Special Issue

たった一つの端末で多彩な決済サービスに対応 「マルチQRゲートウェイ」でQRコード決済の導入も容易――アルファノート

2019/03/07 09:00

週刊BCN 2019年03月04日vol.1766掲載

 日本は2019年に「キャッシュレス決済元年」を迎えるといわれている。クレジットカードなどの決済サービスを手掛けるアルファノートは2月、新たにQRコード決済に対応したポータブル決済端末の提供を開始した。「マルチQRゲートウェイ」というサービスと組み合わせることで多彩な決済サービスを一つの端末に集約できるという。新端末に込めた戦略を、同社の川端一行代表取締役と荒木歩・システム開発部部長、館野直人・営業部部長の3人に聞いた。

アルファノートの新型ポータブル決済端末

「キャッシュレス決済元年」を迎え
対応が負担になる店舗

 クレジットカードやデビットカード、電子マネーに続き、最近では新たな決済方法として「LINE Pay」「PayPay」などQRコードを用いたキャッシュレス決済サービスが相次いで登場している。QRコード決済は日本でも急速に普及するとみられ、日本能率協会総合研究所ではその市場規模について、19年度に6000億円、23年には8兆円にまで拡大すると推計している。

 キャッシュレス決済は、消費者にとってスムーズな支払いが可能になるなどのメリットがあるが、前提として、店舗側がキャッシュレス決済サービスに対応している必要がある。しかし、店舗で消費者が多種多様な決済サービスを利用できるようにするためには、各サービス事業者との加盟店契約、決済を可能にする機材やシステムの導入、店舗スタッフへの教育など、店舗側に多くの負担がかかってしまう。

 そこで期待されるのが、多種多様な決済サービスをより簡単に導入できる手段だ。クレジットカードや電子マネーなどの決済手段については、それらを店舗が容易に導入できるようにする「決済代行サービス」がある。そうしたサービスを以前から提供してきたアルファノートは新たに、QRコード決済も容易に導入できる新型ポータブル決済端末と関連サービスの提供を2月に開始。中小規模の店舗・チェーン店を主なユーザーとして販売していくという。
 
端末カラーは原則として黒のみだが、オリジナルのカラーや図柄などのカスタムオーダーも応相談

Android OS搭載で機能拡張が容易な
オールインワン型ポータブル決済端末

 アルファノートの新たなポータブル決済端末の特徴の一つは、Android OSを採用し、同社のアプリマーケットを通じてユーザー自身がアプリを追加できるという点だ。

 「一般的なスマートフォンやタブレット端末のように、新たなサービスが登場したときにもアプリの追加で後から対応していくことができる。この端末向けのアプリマーケットは今後、ラインアップを充実させていく計画だ」と川端代表取締役は説明する。

 ハンディーサイズで、タッチ画面上で操作し、無線LANやBluetooth、LTE通信に対応するといった点も、スマートフォンやタブレット端末と同様だ。そこに決済端末ならではの機能として、磁気および接触型ICによるクレジットカード決済に加え、非接触ICカード(NFC Type A/B、MIFARE)の読み取り、内蔵カメラによるQRコード読み取りが可能なハードウェアやソフトウェアを備え、利用明細や領収書などの印刷に使えるロール紙プリンターも搭載。クレジットカードからQRコード決済まで一台で対応可能なオールインワン型決済端末だ。同社が提供している既存端末がクレジットカード専用のCAT(Credit Authorization Terminal=信用照会端末)だったのに比べ、利用できる決済手段は格段に広がったといえるだろう。

 荒木部長は、「必要となる全ての機能を搭載した端末であることがポイントだ。GPS機能も備えているため、配送ドライバー用の端末としても利用できるだろう。また、LTE通信機能も日本の携帯電話網における『プラチナバンド』に対応しているため、海外製のLTE端末にありがちな通信エリアの心配もない」と説明する。

独自開発のゲートウェイで
さまざまなQRコード決済に対応

 この新端末に合わせて提供されるのが、「マルチQRゲートウェイ」というサービスだ。アルファノートが独自に開発した、QRコード決済に関連したサービスである。

 「QRコード決済に対応したさまざまなサービスが台頭してきているが、このゲートウェイがQRコード決済事業者ごとにそれぞれ異なるAPIを一つに集約することで、端末上では一つのアプリ内で利用できるようになっている。このようなゲートウェイサービスを大手企業以外で独自に提供しているのは、今のところ当社だけだ」(荒木部長)

 QRコード決済を利用する店舗にとってみれば、一つの端末とサービスの組み合わせで多彩な決済サービスが利用できるというメリットが得られる。もちろん新たな決済サービスが登場した際にも、ゲートウェイでの対応が完了すれば店舗などでも即座に利用可能となり、端末やアプリの操作も煩雑にならずに済むため店舗スタッフの負担も軽い。
 
(写真左から)荒木 歩 システム開発部 部長、川端一行 代表取締役、館野直人 営業部 部長

 「今回の端末は、もちろん当社の決済サービス加盟店2万店以上の端末を置き換えることも意識しているが、主なターゲットは新規ユーザーだ。今までの決済サービスや決済端末ではニーズに合わなかったような店舗などにも、この端末とゲートウェイサービスなら使っていただけるだろう。今回は、特に当社の決済サービスにひも付けせず、他のサービス、例えばカード会社などが自社サービスと組み合わせて本端末を販売するといったこともできるようにしている。そうして多くの端末が出回れば、そのユーザーの多くがマルチQRゲートウェイを使ってくれると期待しているからだ」(川端代表取締役)

20年中に100万台という目標に向け
システムパートナーを募集中

 マルチQRゲートウェイサービスを通じた決済から、アルファノートはシステム利用料や認証料を得ることができる。そのため同社は、クレジット決済代行などの自社サービス導入にこだわらず、マルチQRゲートウェイサービスの入り口となる新端末の拡販施策を積極的に進めている。

 具体的には、早期ユーザーや決済サービスの既存ユーザーを対象に安価で端末を提供するといったキャンペーンはもちろん、端末そのものをさまざまなパートナーに販売してもらうことで端末の普及を図ろうとしている。販売目標は、20年中に100万台だという。

 同社が今、とりわけ期待しているのが、アプリを通じてさまざまなサービスを提供するパートナーだ。アルファノートにとっては自社アプリマーケットの品揃えを拡大でき、端末の魅力を高めることにつながる。またパートナーにとっても、マルチQRゲートウェイを利用できる端末を自社サービスとともに販売することで、付加価値を高めることができる。汎用性の高いAndroid OS搭載端末ならではの拡販策といえるだろう。

 「アプリの充実という点では、店舗向けにスマートフォン/タブレットのアプリから使えるサービスを手掛けているような企業とパートナーシップを結び、本端末向けにも提供していこうと考えている。QRコードはもちろん、クレジットカードまで多彩な決済手段に一台で対応でき、アプリマーケットを活用すれば柔軟に使っていただける端末であるため、きっとパートナー企業にとっても多大なメリットがあるはずだ」と川端代表取締役はアピールする。

端末上で利用できる
アプリの拡充にも積極的に取り組む

 この決済端末で利用できるアプリとして、現在、アルファノートが具体的にイメージしている例が、スマートPOSやCRM、ポイントサービスなどの店舗に役立つサービスだ。このうちスマートPOSについてはパートナーとして名乗りを上げている企業がすでにあるという。

 「電子ギフトを手掛ける企業からも、パートナーとしての引き合いがきている。相手先は実店舗の端末を持たないため、この端末を使いたいという話を持ち掛けていただいた」と館野部長は話す。

 アプリマーケットの拡充には、アルファノート自身も独自に取り組んでいる。例えば、以前からサービスとして提供しているプリペイドギフトの仕組みにも、この端末用のアプリを用意した。インバウンド需要にも対応すべく「WeChatPay」や免税対応アプリなども備えている。今後は、店舗運営を支援するツールなども検討していくという。

 「当社は今回、開発力を強化し、大手しか手掛けていなかったマルチQRゲートウェイを作り上げることができた。その一方、大手にないフットワークにも自信があり、パートナーなどからの要望があれば、端末のカスタマイズなどにも迅速に対応していく」と川端代表取締役は話す。
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外部リンク

アルファノート=https://www.alpha-note.co.jp/LP/A8_vend/