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<エレコム特集 第4回(全5回)>グループシナジーでB2B市場を切り開く フラッシュメモリで新価値を創造 IoT化が進むほど膨らむビジネスチャンス
2018/06/28 09:00
週刊BCN 2018年06月25日vol.1732掲載
ATMやPOSレジ、改札機で採用
1990年代にPC周辺機器や民生用と産業用フラッシュメモリの製造・販売を手がけたハギワラシスコムは、2011年3月に民事再生法の適用を申請。同年7月にエレコムへ事業を譲渡し、産業用に特化したハギワラソリューションズとして再出発した。
同社のメモリカードは、銀行のATMやコンビニエンスストアのPOSレジ、駅の自動券売機や自動改札など、産業や生活のインフラを支える重要な機械で採用されている。国内の産業用メモリカード市場では4割~5割のシェアを誇る。24時間365日、一時の停止も許されない環境で採用されているということは、それだけ厚い信頼を得ていることを裏づける。
ハギワラソリューションズの最大の強みは、ファームウェアの開発から回路設計、製品試験、サポートまでを一貫して国内で担っていることだ。さらに、20年近くにわたり産業用メモリの分野で蓄積してきたノウハウをもっている。
こうした強みにより、例えばメモリカードの書き換え回数による寿命を予測できる診断ソフトウェアの「LiveMonitor」や、24時間安定して高いスピードを維持可能な独自技術を実現している。鈴木浩之取締役営業本部長は、「ある採用企業からは、製品の寿命が予測できることによって、今まで突発的に発生していた保守作業が計画的に行えるようになり、結果としてサポートフィーが6分の1に削減され、製品は多少高くてもトータルで儲けが増えているとのお声をいただいた」と自信をみせる。
また、万が一トラブルが発生したときの解析も、開発からサポートまでを一貫して手がけているからこそ対応できる。「とりわけ日本国内のお客様にはトラブル発生時の原因究明が不可欠で、原因を明らかにして同じ不具合を繰り返さないよう、対策が求められる。こうした要求にもしっかりと応えられる体制が、当社には整っている」と鈴木取締役は話す。
最近では、バスやタクシー会社などで安全運行や事故・トラブルの際の記録を目的に導入が進む業務用ドライブレコーダーでの採用も増えている。耐熱性や耐久性はもちろん、事故で機器が壊れてもメモリカードを解析できる高い技術力が、他社との差異化につながっているのだ。
グループシナジーでIoTビジネスのチャンス
エレコムグループが連携することで、新たな分野への進出も可能になっている。例えば、ある工作機器のメーカーでは、自社で導入した機械が安定して稼働しているかどうかを把握したいというニーズが高い。この点では、グループのDCTがもつIoTセンサの技術を提案することができる。
さらに、センサから得たデータをクラウドに上げる際のゲートウェイ用のPCはハギワラソリューションズやロジテックINAソリューションズが開発したものが使えたり、無線通信はエレコム、同軸ケーブルを使った通信はDXアンテナの技術が使えたりするというように、グループの独自技術を活用できる。ハギワラソリューションズにとっては、既存の取引先に新規ビジネスの提案が可能になるということだ。企業へのIoT導入が広がるほど、エレコムグループのビジネスチャンスも拡大する可能性が大いにある。
今年1月に、エレコムの子会社でマザーボードの開発を得意とする日本データシステム(JDS)の事業すべてがハギワラソリューションズに移管され、一体化した効果も大きい。「メモリ製品を提案しているお客様は、必ずと言っていいほどマザーボードをお使いになっている。そのため、メモリ製品だけではなくマザーボードも一緒にセット提案することで、お客様の開発リソースの削減につながる」(鈴木取締役)のだ。
販売面では現在、国内11社の代理店の販売網を活用している。エレコムの産業用ソリューションが、ハギワラソリューションズのB2Bの販売網を通じて導入されることも珍しくない。
欧州をはじめとした海外への進出も積極化していく方針だ。今年4月には、産業用制御システムやIoT機器向けのセキュリティ対策ソリューションの提供に向けて、スイスに本社を置くメモリメーカーのスイスビットと戦略的パートナーシップを構築。最初の取り組みとして、スイスビットの「Secure SD Card」の日本国内販売と製品サポートを今年秋から提供していく。
本来なら競合するメーカーであり、組むことは難しい相手であるはず。しかし、鈴木取締役は、「お互いにイチから海外の販売網を構築していては時間がかかる。自社の独自技術を一気に普及させるためには、戦略的なパートナーシップを結んだ方が得策」と背景を語る。データの読み出しに強固なセキュリティ対策が施された「Secure SD Card」は、まさにこのIoT時代にニーズが高まるだろう。
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