Special Issue
Oracle Open World 2017 次世代の自律型DBでクラウド市場を変える
2017/11/16 09:00
米オラクルは、10月1日から5日までの5日間、米サンフランシスコで年次プライベートイベント「Oracle OpenWorld(OOW) 2017」を開催した。例年同様、多くの新製品・サービスを披露したが、今回はとくに、AIやブロックチェーンといった新しい技術領域への注力姿勢が鮮明になった感がある。同社のビジネスの屋台骨を支えるデータベース(DB)・ソフトウェア製品でも、機械学習を活用した次世代製品のクラウドサービス「Oracle Autonomous Database Cloud」を発表するなど、Oracle Cloudの強みを磨き、総合クラウドサービスベンダーとしてのプレゼンス向上を図る。
価格と性能をAWSと対比
両方とも優位性がある
OOW2017は、参加登録が約6万人という巨大イベントで、ユーザーやパートナーによる2300以上のセッション、最新のオラクル製品に関する情報を紹介する500を超えるセッション、さらにはオラクルやパートナーベンダーによる製品・技術展示なども開催された。OOWの期間中、サンフランシスコはオラクル・カラーの赤に染まる
ラリー・エリソン 会長兼CTO
Oracle Database 18cはクラウドサービスのリリースが先行し、Oracle Autonomous Database Cloudが最初の提供形態になる予定だ。機械学習により、DBのチューニングを継続的に自動化するほか、アップグレードやパッチの適用も、稼働しながら自動で実行するという。また、コンピューティングやストレージのリソースも、自動でスケーリングする。さらに、稼働率は99.995%をSLAで保証し、ダウンタイムは年間30分未満になるという。
さらにエリソン会長は、セキュリティの観点からもOracle Autonomous Database Cloudのメリットに言及。「可能な限り機械による自動化を進めていけば、人為的なミスやエラー、悪意のある行動が介在する余地を減らすことにつながる。だから、Oracle Autonomous Database Cloudは最も安全にデータを保全できるDBクラウドといえる」とアピールした。
エリソン会長は、基調講演のなかでOracle Autonomous Database Cloudのデモ
を自ら行い、その性能とコスト効率の高さをみせつけた。金融業界、保険業界、小売業界の実際のデータ分析ワークロードを、Oracle Autonomous Database Cloud、Amazon Web Services(AWS)のIaaS上で稼働させるOracle Database、そしてAWSのデータウェアハウス(DWH)である「Amazon Redshift」でそれぞれ実行してみせた。例えば、金融業界のデータ分析で処理が完了するまでの時間とかかった利用料金(秒単位の従量課金に換算したもの)は、Oracle Autonomous Database Cloudが34秒、0.04ドルだったのに対し、Oracle Database on AWSは255秒、0.23ドルという結果になった。また、別の金融業界のデータ分析ワークロードの処理をOracle Autonomous Database CloudとAmazon Redshiftで比べた場合、Oracle Autonomous Database Cloudが23秒、利用料金0.03ドルで完了したのに対し、Amazon Redshiftは247秒、0.27ドルかかった。
Oracle Autonomous Database CloudのAmazon Redshiftに対する優位性とともに、Oracle DatabaseはOracle Cloud上でこそパフォーマンスを最大化できることをあらためて強調したかたちだ。「AWS上で動かすどんなワークロードでも、Oracle Autonomous Database Cloudに移行した場合、利用料を半額以下にすることを契約書に書き込む。デモの結果からもわかってもらえるように、Amazon RedshiftはOracle Autonomous Database Cloudと比べて9~15倍のコストがかかる。だから、この約束は余裕をもって実行できる」と、エリソン会長はコメントした。
なお、Oracle Autonomous Database Cloudは、DWHバージョンを年内に先行リリースするほか、OLTPバージョンを来年リリースする予定だ。
AI、ブロックチェーンなど
新興技術への注力姿勢が鮮明に
エリソン会長は3日目午後の2回目の基調講演で、クラウド型の統合監視サービスである「Oracle Management Cloud」の機能拡張について説明し、ここでも機械学習を活用した自動化により、「システム運用の負荷を低減するとともにセキュリティの高度化を実現した」と宣言した。OOW2017ではこのほか、PaaS領域で、コンテナ・ネイティブな開発環境や、ハイパーレジャー・ファブリックをベースとした“エンタープライズグレード”のブロックチェーン・プラットフォーム、AIを活用したアプリケーション開発環境の提供を開始するといった発表もあった。関連して、ERP、HCM、SCMなど、オラクルのSaaS商材に新たにAI機能を組み込むことも明らかになった(CRMやECを含む「Oracle CX Cloud」では一部実装済み)。さらに、IaaSでも、AIの活用拡大などを見据え、ベアメタルGPUインスタンスのパフォーマンスやコスト競争力などを強化して他社との差異化を図っているといった発表があった。
全体的に、新しい技術トレンドに対応してあらゆるレイヤでOracle Cloudの進化を図ったという印象が強く、クラウド市場のメインプレイヤーとしての地位を早期に確立したいというオラクルの強い意志が感じられたOOW2017だったといえよう。
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