Special Issue
セキュリティ事故の証拠を確保するクラウド型アーカイブ「Zenlok」
2018/05/31 09:00
週刊BCN 2018年05月28日vol.1728掲載
ビジネスで送受信されるメールを7年間・容量制限なしで保存する
情報革命で人々を幸せにするには
インターネットの安全性が大前提
「当社の企業理念である『情報革命で人々を幸せに』を実現するには、インターネットのコンテンツやサービスを安全・安心に使っていただけるようにすることがそもそもの出発点。それによって初めて、生活を豊かなものにしたり生産性を高めたり、といったことが可能になる」と、BBSSの原山健一・取締役社長兼COOは、情報革命に向けての同社の存在意義を語る。
BBSSは、2006年にソフトバンクBBから分かれて誕生したソフトウェアとITサービスの企業である。現在の株主はソフトバンク コマース&サービス(100%)。事業分野はセキュリティ、SaaS/クラウド、電子商取引(EC)と多岐にわたるが、「ADSL回線向けのセキュリティサービスで急成長したことが分社・独立につながった」(原山社長)という。現在でも、回線に付帯するセキュリティ関連サービスがポートフォリオの大きな部分を占めている。
メールをクラウドに別途保存して
有事の調査を可能にするZenlok
そうしたセキュリティ商材の一つが、企業向けのクラウド型アーカイブソリューションのZenlokだ。
アーカイブとは、メールなどの重要データを長期間保存しておくための場所のこと。ビジネスでのやり取りの多くがメールで行われている今、「言った・言わない」の論争に決着をつけたり、機密データが流出したときに“証拠”を押さえたりするには、送受信されるすべてのメールの控えをとっておかなければならない。
ZenlokアーカイブはBBSS独自のクラウド上に置かれていて、G SuiteまたはOffice 365で送受信されるメールデータを両サービスから“一方通行”で受け取って格納する仕組み。メールの送受信者が保存処理に介入することは原理的にできないので、違法行為を阻止する予防的コンプライアンス策としての効果も高い。
機能面での最大の特徴は、メールデータを1件ずつ公開鍵暗号基盤(PKI)で暗号化したうえで保存していることだ。秋葉哲也・サービス事業本部Zenlok事業統括部統括部長は、「仮に当社のクラウドがサイバー攻撃を受けても、お客様のメールの内容が外部に流出することは絶対にない」と胸を張る。
年額2400円という低コストで利用できることも、Zenlokアーカイブのセールスポイントだ。PKI用の認証局(CA)をオンプレミス(社内)で運用するには、そのためのハードウェア/ソフトウェアと専門知識をもつITエンジニアが必要となる。一方、ZenlokアーカイブはCA込みのクラウドサービスとして提供されるので、企業にとって導入時のハードルは低く、ITエンジニアが少なくても使いこなせるのだ。
また、メールの通数および容量がいくら多くても追加費用は発生しない。Zenlokアーカイブには通数や容量の制限がなく、7年分までは基本費用に含まれている。また、退職者のアーカイブも追加費用無しで保管が可能。「追加コストが発生するのは8年以上保管する場合だけ。しかし、8年以上の保管が必要になるケースはほとんどない」(秋葉統括部長)。
アーカイブが本領を発揮するのは、何か事件・事故があって過去に送受信されたメールを調べる必要が生じた時だ。Zenlokアーカイブでの調査は、専用の検索画面で条件を指定して調査対象となるメールを絞り込み、ダウンロードしてからメールクライアント(一般的なOutlookなど利用可能)で詳しく調べるというやり方。ダウンロードファイルの形式としては、EML形式とMSG形式が選べる。
このほか、Zenlokアーカイブの機能拡張版として、「Zenlokプレミアム」(添付ファイルの暗号化、大容量ファイル転送、誤送信対策を追加)、「Zenlok Archive with PlayBackMail」(誤送信対策を追加)、「Zenlok Archive with SPC Mailエスティー」(誤送信対策を追加)もBBSSから提供されている。
企業の多様なメール基盤に対応し
性能と品質も継続的に高めている
18年3月の時点で、Zenlokの導入ユーザーは約300社、15万人(メールID単位)。BBSSはベンダーとしてZenlokを開発・保守し、ソフトバンク コマース&サービスからZenlokを仕入れたディーラー約30社が企業に販売するというビジネスモデルだ。
コンプライアンスやコーポレートガバナンスに対する企業ニーズは、今後さらに高まる――。そうした読みにもとづき、BBSSは20年までに2000社・100万メールIDを達成しようと考えている。
そのための方策の一つとして、18年2月にはG Suite/Office 365 以外のグループウェアやメールとの連携にも対応。オンプレミスサーバーやプライベートクラウドのメールもアーカイブできるようになり、「パフォーマンスも品質もぐんぐん高まっている」(原山社長)ことから、大企業での採用も増えている。
さらに、BBSSは「監視カメラなど、アプリを組み込めないレベルのIoT機器の保護」(原山社長)や「ビジネスチャットでやり取りされるメッセージのアーカイブ」(秋葉統括部長)についても研究開発中。メールに限らず、ビジネスに関わるすべてのデータをアーカイブできる基盤の提供を目指している。
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