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世界初の自律型DBクラウド 日本オラクル 「Autonomous Database Cloud」を提供開始

2018/05/31 09:00

週刊BCN 2018年05月28日vol.1728掲載

 日本オラクルは4月19日、昨年10月に発表した自律型データベースクラウド「Oracle Autonomous Database Cloud(Autonomous Database Cloud)」の第一弾サービス「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloud(Autonomous Data Warehouse Cloud)」の国内提供を開始した。新サービスは自動管理、自動保護、自動修復の機能を備え、データウェアハウス(DWH)環境の煩雑な構築、管理、運用を容易にし、特別なチューニング不要で高いパフォーマンスと可用性を実現する。佐藤裕之・Cloud Platformビジネス推進本部本部長にAutonomous Data Warehouse Cloudの特徴とクラウド戦略を聞いた。

第一弾サービスは「データウェアハウス」 企業のデータ・ドリブン経営とイノベーションを支援

世界初フルマネージドの自律型DB
管理・保護・修復がすべて自動化


佐藤裕之
クラウド・テクノロジー事業統括
Cloud Platformビジネス推進本部
本部長
 Autonomous Database Cloudは、オラクルが昨年10月に開催した「Oracle OpenWorld 2017」で発表した自律型データベース運用を実現するクラウドサービス。Oracle Databaseの最新版「Oracle Database 18c」と「Oracle Exadata」、「Oracle Cloud」を基盤としており、最大の特徴は、自動管理(Self-managing)、自動保護(Self-securing)、自動修復(Self-repairing)を備えている点にある。

 各製品が備える自動化機能を活用しながら、機械学習にもとづきポリシーベースでDB自身が自律して稼働する。これにより、従来は管理者が担っていたDB運用に関わるバックアップ、セキュリティパッチの適用、アップデート、チューニング、障害発生時の対応といったさまざまな作業を不要にする。

 「データ活用において大きな課題となっているのは、人手に依存した管理が多く、複雑で、高コスト、構築に時間がかかる点だ。しかも、日本は現状でもIT人材が不足しており、その状況は2020年以降急激に悪化する」と佐藤本部長は指摘し、「オラクルは十数年かけて高度なデータベースの自動化テクノロジーを開発してきた。Autonomous Database Cloudなら、管理者はポリシーを設定するだけで済むため、データインフラについて詳しい知識が無くても運用できる。作業負荷を大きく削減し、人的ミスを排除して、コストを大幅に抑えながら、高可用性、高性能、高セキュリティを実現できる。世界初のフルマネージドの自律型DB」であると強調する。

 今回、Autonomous Database Cloudの第一弾サービスとして提供を開始したのが、クラウド型のデータ分析基盤となるAutonomous Data Warehouse Cloudだ。さらに、今夏には「Autonomous OLTP Database Cloud」の提供を予定している。二つのサービスのコアとなるエンジンは基本的に共通しているが、必要とされるトランザクション特性が異なることから、それぞれに最適化したサービスにしているという。
 
 
 

より簡単、より高速、より柔軟
エンタープライズレベルのSLAを保証


 Autonomous Data Warehouse Cloudは、より簡単、より高速、より柔軟という三つの特徴をもち、複雑な設定やチューニングを自動化し、その管理をユーザーのポリシーにもとづいてクラウド側が自律的に行う。Oracle Databaseが備える分析機能やセキュリティ機能といったメリットを活用しながら、ワークロードやデータ量の変化にも動的に対応、ダウンタイムなしで利用することを可能にする。

 佐藤本部長は、「DWHの設計、構築、チューニングには多額のコストと時間がかかることが、多くの企業にとってデータ活用のハードルを上げる要因になっていた。Autonomous Data Warehouse Cloudでは、サイジングなどは必要なく、3ステップだけでDWHを構築できる。しかも、はじめからチューニング済みですぐに分析作業がスタートできる。初めてDWHを構築する場合でも、数時間で作業を完了できるはず」とメリットを語る。

 Autonomous Data Warehouse Cloudについて先行検証を実施したアシストでは、オンプレミスで導入したOracle Databaseと比べて検索処理時間は約10分の1、SQLチューニング工数は約20分の1に削減するなど、自動チューニングによる高い効果を実証している。

 可用性についても自動化されており、インスタンスの作成時に最適な設定をクラウド側で行う。データロード前の下処理(ソート)や定期的なデータメンテナンスなど、データ管理のタスクも自動化している。

 「一般的に提供されているフルマネージドサービスでは、軽減できる管理業務が一部にとどまっているが、Autonomous Data Warehouse Cloudなら、はるかに多くの業務をカバーし、自動化できる」という。

 さらに、公式にSLAを保証しており、最高では99.995%の保証をうたう。1か月換算で2.5分未満、年間でも30分以内のダウンタイムという非常に高いレベルだ。その対象も例外はほとんどなく、パッチ適用やアップグレード作業、データベースのバグ、データセンターリージョンの障害などに起因するダウンタイムまでも含んでいる。

 「DBのトップベンダーであり、DBを知り尽くしているオラクルだからこそ実現できた高いSLAの保証だ。これによりミッションクリティカルなニーズにも十分に応えられる」と佐藤本部長はアピールする。
 
 

TCOでは他社サービスに比べ
5~8倍の競争力を実現


 クラウド型データ分析基盤のサービスには、すでにAWSの「Redshift」やグーグルの「BigQuery」などの競合サービスが存在している。こうした他社サービスとAutonomous Data Warehouse Cloudの違いについて佐藤本部長は、柔軟かつ高い拡張性を備えている点を挙げる。

 「Autonomous Data Warehouse Cloudは、必要に応じてCPUとストレージを個別に拡張~/縮退することができるため、真の意味で投資の最適化が可能だ。その際も無停止で即時に拡張できる。もう一つ、他社サービスと異なる点は、エンタープライズクラスの大規模な同時アクセスにも対応できることだ。サービス開始当初のニーズは、小規模データの分析が中心になると考えているが、部門レベルのデータマート、エンタープライズDWH、非構造化データを含む大規模な機械学習まで、あらゆるカテゴリでの利用を促進していきたい」と力を込める。

 まずは、これまでデータ分析基盤をもちたいと考えながらも、DWHの知識やノウハウ、コストの問題がネックとなっていたユーザーのニーズを掘り起こしたいという。

 Autonomous Data Warehouse Cloudの利用価格(税別、サポート費含む)は、コンピュート(CPU)とストレージの価格の合算となり、ユーザーはそれぞれ必要な量を組み合わせることができる。

 コンピュート部分の価格は、Oracle Databaseライセンス持ち込み(BYOL)の場合で1-OCPU~/1時間あたり38.667円から。ライセンス持ち込みなしの場合は201.333円から。ストレージ部分は、ユーザーDBの圧縮後データ量をベースに計算され、1TB~/1か月あたり1万7760円からとしている。

 「初期投資が不要で、従量課金によるサービスコストの最適化というクラウドサービスならではのメリットに加えて、運用、管理を含めると大幅なコスト削減が実現できる。しかも既存のライセンスを活用できるため、より多くの企業にとって導入しやすい価格設定にできた」と佐藤本部長。

 AWSのRedshiftに比べると、パフォーマンス比で倍以上のコストメリット、管理コストなども含めたTCOの観点からは、5~8倍のコストメリットが実現できるという。

 DBが自律化することによって、企業の情報システム部門はデータの管理や運用に煩わされることがなくなり、より戦略的にデータやICTをビジネスに活用するための施策に専念できる。企業としても、生産性を高めて、データ・ドリブン経営およびイノベーションの実現のために注力できるようになる。
 

DB以外の領域でも
自律型クラウドサービスを展開


 日本オラクルでは、Autonomous Data Warehouse Cloudのサービス開始に合わせ、さまざまな施策を展開していく計画だ。

 まず、既存のOracle Databaseユーザーに向けたデータマートのクラウド移行支援策として「アーリーアダプタープログラム」を提供し、既存のDBと比較した性能向上を確認したり、早期導入を支援する。また、実際にAutonomous Data Warehouse Cloudの効果を体験できる「カスタマーテストドライブ」を用意する。加えて、Oracle Cloudを体験できる300ドルの無料クレジットを、新サービス向けに提供している。

 さらに、パートナーがもつソリューションとの連携を進める。先行評価の支援を行ったり、技術情報の共有を進めて、データ分析・活用ソリューションの拡充を図っていく。国内パートナーとしては、アシスト、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、NTTデータ先端技術、クロスキャット、ジール、新日鉄住金ソリューションズ、TIS、東芝デジタルソリューョン、NEC、日立製作所、富士通、富士通北陸システムズの13社が国内発表で賛同を表明している。

 今後のロードマップでは、ユーザーのデータセンターでマネージドクラウド環境を提供する「Oracle Cloud at Customer」でも、Autonomous Data base Cloudの提供を予定している。オラクルでは、DB以外の領域でも広く自律型クラウドサービスを展開していく計画だ。現時点では、アプリケーション開発、アナリティクス、セキュリティなどの領域でのサービス展開を予定している。

 日本オラクルではクラウド戦略の一環として、近々、国内データセンターの設置を予定しており、営業体制の強化と合わせて、ユーザーのクラウド活用をさらに促進し、データ・ドリブン経営およびイノベーションの実現を支援していく方針だ。
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外部リンク

日本オラクル=http://www.oracle.com/jp