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OBCは次世代を見据え、クラウドいよいよ始動 OBC次世代「奉行クラウド」がついに登場

2018/03/22 09:00

週刊BCN 2018年03月19日vol.1719掲載

chapter 2 世界トップレベルのセキュリティを誇るシステム
マイクロソフトとの強固な連携が奉行クラウドの強み

AzureのPaaSを
100%フル活用


 OBCがクラウド戦略を進めるにあたって、最重要パートナーとして位置づけているのが、日本マイクロソフトだ。奉行クラウドは、クラウドプラットフォームとして「Microsoft Azure」を採用している。もともと同社はマイクロソフトの技術をベースに製品開発してきたが、クラウドでもその方針は変わらない。和田社長は、「奉行クラウドの基盤は100%マイクロソフトテクノロジー。彼らの膨大な開発投資の成果を将来にわたってシェアできることは大きなメリットであり、奉行クラウドのお客様に対して、サービスの水準、信頼性、安全性を継続的に担保できることにもつながる」と強調する。
 

 AzureのPaaSを採用したのは、OBCのクラウド戦略の第2ステージでリリースした業務サービスが端緒だ。OBCはその後、業務サービスと奉行シリーズを、クラウド上に構築した統合プラットフォームで融合させ、両者を統合ソリューションとして提供するのはもちろん、個別の機能をプラットフォーム経由で外部サービスとAPIを使って連携させることもできるようにするというロードマップを発表。この統合プラットフォームを「OBC業務クラウドプラットフォーム」と名づけている。OBC業務クラウドプラットフォームは、「OBCの製品ポートフォリオがすべて単一のデータモデルで使える業務プラットフォームをAzureのPaaS上に構築したもので、将来的に数10万社のお客様をクラウドに移管しても、万全のセキュリティで業務を支えることができる」(和田社長)といい、奉行クラウドも、当然、これをベースとして設計・開発している。

セキュリティ、DBの
パフォーマンスを評価


 和田社長は、Azureを評価しているポイントについて、次のように解説する。「まず、世界最高水準のセキュリティ機能をもつクラウドプラットフォームであることが何よりも大きい。OBCのクラウド製品は、すべてのデータを日本国内のデータセンター(DC)で活用している(国内法を準拠)。東日本、西日本の国内2拠点で堅牢性を備えたDCからサービス提供されており、データセンターは、厳重な入退出管理や災害対策が施されている」。ユーザーのデータは、3重に冗長化して保管するとともに、東日本DCをメインのサービスインフラとし、地理的に離れた西日本DCをバックアップセンターとして活用することで、障害や災害の発生時にも、サービスを止めない構成環境をマイクロソフトが保証している。

 また、通信の安全性がしっかり担保されていることも、Azureの強みだという。和田社長は、「お客様環境からOBCのクラウドサービスへの通信やDC内の通信はすべてSSLで暗号化され、保護されている。また、通信経路上にはファイアウォールを設置し、外部からの許可されない通信をブロックしている。さらに、WAFを設置することで、ウェブアプリケーションに対する固有のサイバー攻撃を防御し、お客様の大切なデータを世界トップレベルの堅牢なセキュリティで守っている」と胸を張る。

 一方、奉行クラウドのパフォーマンスついては、AzureのPaaSに含まれるクラウド型データベース(DB)「Azure SQL Data
base」を採用したことがストロングポイントになっていると強調する。基幹業務ソフトのSaaS版については、オンプレミスと比べてパフォーマンスが落ちることも多いが、奉行クラウドは、オンプレミスをはるかに超えるレベルの操作性に仕上げることを重要視して開発を進めてきた。「Azure SQL Databaseは、インテリジェントで管理しやすいクラウド型のリレーショナルDBで、お客様の重要なデータをしっかり保管・管理し、高速に分析集計できる。Azureの膨大なクラウドパワーを利用することで、当社が個別にクラウドインフラを用意すると仮定した場合とは比べ物にならないほどのパフォーマンスや信頼性、高度なデータ保護を実現できる」と、和田社長は力を込める。

 さらに、OBCにとっては、PaaSを活用することによってクラウドサービスの運用管理コストの削減効果を見込めるほか、稼働状況の監視・分析ツールが充実している点も、Azureを高く評価する要因になっているという。また、OBCiD認証基盤による「Office 365」との親和性、API管理機能による外部サービスとの接続性といった、奉行クラウドの付加価値向上につながるポイントも、Azureの採用を後押しした。

chapter 3 すべての業務とつながる、ひろがる世界へ
パートナーにもたらす新たなビジネスチャンス

ウェブAPIを活用し
高付加価値提案


 OBCのクラウド戦略の歴史を紐解けばわかるように、同社はクラウドシフトをパートナーのビジネスモデルに配慮しながら慎重に進めてきた。少なくとも奉行シリーズについては、フロービジネスのかたちを守ってきた。しかし、奉行クラウドのリリースによって、奉行シリーズもストックビジネス化の流れが加速するのは間違いなさそうだ。それでも和田社長は、「奉行クラウドもこれまで同様、すべてパートナー経由で売っていく方針に変わりはない」と言い切る。

 フロービジネスからストックビジネスに移行する場合、短期的な売上減は避けられないケースが多い。奉行クラウドの販売パートナーは、どうビジネスをマネジメントしていけばいいのだろうか。和田社長は、パートナーにとっての奉行クラウドの価値を、次のように説明する。

 「ウェブAPIを公開し、オープンにつながる、ひろがる世界を実現することで、パートナーのビジネスチャンスは拡大する。独自のソリューション開発を手がけているSI系のパートナーはもちろん、販売系のパートナーであっても、奉行クラウドとAPI連携できる商材を扱っていれば付加価値の高い提案ができる。OBCとしても、そうした環境づくりをどんどん進め、パートナーを積極的に支援していく。また、クラウドプラットフォームにAzureを採用したことで、セキュリティやデータベースの信頼性、パフォーマンスは非常に高いレベルになった。これも、パートナーがお客様に安心・安全なセキュリティ構造のうえで奉行クラウドを提案する際の差異化要因になる」。

5年から7年後、
すべてはクラウドに


 パートナーエコシステムのあり方そのものは、若干変化していく可能性もある。「SIer、事務機販社、会計事務所などが現在の奉行シリーズのビジネスパートナーだが、今後は金融機関、コンサル会社、情報通信会社、社会保険労務士、HRのアウトソーシング事業者など、さまざまな領域へパートナービジネスが拡大していくと考えている」(和田社長)という。既存のパートナーにとっては、奉行クラウドのエコシステムに入ってきた新しい領域のパートナーと手を組み、新たなソリューション開発・提案に取り組むチャンスになるかもしれない。

 和田社長は、「5年から7年後には、基幹業務ソフトもすべてクラウド化する時代になる」と市場の動きを予測しており、奉行クラウドのビジネスチャンスは、短期間で爆発的に増大するとみている。まずは、向こう1年間で積極的に新規ユーザーの獲得を狙う計画で、競合他社のパートナーも含め、新たなパートナー開拓を積極的に進める。

 「それぞれが自社のコアコンピタンスに選択と集中して、お互いに役割分担と協力して、さ
らに素晴らしいサービスを提供できるよう努め、奉行クラウドを通じて、顧客満足度を高め、全力を尽くしてパートナーのビジネス拡大を支援していく」と、和田社長は締めくくった。

奉行クラウド、何がすごいの?
プロダクトとしての特徴を探る

 奉行クラウドは製品として、どんな特徴があるのだろうか。SaaSとして提供する以上、ネットワーク環境さえ整っていれば時間と場所を問わず基幹業務ソフトを利用できるようになるのは当然だが、もちろんメリットはそれだけではない。OBCが三つのポイントとして挙げるのが、「つながる、ひろがる」「業務の自動化」「強固で安全なセキュリティ」だ。
 

 「つながる、ひろがる」については、ウェブAPIを公開することで、外部データとの連動や多様なサードパーティ・アプリケーションとの連携が可能になるほか、会計士・税理士などのユーザー企業を支援する専門家とのコラボレーション/コミュニケーションやアウトソーシングも容易になる(勘定奉行クラウドと給与奉行クラウドには、外部専門家向けライセンスが1ユーザー分、標準で付属する)。昨今のFinTechの流れのなかで、基幹業務ソフトと金融システムをつないで新しいサービスを提供するという動きも出てきているが、ウェブAPIを公開して外部サービスとの接続性を高めていくことは、そうしたニーズを見据えた施策でもある。より幅広く、多くのデータを活用していくための基盤ともなり、AzureのAIやデータプラットフォーム、各種分析機能も活用することで、ユーザーはデジタル変革を強力に進めていくことが可能になりそうだ。

 「業務の自動化」では、登録した領収書を都度学習し、次回から支払先などの情報をもとに勘定科目などを推測して仕訳の自動起票、金融機関の入出金明細を自動で取り込み、仕訳を自動起票するなど、文字通り、各種業務処理の自動化を進めている。また、「強固で安全なセキュリティ」は、前述したとおり、Azure採用の恩恵を十分に生かして実現している。

 このほかにも、ダッシュボード機能やアラートを充実させ、業務担当者のスムーズな仕事をサポートできるようにした。UI、操作性についても、これまでの奉行シリーズのノウハウを惜しみなく注ぎ込み、「自信をもって市場に出せる製品になった」(和田社長)という。さらに奉行シリーズでは累計66の特許を取得。クラウド分野においては51の特許申請を行い、16の特許を取得している。

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外部リンク

オービックビジネスコンサルタント=https://www.obc.co.jp