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<本多編集長が今、いちばん気になる「インフラ運用」>連載 第3回 徹底分析 ネットワールドは開拓者だ! クラウド&HCI バトルで見せる魅力と真価
2018/10/25 09:00
週刊BCN 2018年10月22日vol.1748掲載
「時間が足りない」のは「錯覚」
9月11日に東京コンファレンスセンター・品川を全館貸し切りで開催したNetworld .next 2018 DX(Deluxe)。二つの特別講演、22のセッションと総勢50社以上による展示ブースが設けられ、当日は約1000人が参加した。特別講演1に登壇したのはメンタリストのDaiGo氏。講演テーマは「週40時間の自由をつくる超時間術」だ。
DaiGo氏は、人類の労働時間は減少しているにもかかわらず、時間が不足していると感じるのは「錯覚」だと指摘。そのために避けるべきは、ゴールコンフリクトを起こさないことだという。目標と目標がぶつかり合うと脳内で時間の感覚がゆがみ、時間が足りないという錯覚に陥る。コンフリクトが大きいほど時間のズレが生まれて自制心が効かなくなり、時間不足の錯覚に陥って脳が疲れ果ててしまう。
ゴールコンフリクトを起こさず、時間の錯覚をなくすため、DaiGo氏は「マルチタスクをやめること」を挙げる。例えば一定の集中時間を確保するため、メールを使えなくする企業もある。このほかの方法として、吐くことを意識した深呼吸や旅行、自然との触れ合いなどが有効だと話した。
クラウドとHCIベンダーがガチンコ対決
注目のネットワールドセッションでは、「インフラのデジタルトランスフォーメーションを行うのは誰だ!?」をテーマに、クラウド構築ベンダー、HCIベンダーがガチンコ対決した。各セッションでは、会場の参加者がLiveQAシステムで対戦をジャッジし、勝者を決定する白熱のバトルとなった。メガクラウド構築ベンダーのバトル!
第1セッションは、三大メガクラウド構築ベンダーの対決。「Amazon Web Services(AWS)」を担ぐ伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、「Microsoft Azure」を担ぐ日本ビジネスシステムズ(JBS)、「Google Cloud Platform(GCP)」を担ぐクラウドエースが登壇。クラウドとオンプレミスのマルチクラウド連携をテーマに議論した。最初のテーマは、既存システムのクラウドへの移行について。クラウドエースは「そのまま移行するのではなく、活用しやすいところを利用してクラウド化するべき」とした。CTCは「あまり変えることなく載せ替える。それをどううまくできるかがカギ」、JBSは「クラウドネイティブがベストだが、ニーズに対応すべく移行のアセスメントを提供している」とした。
マルチクラウドソリューションの事例紹介では、CTCがベリタス製品とAWSの組み合わせによるDR事例を、JBSが従量課金のコストメリットを生かした事例を、クラウドエースがAI系に強いGCPのメリットを紹介した。
その後は、LiveQAシステムで募集した会場参加者からの質問に回答。他ベンダーのサービスでうらやましいと思うところ、トラブル対応で困った経験、コストについて、などの質問に応じた。中でもトラブル対応では、「システムから情報がとれないとき」(CTC)、「オンプレミスとは違うクラウドならではの考え方を分かってもらうこと」(JBS)、「課金の間違いが続いたり、新サービス追加の情報がベンダーにも来なかったこと」(クラウドエース)を挙げていた。
投票では、Azureを担ぐJBSと、GCPを担ぐクラウドエースの2社が勝ち上がった。
HCI主要ベンダーが対決!
第2セッションは、主要HCIベンダー3社の対決。「Dell EMC VxRail」を提供するEMCジャパン、「Nutanix NX」を提供するニュータニックス・ジャパン、「NetApp HCI」を提供するネットアップが登壇。オンプレミスとマルチクラウド連携をテーマに議論した。最初のテーマは、マルチクラウドへの取り組みと将来のゴール。ニュータニックスは「HCIを土台に、インフラに必要なものを網羅。さらにマルチクラウドを含めたインフラの上で使いたいものへ拡大する」、ネットアップは「九つのクラウドデータサービスのポートフォリオを展開しており、オンプレとクラウドを自由に行き来できるようにする」、EMCジャパンは「マルチクラウドへ向けたITトランスフォーメーションを加速すべく、HCIの上にソフトウェアデファインドデータセンター(SDDC)、ハイブリッドクラウド向けソリューションを展開している」と語った。
次いで、LiveQAシステムで募集した会場参加者の質問に回答。企業規模が小さくてもHCI導入は可能か、クラウドファースト時代にオンプレシステムを構築するメリット、パブリッククラウドをうらやましいと思うか、などの問いに回答した。規模については、各社とも最小2ノード構成など、より小規模な製品の提供を予定しているとした。オンプレミスのメリットは、「膨大なデータを扱うディープラーニングマシンなどをクラウドに上げるとコスト高で、使い分けるべき」(ネットアップ)、「自治体など外部に出せないポリシーもある。ただ、クラウドが向いているものは引き止めない」(ニュータニックス)、「データの安全性ではオンプレにもメリットがある」(EMCジャパン)と語った。パブリッククラウドについては、サービス面、特に展開の速さを評価する一方、目指す方向はHCIも同じ、という意見が出た。
投票では、ニュータニックスとネットアップの2社が勝ち上がった。
メガクラウド vs HCIの頂上決戦!
最終セッションは、メガクラウドベンダーとHCIベンダー、各ラウンドで勝ち残った4社のガチンコ頂上決戦。マルチクラウド連携をテーマに予算・構築期間・実運用を切り口として、メガクラウドとHCI、どちらが本当に使えるインフラかの議論を戦わせた。マルチクラウドに向くシステムという問いには、ニュータニックスが「プロジェクトシャーロック」(仮称)という極小のNutanixによるIoTのソリューションを、ネットアップがオンプレミスにまたがるワークロードをクラウドにアップロードして戻すソリューションを紹介。クラウドエースは機械学習に特化したグーグルのプロセッサー「TPU」を挙げ、AIが手元に降りてくると説明。JBSはAzureと(オンプレミス向けの)「Azure Stack」で同じことができるとアピールした。
マルチクラウド環境での注意点という問いには、「単純にクラウドにアサインできるわけではない」(ネットアップ)、「インターフェースがバラバラのため、いいとこどりして摘み食いすると上手く行かない」(ニュータニックス)、「クラウドは文化が違うのでそれを受け入れた上でマルチ化しないと失敗する」(JBS)、「コアとするものを決めるべき」(クラウドエース)とポイントを指摘した。
次いで、LiveQAシステムによる会場参加者からのさまざまな質問に回答。中でも、5年後にクラウドとHCIはどうなっているかという質問については、どちらも進化しながら残り続けるということで意見がまとまった。
注目の最終投票では、ニュータニックスが勝者に選出された。
10年後生き残るには情報処理力から情報編集力へシフト
特別講演2では、元リクルート社フェローで東京都初の民間人校長になった藤原和博氏が「10年後、君に仕事はあるのか? 未来を生きるための雇われ力」と題して講演した。従来、重視された情報処理力=頭の回転が速い人は、急速な進化を遂げるAI化するロボットにとって代わられていく。専門職とされた弁護士の仕事は対人セッションのみになり、医師の仕事も診断はAIに任せて、治療やケア中心になる。そうした時代に人間がやるべき仕事とは、まだ正解のないものに「情報編集力」によって関係する全ての人が納得できる「納得解」を紡ぐことだと、藤原氏は語る。
納得解を紡ぎ出すためには、ブレインストーミングやディベートといった手法が有効。そこで重要なのは、初めから正解を出すことではなく、まず頭に浮かんだことを口に出すこと。そして周囲の反応を見ながらどんどん修正していくことだ。「協働作業は脳を活性化させる。一方、情報処理作業は脳を疲れさせる。情報処理力に偏った頭を情報編集力へと切り替えることで、イノベーションをつくり出すことができる」と藤原氏は強調した。
売り上げが好調に推移
特別講演2の前にあいさつに立ったネットワールドの森田晶一社長は、昨年を上回る多くの来場者を迎えられたことに感謝の言葉を述べた上で、「目標はデジタルトランスフォーメーションのためのITインフラを提供することであり、そのインフラを民主化することを目指す」と話す。そのために知見をコードに残し、分身をつくって販売していく。また、業績にも言及し、売り上げが順調に伸びていると語った。編集長の眼
来場者にとって価値あるコンテンツを提供することに徹底的にフォーカスすることで、最終的にネットワールドが提供するソリューションの価値に対する理解を深めてもらう。そんな意図が感じられるプログラムで、その構成・演出の巧みさには素直に感心する。特別講演では、タイムマネジメントやAI時代に必要なビジネススキルといった、顧客へのITソリューション提案でもフックとなり得るような識者の知見を提供したといえよう。さらに圧巻だったのは、恒例になったネットワールドセッション「ガチンコ対決」だ。詳細は本文に譲るが、主要HCIベンダーとメガクラウドの構築ベンダーが同じステージでデジタルトランスフォーメーションを担う最適なインフラの座を巡ってプレゼン合戦やディスカッションを繰り広げる場面を目にすることはなかなかないだけに、来場者にとっても貴重な機会になったのではないか。ベンダー間の争いは熾烈だが、DX時代におけるITインフラの未来は、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドの中にあることが改めて鮮明になった感がある。- 1
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