Special Issue
<Discussion>OMRON Social Solutions Nutanix HCIの電源管理をシンプルにする 画期的なUPSアプローチとは
2020/03/05 09:00
週刊BCN 2020年03月02日vol.1815掲載
デジタル変革が加速する中で、仮想化環境を容易に導入できる統合型アプライアンスのハイパーコンバージドインフラ(HCI)のニーズが高まっている。その中でトップシェアを持つのがニュータニックスで、同社の認証プログラム「Nutanix Ready」を国内で初めて取得したのが無停電電源装置(UPS)を提供するオムロン ソーシアルソリューションズである。クラウドコンピューティングや仮想化テクノロジーが一気に普及する中、あまり注目されてこなかった電源管理の領域。オムロン ソーシアルソリューションズはそこに目を付け、一気にエンタープライズITの世界に食い込んできた。そこで今回、両社のキーマンにビジネスの状況を聞いた。
HCI市場の拡大に伴い
高まる電源管理の重要性
――HCI市場の拡大と仮想環境における電源管理の現状を教えてください。近藤(ニュータニックス) まず市場の話をしますと、これまで仮想化基盤構築需要の高まりと共にHCI市場は活況を呈しています。クラウド活用が既定路線のような空気を感じますが、実際はみんながパブリッククラウドに流れている訳ではありません。「パブリッククラウドのようなITをいかにプライベートクラウドで実現できるか」というニュータニックスのコンセプトと、市場の要求が一致しているという状況です。パブリッククラウド領域はメガクラウド3社が牽引していますが、われわれはプライベートクラウド部分をHCIで構築しており、ハイブリッドクラウド化の流れは止まらないと考えています。
服部(オムロン) もともとわれわれはPC向けの小型UPSを販売してきましたが、2018年7月に当社のUPSに直接挿してHCIとつなぐことができるカード型のソリューション「SC21」を発表しました。そこが当社にとっての仮想化元年となり、現在は当時と比べて非常に多くの引き合いをいただいています。ハイブリッド・プライベートクラウドの普及に伴い、データセンターやお客様に設置するUPSの本来の在り方に注目が集まり、引き合いが急増していることを考えると、近藤さんがおっしゃるようにプライベートクラウド需要が起点となりHCIが注目されていると感じます。
近藤 オムロンは仮想環境向けのUPSということでは後発ですが、なぜそのように反応が大きいと思われますか。
服部 従来のデファクト製品が、仮想環境ではあまり使い勝手が良くなかったということだと思います。ユーザーは、仮想環境上でのシャットダウンが難しく、UPS導入時に別途制御用のサーバーを外付けで用意しなければならないことに不満を感じていました。われわれはこの問題を認識した上で、それを解消する仕組みとして製品を開発したので評価されているのです。仮想環境では、ベンダーごとにシャットダウンの“お作法”があり、そこが非常に複雑なのですが、将来性を考慮して構想段階からトップランナーであるNutanixのシャットダウン方法をデファクトと見定め、それを完成させることでソリューションとして提供すると決めていました。そこも大きな要因だと思います。
Nutanix導入時の設定作業を
ソフトで簡素化
――では、提供する製品の強みはそれぞれ何ですか。近藤 ニュータニックスには「Invisible Infrastructure(インフラを気にさせない)」という開発コンセプトがあります。オムロンの取り組みはわれわれの目指すところ、思想に沿っています。当初、われわれのプロダクトとUPSを連携させるためには、別途外部にサーバー機器の設置が必要でした。そこに、ネットワークカードを中に入れて、われわれの機器とオムロン製のUPSさえあればいいというシンプルな環境を作ってくれました。他にないほどわれわれに寄り添って作っていただいています。
服部 導入に際して、外部に発注するにせよ、内部で作業をするにせよ、大変な費用や手間がかかってしまいます。そのため、われわれは設定が簡単に行えるというコンセプトで製品を開発しています。具体的に表現すると、新入社員のSEでも扱えるレベルです。
その一環として、SI会社がUPSを導入する際の設定作業の負荷を低減する仮想化環境用自動シャットダウンソフト「VirtuAttendant(ヴァーチュ・アテンダント)」という支援ツールも新たに開発しました。シャットダウンの時のコマンド操作をプリセットし、プルダウンメニューで選択するだけというようにUPS制御のさまざまな操作を簡素化しています。
200VのUPS対応によって
Nutanixとの親和性がアップ
――それぞれの強みを生かしてパートナーシップを組んでおられるのですね。近藤 Nutanixの強みはシンプルであるというところですが、内部では複雑な処理を行っています。オムロンは、本来複雑であるHCIの仮想環境のシャットダウン手順とその後、電源を入れた後の作業を簡単にしてユーザーがNutanixを運用していく際に難しさを意識せず済むようにしてくれました。われわれのユーザーは、規模感でいうと自社のサーバールームに設置するような中堅・中小企業も多く、予算も限られ、必要な知識を持ったシステム担当者がいるとも限りません。その中で、開発をするパートナーを含めたカスタマーケア体制が充実されています。UPSメーカーなのに仮想環境にとても詳しく、専任のSEもいますので。
服部 実際、リピート率がすごく高いのです。ユーザーがリプレースする際もそうですが、むしろシステムを構築するSI会社さんに製品を使っていただくと、その後も他のNutanix案件で使っていただくことが多いですね。
近藤 当社の販売傾向としても、6~7割くらいは一度選んでもらったお客様のリピートオーダーが多いです。その時に一緒に成長できているなと感じます。以前は200V対応という課題がありましたが、今回それが出てきたのでとても期待感があります。今まで以上に幅広くビジネスを展開できるのではないかと。
服部 SC21はNutanix Readyを取得した製品なのですが、実はこれまで200VのUPS側で対応製品がありませんでした。NutanixのNXシリーズは200V仕様が基本なので、お客様から「使いたいのに使えない」と言われることもありました。ですが2月に、カードを挿せる200VのUPS新シリーズ「BU-2R(H)」というラインアップを発売しまして、お問い合わせが殺到しているという状況です。
ますますIoT時代に突入する中で
今後の連携領域拡大にも期待
――パートナーシップや連携の強化など、今後の展開については。近藤 ニュータニックスの戦略として、現在APIを公開して外部との連携に力を入れています。現在は独自に作っていただいていますが、APIに対応してもらって、電源管理面だけでなく、そのほかの情報も取得して連携できると面白いですね。また、オムロンさんはIoTに強いので、これからエッジコンピューティングが加速していく中、エッジ側での協業が増えていくのではと期待しています。
服部 IoTは情報がどんどん過密になる分、電源として守らなければならないものも増えますからね。オムロングループの中で産業用PCを販売しているので、エッジコンピューティングでも協業してグループとして連携する道筋も見えています。UPSで一歩目は踏み出しましたので。
近藤 今後、重要なデータの取り扱いが増えても、サービス領域が広がっても、今までと同じようにNutanixの仮想環境をシンプルに使っていただけるように、密な連携のもとサービスを展開していきます。ユーザーは難しいことを考えなくて結構ですし、販社さんにとっても、われわれのアプローチは提案が楽だと思います。導入時も、導入後も然りです。
服部 まずは体感していただきたいですね。仮想環境における電源管理については情報が少ないとは思いますが、調べていただくと現状ではお金も工数もかかっていることが分かるはずです。オムロンのUPSは触ったことがないという不安があるとは思いますが、われわれのアプローチは、UPSに機能を搭載させたネットワークカードを挿すという簡単なものです。操作もコマンドを設定画面に入れ込み、マウスで選択できるレベルに効率化していますし、SEと連携して設定支援やハンズオン勉強会を開き、不安を取り除くような支援もしています。仮想化時代のUPSは、オムロンを選んでおけば間違いはありません。
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