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<本多編集長が今、いちばん気になる「ストレージ&バックアップ」>連載 第2回 徹底分析 ネットワールドは開拓者だ! ベンダー8社が本音で語るストレージ&バックアップのリアル
2018/07/26 09:00
週刊BCN 2018年07月23日vol.1736掲載
全てのモノがインターネットに接続
データ活用法が重要に
当日は雨模様だったものの、定刻の10時には200席の会場はほぼ満席の状態に。主催企業であるネットワールドの平松健太郎・ストラテジック・プロダクツ営業部部長による挨拶に続き、日本マイクロソフトの西脇資哲・エバンジェリスト 業務執行役員が、「伝説のエバンジェリストが語る! 魅せる! ウェアラブル・ドローン・ロボティクス・AI・IoT でつながる・かわる近未来!」をテーマに基調講演を行った。「ITに関わる人は、常にアンテナを高くしてテクノロジーの変化に気づき、それに追随していかなければならない」と西脇エバンジェリスト。世の中の全てのものがインターネットとクラウドに接続されるようになり、人々の生活と仕事は大きく変化していくと指摘する。
実際に、例として挙げたエレベーター保守会社では、エレベーターに取り付けたセンサーが取得した計測データをインターネット経由でリアルタイムに収集・分析し、故障時期をAIで予測して事前対処することによって、高い安全性・信頼性を少ない費用で実現しているという。「今では、どんな機器でどのようにデータを集めるかではなく、集まったデータをどう活用するかが問われるステージになっている」と、西脇エバンジェリストは強調した。
ストレージベンダー各社の推しは
オールフラッシュ製品やクラウド
続いて、「ベンダー各社による製品概要説明(ストレージ編)」が始まった。1社10分のプレゼンテーションで、ベンダー各社が“イチ推し”のストレージ製品をアピールしていくという趣向だ。ストレージ編では、Dell EMC、ネットアップ、日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)、ピュア・ストレージの4社が登壇した。Dell EMCは、SSD、ストレージクラスメモリ(SCM)、NVMeを搭載した「Dell EMC PowerMax」を紹介。管理ツール「Dell EMC CloudIQ」には機械学習の技術も適用されているという。
ネットアップは、オールフラッシュ、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)、クラウドが今年のビジネス3本柱であると説明。HCIではSolidFireベースの「NetApp HCI」、クラウドではグーグルと提携した「NetApp Cloud Volumes」を推しているという。
日本HPEが推すのは、予測分析フラッシュストレージ「HPE Nimble Storage」。予測型ストレージ管理機能「HPE InfoSight」やマルチクラウドストレージサービス「HPE Cloud Volumes」も同社ならではの商材だとアピールする。
オールフラッシュ専業ベンダーであるピュア・ストレージは、同社の検証センターとの間をビデオ通話で結んだ“実証デモ”を披露。SSD、コントローラ、NVRAMを物理的に抜き差ししても業務にほとんど影響が生じないことを示した。
各社が強みと自認するのは仮想化
オールフラッシュの競争も激しい
“バトル型”として企画された今回のセミナーの目玉はパネルディスカッションだ。二つのテーマについて、ベンダー各社が自社の製品・サービスを売り込む。一つめのテーマは「~この用途ならやっぱりウチでしょ?~用途別おすすめ事例」。「仮想化」用途では、日本HPEがレイテンシの低さ、Dell EMCがスケールアウト性能、ネットアップが運用に手間がかからないHCIをアピール。「デスクトップ仮想化」用途では、日本HPEとピュア・ストレージが重複排除と圧縮の性能を挙げた。
二つめのテーマは、「~聞いて!ウチの最新ネタ!~ お題別最新テクノロジー紹介」。Dell EMC、日本HPE、ピュア・ストレージの3社が挙げた「オールフラッシュ」では、NVMeやSCMへの対応が重要な争点に。これに次ぐ2社が挙げた最新テクノロジーは、ネットアップと日本HPEが挙げた「ビッグデータ」と、Dell EMCとネットアップが挙げた「クラウド」だった。
アプリで投稿されたライブ質問に
ストレージベンダー各社が答える
ストレージ編の最後は、リアルタイムアンケートアプリ「Live Q&A System」を使った「~ウチに何か聞きたいことある?~ライブQAによる質問タイム」。会場から寄せられた「バックアップ用ストレージの最強は?」という質問に対し、Dell EMCは「Data Domain」、ネットアップは「クラウドとONTAPのFabricPool機能の組み合わせ」、ピュア・ストレージは「Pure Storage FlashBlade」、日本HPEは「HPE Cloud Volumes」と答えた。また、「HCIとストレージをどう使い分けるのか?」には、Dell EMCが「適材適所」、日本HPEが「HCIはハイパフォーマンスではないので、運用工数削減やスケールアウトに使ったほうがよい」などと回答。「他ベンダーの機能でうらやましいと思うものは?」という問いにも、「NetAppのビッグデータ関連の機能。データ中心の時代にはNFSのファイルアクセス機能が重要になるが、HPE Nimble Storageはブロックアクセスしかできない」(日本HPE)、「良くも悪くも、当社はオールフラッシュストレージ専業。他社のように、サーバーを含めた提案ができない」(ピュア・ストレージ)と、正直に応じていた。
最後の質問は、「本日、あなたが一番興味を持ったストレージベンダーは?」。結果は、日本HPEが最多ポイントを獲得した。
バックアップの世界でも
クラウド対応をうたう製品が増加
セミナーの後半は、データに関するもう一つの重要なソリューション「バックアップ」がテーマに。まず、同じく10分のプレゼンで各社の“イチ推し”バックアップ製品を紹介する「ベンダー各社による製品概要説明(バックアップ編)」から始まり、ヴィーム・ソフトウェア、アクロニス、ベリタステクノロジーズ、Commvault Systemsの4社が登壇した。ヴィームは、「Veeam Availability Suite」を紹介。オンプレミス、プライベートクラウド、マネージドクラウド、パブリッククラウドの全ての間でアプリケーションのデータを自由に行き来させるための管理ができると強調する。
アクロニスが挙げたのは、SaaS型のバックアップサービス「Acronis Backup Cloud」。サービスプロバイダーが自社商品の素材として活用することもできる。
ベリタスは、データ保護向けの製品ラインアップを紹介。「NetBackup/Backup Exec」のほか、NetBackupアプライアンス、PC保護の「Desktop and Laptop Option」、イメージバックアップの「System Recovery」、クラウド内データ保護の「Cloud Point」といった製品群だ。
Commvaultは、Commvaultソフトウェアのカバレッジは業界随一だとアピール。DBサーバーを含むさまざまなアプリケーションに対応し、データの整合性を確保した状態で確実にバックアップとリストアができることが強みだと語った。
競争分野は各社異なる
バックアップ製品には多様性あり
続いて、バックアップベンダー各社が自社の製品・サービスを売り込むパネルディスカッションを行った。設定されたテーマは、ストレージ編と同じだ。しかし、残念なことに、バックアップ編のパネルディスカッションは“バトル型”とはならなかった。各社の得意領域が見事にばらばらになってしまい、重なり合う部分は少なかったのである。具体的には、第一のテーマ「~この用途ならやっぱりウチでしょ?~用途別おすすめ事例」は、Commvaultとベリタスが「統合管理/運用」を選択。Commvaultはネットワーク越しのバックアップでも重複排除や帯域幅設定ができることを強調し、ベリタスはエンタープライズ用途に強いNetBackupは多様なミドルウェアやアプリケーションに対応できると述べた。
また、第二のテーマ「~聞いて!ウチの最新ネタ!~ お題別最新テクノロジー紹介」では、同じ項目をあげたベンダーはなし。伝統的なバックアップソフトにない機能として関心を引いたのは、アクロニスの「データ改ざん防止」、Commvaultの「スケーラビリティ」、ヴィームの「自動化」と「Dev/Test」、ベリタスの「可視化」といった項目だった。
ストレージ側では実現できない
整合性の高いバックアップが可能
バックアップ編でも、最後は質問タイムを設けた。「ストレージ側のバックアップ機能とバックアップソフトの違いは?」という“よくある質問”に対して、ヴィームの担当者は「アプリケーションとの整合性が強く、確実にリストアできる」と回答。アクロニスは「当社のSaaSのスケールアウトとストレージのスケールアウトはちょっと異なる」と指摘した。また、最後の質問の「本日、あなたが一番興味を持ったバックアップ製品のベンダーは?」では、アクロニスが最多ポイントを獲得した。
セミナーのクロージングでは、ネットワールドの平松部長が再び登壇。「ストレージ・バックアップ製品ともに多様化が進み、一つのものでは対処できない時代になった。多くの製品を取り扱っている当社は、お客様に技術的な支援を提供することを通じて、自らの価値をより一層磨いていく」と挨拶して締めくくった。
編集長の眼
来場者セントリックとでもいうべきか、非常に趣向が凝らされたイベントだった。メーカー各社が自社製品を単にプレゼンするだけのイベントも少なくないなか、来場者の関心を惹きつけ、ビジネスの参考になる情報を楽しみながら得られるプログラムにしようという主催企業ネットワールドの工夫が見事に成果につながった印象だ。ストレージとバックアップで異なる様相を呈したバトル型のパネルディスカッションも、技術と市場のトレンドを理解したうえで議論を盛り上げるモデレーターの手腕が光った。また、「Live Q&A System」をフル活用し、各プレゼンターに対する事前の期待値、さらにはプレゼンやパネルディスカッションでの発言の説得力などがどう受け入れられたのか、来場者の投票の結果がその場で会場の全員に可視化されるという演出も盛り上がりに貢献した。プレゼンターにとっては厳しい試練の時間だっただろうが、“自分たちが伝えたいこと”を一方的に伝えるだけでは、製品がパートナー、ひいては市場に受け入れられ、浸透していくのが難しいことも確かなのだ。- 1
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