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<エレコム特集 第3回(全5回)>グループシナジーでB2B市場を切り開く B2B向け国産PCを開発 新機軸の完成品デバイスが続々
2018/06/07 09:00
週刊BCN 2018年06月04日vol.1729掲載
カスタムPCを自社工場で一貫生産
エレコムは、2004年12月に丸紅インフォテックから周辺機器メーカーのロジテックを買収し、100%子会社化した。同社は、DASなどの国内ストレージ分野における“老舗メーカー”として業界トップクラスにあった。当時はグループ会社として、他の自社製品も含め、周辺機器分野の売上拡大に貢献することを期待されていた。ただ、B2C市場が縮小傾向にあり、グループ全体がB2B市場に舵を切るなか、ロジテックもBTO型のカスタムPCを主力製品とするデバイスメーカーに業態変革してきた。10年10月には、ロジテック100%資本の子会社「ロジテックINAソリューションズ」を長野県伊那市に設立。自社製品の開発・生産も本格化している。グループ化した当初は1割程度しかなかったB2B分野は、今期7割を占めるほどの事業計画となっている。
ロジテックINAでは、生産活動や消費活動などのシーンを支える産業用PCを、顧客の注文に応じて特別仕様(カスタム)でつくっている。梶浦常務取締役は、「ロジテックは、国内に自社工場をもち、企画、開発、製造、試験、検査のほかメンテナンスサービスまでを集約している。B2C向けBTO型PCは他社にもあるが、B2B向けを主体に受注生産しているメーカーとして、当社はトップクラスの実績がある」と、市場で存在感が増していると強調する。
同社のカスタムPCは、すべての工程を国内のロジテックINAの工場で完結させているのが最大の特徴だ。製造から保守までを柔軟でスピーディに対応できることと、品質維持はもとより、マルチベンダーのパーツメーカー各社と協業体制を構築し、顧客の様々な要望に応えられるバリエーションを揃えている。「パーツの実装からOS、ドライバ、ソフトウェアなどのインストール、環境設定までをキッティングし、顧客に納める」(梶浦常務取締役)と、環境設定などに必要な人的工数を削減するだけでなく、低価格のデバイスを実現している。
堅牢PCとメンテナンスコールPC
すべてのパーツをオーダーできるため、同社のカスタムPCは、多用途で使われている。梶浦常務取締役によれば、「カスタムPCを提供した当初は、プリクラの画像処理用やインターネットカフェ用のPCとして採用が増えた。最近多いのは、工場の検査ラインだ。カメラの映像をもとに画像処理し、生産ラインの状況を把握する用途に使われているほか、物流・小売りなどのフィールドで採用されている」と、このように幅広い分野のバックエンドで活用されている。
パーツを組み立ててつくるカスタムPCに加え、同社では最近、完成品のデバイス開発・生産・販売を本格化している。その一つが堅牢タブレット端末「ZEROSHOCKタブレット」だ。耐衝撃性や耐振動性能にすぐれ、防塵・防滴で長時間使用できる。今年3月上旬に発売した最新の「LT-WMT10」シリーズは、10インチのタッチパネルを搭載し、CPUがIntel CeleronとIntel Core i5の両モデルで、OSは、Windows 10 IoT Enterprise LTSB 2016とWindows 7 Professional for Embedded Systems搭載の両モデルから選択可能。ロジテックINAの工場でキッティングする。梶浦常務取締役は、「現場を支援する業務用に特化したタブレット端末で、製造品質・工程の管理や工場検査装置の点検、倉庫内の在庫管理などに使われている。ここにきて医療現場での採用が増えている」と説明する。
また、グループ会社の技術を取り入れた新機軸のPCとして、PCのコンポーネントが故障する可能性を事前に予知し、適切なメンテナンス時期を顧客に知らせる「メンテナンスコールPC」の販売を開始した。今夏には、同社で行う「遠隔監視サービス」も開始する予定。「ハギワラソリューションズ、日本データシステム、DCTのエンベデッドを扱うグループ会社の技術とノウハウを生かし、故障予知のアルゴリズムを開発した」(梶浦常務取締役)と、シナジーを生かした製品開発が本格的に動き始めているという。
ロジテックの製品は、BTO型のPCだったため、直販が主体だったが、完成品がラインアップされたことから、今後、ハギワラソリューションズの代理店経由での販売が拡大するとしている。梶浦常務取締役は、「キッティングや保守を含め、代理店とのパートナーシップを強めていく」と、新たな販売促進施策が追加される可能性があるようだ。
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