オペレーション本部 本部長
 2000年6月、ワークスアプリケーションズ入社。HUEおよびHUE Classicの評価・開発、サイト信頼性エンジニアリング(SRE)部門のマネジメントなどを経て、20年8月から現職。オペレーション本部はHUEシリーズの保守運用、クラウドマネジメントサービス、オンプレミス環境の保守サービスを担う

 マネージド・サービスの構築にあたっては、クラウド基盤の選定が重要な要素となる。これまでもワークスアプリケーションでは、オンプレミス・サーバーの代わりにAWS上でビジネスアプリケーションを運用するサービスを提供してきた。加えて、今回新しくマネージド・サービスを始めるにあたって主要なクラウドベンダーのサービスを詳細に比較、検討し、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の採用を決定した。

 まず大きなポイントになったのは、コスト構造がHUE Classic Cloudにとって最適だったことだ。ワークスアプリケーションズのERP製品は、大企業ユーザーの占める割合が多く、これまで累計で2242社、325企業グループ(2020年4月現在)に納入してきた。勝畑本部長は、「Oracle Cloudはアウトバウンド転送量が10TB/月まで無償で、ストレージのコストパフォーマンスも高く、大量データを取り扱う大企業が多い当社のお客様にとっては、他のクラウドよりもメリットが大きいと判断した。実際に、お客様に対してもご納得いただける説明がしやすかった」と振り返る。また、スクリプトでの環境構築やメンテナンス作業が可能なInfrastructure as a Codeが実現されている点も魅力的だったという。

 さらに、OCIのシンプルなコンソールのユーザーインターフェイスについても、「他社サービスをよく研究し、非常に使い勝手がいいし、日本オラクルによる技術サポートも手厚い」(勝畑本部長)。結果として、他社クラウドサービスしか使ったことがない技術者でも短期間のうちにOCIに習熟することができ、技術者の学習コストを抑えられる。既存オンプレミスの検証環境をまったく構成変更せずにクラウド移行できるだけでなく、AWSをベースとしたサービス仕様からの移行もスムーズに行うことができ、乗り換え障壁が低いこともOCI採用の決断を後押しした。

Exadata Cloud Serviceなどの豊富なサービスラインナップも後押し

 基幹業務システムの運用に欠かせない外部監査への対応力もOCIの魅力だった。同社の顧客層には「外部監査に耐えられる情報の公開性を重視する」(松下司朗・カスタマーエクスペリエンス本部本部長)企業が多い。例えば、金融業のユーザーからは、金融機関のコンピュータシステムとして準拠すべき「FISC安全対策基準」を満たしており、かつ外部監査が可能な仕組みになっていることを求められる。その点、「OCIはFISC準拠を明確に打ち出しており、金融業への展開を視野に入れることができる」と勝畑本部長は評価する。
 
松下司朗(まつした しろう)
カスタマーエクスペリエンス本部 本部長
 2009年10月、ワークスアプリケーションズ入社。コンサルタントやアカウントマネージャーを経て、20年7月から現職。カスタマーエクスペリエンス本部は、顧客満足度の向上を目的に保守・メンテナンスサービス、新機能などの製品情報の発信を担う

 さらに、「Oracle Exadata」(「Oracle Database」とこれに最適化したハードウェアを垂直統合した高性能データベース・マシン)のクラウド版である「Oracle Exadata Cloud Service」を使うことで将来的なサービス拡充や事業拡大に容易に対応できる点が、OCIの採用を決定づけた。

 HUE Classicは前述のように大企業の顧客が多く、毎月の明細伝票の処理枚数が1億枚を超えるユーザーも存在する。従来、そうした負荷の大きい大規模ユーザーに対しては、超高速処理が可能なインフラを揃えてもらうよう提案してきた。マネージド・サービスでは、ユーザー企業に代わって同社自らがハイスペックなマシン環境を運用しなければならず、今後はさらに多くの処理件数を、より高速にこなすことを求められるようになる。

 勝畑本部長は、「多少の不安はあったが、Exadataのパフォーマンスはお客様からの信頼に応える重要な技術的な裏付けになる」と力を込める。松下本部長も、「Exadata Cloud Serviceを活用することで、より大規模なシステムのマネージド・サービスを積極的にユーザー企業に向けて提案できるようになる」と考える。

 また、HUE ClassicはOracle Databaseの利用を前提としたアーキテクチャーを採用しており、アプリケーションの機能を拡張する際の制約も少なくなる。「他社クラウドと比較して、同じコストでもやれることが増え、結果的にコストパフォーマンスがよくなり、当社サービスの競争優位性も高まる」(松下本部長)と、HUE Classic Cloudを軸としたビジネス拡大に手応えを感じている。

ワークスアプリケーションズ会社概要

 ワークスアプリケーションズは、ERPパッケージソフト「HUE」シリーズなどを開発するソフト開発ベンダー。クラウド版の「HUE」と、オンプレミス型の「HUE Classic」、ワークフロー/グループウェアの「ArielAirOne」が主な製品ラインアップ。累計ユーザー企業数は2242社、325企業グループ(2020年4月現在)。グループ社員数は約3200人。国内4拠点、海外3拠点を展開。人事給与パッケージについては会社分割によってWorks Human Intelligenceが2019年8月に承継している。
 
クラウドシフトとビジネスモデル変革を目指す ISVがいま考えるべきこと
https://go.oracle.com/LP=93420
  • 1

関連記事

日本オラクル、ISVパートナーに向けてOracle Cloud戦略や構築ノウハウを紹介するイベント「OPN ISV Partner Online Forum」を開催

日本オラクル 大阪リージョンを「フルサービス」で開設 加速するGen2 Cloudのインフラ整備

日本オラクル クラウドの全機能をユーザーDC内で提供 NRIが世界初採用

外部リンク

日本オラクル=https://www.oracle.com/jp/

ワークスアプリケーションズ=https://www.worksap.co.jp/