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<BCN CONFERENCE 2019 夏>2025年がタイムリミット「DXレポート」に見るデジタル変革――名古屋大学

2019/10/17 09:00

週刊BCN 2019年10月14日vol.1796掲載

 「BCN Conference 2019 夏」では、名古屋大学大学院情報学研究科の山本修一郎教授が「デジタルトランスフォーメーションの展開」と題して基調講演を行った。講演では、「2025年までに、世界の主要な企業がデジタルビジネスに対応する。それよりも少しでも早く既存システムを刷新し、デジタル変革を成し遂げられれば競争優位に立てる」と指摘。まずは、デジタルビジネスへの対応が難しい老朽化した既存システムの刷新から始めることが大切だと話す。

山本修一郎
教授

 山本教授は、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会」の委員として「DXレポート」の策定に参加し、世界人口のおよそ3倍の200億個を超えるデバイスがインターネットにつながるとともに、世界の主要企業が老朽化したシステムを刷新し、デジタル主体のビジネスに対応する変革を行っていると分析。既存システムの刷新には準備期間も含めて5年ほどかかると見られることから、2025年がタイムリミットだと予測し、デジタル変革に失敗した企業は「2025年という崖から転落しかねない」と、山本教授は警鐘を鳴らす。

 DXレポートでは、ユーザー企業へのアンケートで、「ほとんどのシステムが老朽化している」「半分が老朽化している」「一部が老朽化している」「老朽化はしていない」の中から自社のシステムに状態を選んでもらったところ、「一部が老朽化している」まで含めて、8割余りのシステムに老朽化した部分が存在しているという。また、約7割は「老朽化したシステムがデジタル変革の足かせになっている」と感じている。

 DXを実現するためには「DX推進システムガイドライン」を策定し、ガイドラインに沿ったかたちで指標、診断スキームを定めて「見える化」を行う。さらに、国内のIT人材の約7割はSIerなどのITベンダーに所属していることから「ユーザー企業とITベンダーの目指すべき姿と、双方の新しい関係構築」も重要な要素になってくるという。技術的には、外部環境の変化への適応力を高めるためにブラックボックス化したシステムを切り出して、マイクロサービス方式につくり直したり、開発手法のアジャイル方式を取り入れるなどを想定している。

 山本教授は、「外部環境の変化は、テクノロジー系のスタートアップ企業が巻き起こす場合もあるが、多くの会社にとっては今のライバル企業が先にデジタル変革を成し遂げ、圧倒的な差をつけられるほうがインパクトが大きい」と話す。基幹システムの刷新には時間がかかるため、「まだ行動を起こしていない企業があったら、2025年の崖から転落しないよう、今すぐにでも取り組みを始めてほしい」と訴えた。
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外部リンク

名古屋大学=http://www.nagoya-u.ac.jp/