Special Issue
難しい電源管理を容易にするUPSソリューションとは? オムロン×SB C&S対談
2020/04/01 09:00
用途の拡大で、ますます重要度が高まるHCIの電源管理
――年率20%といわれるペースでHCI市場が急拡大しています。その背景と現状をSB C&Sさんはどう捉えていますか?萩原 HCIが支持される主な理由は、導入の容易さに加えて運用面で作業工数を大きく削減できる点です。もちろん、従来の3Tier型システムが全てHCIに向くというわけではありませんが、今では広範な用途、規模のシステムをカバーできるようになっています。また、クラウドシフトの一方で、意外とコストが高いといった理由やメンテナンスタイミングをコントロールできないなどの事情で、オンプレに回帰する動きもあります。その受け皿として、クラウドライク(運用の容易さ)なHCIが受けていると思います。
――HCIは基幹系システムでの採用も出ています。そうなると、データ保全の観点から、万が一の際には、いかに安全にシステム停止できるが大きな課題になっているようですが。
萩原 私どもがHCIの提案を通じて得た感触では、UPSの採用率が6割程度で、約3割がDCや既に非常電源設備を持った環境への設置で電源対策をされています。ただ、システムの重要度もありますが、UPSを付けないお客様も一定数はいます。その大きな理由はコストですね。
服部 HCIの場合、一般的なPCのシャットダウンのようにソフトウェアをインストールするだけでは、正常にサーバーをシャットダウンできません。その理由は、電源管理ソフトは共有ストレージで展開、稼働しているため、共有ストレージ機能を停止させると電源管理ソフトが動作しなくなり、シャットダウンが完了しないためです。これを回避するために、UPS管理用のサーバーをHCIとは別に1台用意するしかありませんでした。単にUPSのコストだけでなく、UPS管理用サーバー分のコストも加わってしまうのです。
萩原 お客様からは、「停電時にしか使用しないサーバーのために、そんなにお金をかけたくない」という声をかなりいただいていました。また、せっかくHCIでシンプルな構成になったのに管理対象が増えてしまう点もデメリットです。
――その課題を解決するため、オムロンさんが2018年7月にリリースされたのがネットワークカードの「SC21」ですね。
服部 はい。16年にSB C&S様からの相談を受けて、具体的な検討を開始しました。UPS管理サーバーの機能をネットワークカードとして組み込めないかと考えて開発をスタートしたのですが、正直、長年手掛けてきたUPSと違い、HCIについての知識、経験は不足していました。そこで、SB C&S様の技術メンバーの方のアドバイスを得て、設計・開発を進めていったことで、無事にリリースすることができました。その後、「Nutanix Ready AHV」の認証も取得しています。
SIerのUPS設定作業を大幅に軽減する「VirtuAttendant」
――SC21のリリースで、UPSの販売も好調のようですね。萩原 ディストリビューターとして、われわれもNutanixのご提案とともにオムロンUPS+SC21の組み合わせをすすめていますし、実際、とても好評です。外出しのUPS管理用サーバーが不要なため、HCIのメリットであるシンプルさを損なうことがありません。オムロンUPSの高い信頼性と相まって、停電時の確実なシステム保護を実現できます。
服部 HCI向けのUPS販売台数は以前の数倍に拡大しました。SC21は、Nutanix純正(NXシリーズ)はもちろん、XCシリーズ(Dell EMC)、HXシリーズ(Lenovo)の検証を行っており、DXシリーズ(HPE)も検証を予定しています。また、今年2月には200VのUPSを新たにリリースしました。NutanixのNXシリーズは、一部に100V電源が可能なモデルもありますが、多くのモデルが200V電源ですので、その多くをカバーできるようになりました。
――SIerに向けて、シャットダウンの設定作業を支援するツールもリリースされました。
服部 仮想化環境用自動シャットダウンソフト「VirtuAttendant(ヴァーチュ・アテンダント)」は、SIerの方々がお客様にUPSを導入する際の設定作業の負荷を低減します。SB C&S様は、Nutanixの技術に精通した「NTC(Nutanix Technology Champions)」ホルダーのエンジニアが国内最多であり、仮想化やHCIビジネスに精通したエンジニアの方々も数多い。NTCホルダーの萩原さんにも、VirtuAttendant開発時からさまざまなアドバイスをいただき、深く感謝しています。
萩原 前述したように、SIerの方々にとってUPS導入時の検証作業は大変です。動作テストはシステム構築の最終段階でないとできないため、それがうまく行かないと納期にも影響します。一つテストをすると、また起動して、さらにシャットダウンしての繰り返しで、時間もかかり、担当するSEの方々の大きな負担になっていました。それも、VirtuAttendantによって作業負荷軽減に大きく貢献できます。仮想化環境におけるシャットダウン手順は複雑ですが、その複雑なところに楽にしてくれる工夫が施されているのは、HCIを意識した仮想化環境を中心に開発されている良さであると思います。
服部 VirtuAttendantを活用して、さらに付加価値の高い業務に専念していただきたいと考えています。また、当社では仮想化環境向けビジネスへの注力を打ち出しており、今後もさらにソリューションを充実していく方針です。ぜひ、ご期待ください。
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