Special Issue
日本マイクロソフト 26兆円市場の開拓はパートナーが主役
2017/10/05 09:00
週刊BCN 2017年10月02日vol.1696掲載
日本マイクロソフトは、デジタルトランスフォーメーションによって開拓が可能となる26兆円市場に向けて、パートナーが主役となってビジネスを推進できるよう大きく組織体制を変更した。「各部署に散らばっていた法人向けパートナー支援機能を新設されたパートナー事業本部へ統合。われわれの本気度を示している」と語る山本多絵子・業務執行役員 パートナーマーケティング統括本部長に、同社の目指すビジネスとパートナー施策を語ってもらった。
26兆円市場の開拓に向けて
大きく組織を変更
山本多絵子
業務執行役員
パートナーマーケティング統括本部長
「日本マイクロソフトは、この26兆円市場のチャンスに、パートナーの方々を真ん中に据えて、ビジネスを推進していく。今年7月に世界中で体制を変更した理由の一つはここにある」と山本業務執行役員は力を込める。
大きな変革の一つがパートナー事業だ。日本マイクロソフトは、これまで八つの組織に分かれていたパートナー担当営業、技術者、マーケテイングのメンバーをすべて一つの組織に統合。新設のパートナー事業本部で法人向けパートナー支援機能をすべて賄えるようになった。
パートナー事業本部のメンバーは、三つのファンクションに再配置している。
まず、「Build-With」チームは、パートナーのサービスとマイクロソフトのテクノロジーを統合し、より付加価値の高いソリューションを作り出す役割を担う。
「GTM(Go-to-Market)」チームは、作りだしたパートナーソリューションを世の中に広く告知し、案件を作っていくことを役割とする。
「Sell-With」チームは、市場のニーズを深く理解し、パートナーソリューションを販売していく役割を担う。そして、この3つのファンクションのそれぞれのフェーズで「テクノロジーアーキテクト」のメンバーが、最新テクノロジーや製品をユーザーに採用してもらえるようパートナーを支援する。
具体的な施策の一つとして、『パートナーサクセス』プログラムを2018年1月から本格的にスタートする。「この作って・広めて・売るを徹底的に推進・展開していくため、プログラムでは、最新の製品・サービスや、AI、IoTなどの最新テクノロジー、職種ごとに必要なトレーニング・コンテンツをExclusiveに提供する。また、一緒に案件を生成し、クローズに至るよう、注力領域およびソリューションごとの開発技術支援をはじめ、共同セミナーや、デジタルマーケティングを実施して、パートナーの方々のビジネスの最大化に貢献していく」という。10月からパイロットも実施しながら必要なメニューを整備していく予定だ。
急成長を遂げるCSP
ビジネスの主役はパートナー
一方で、パートナーがクラウド市場にソリューションを展開していくための足枷となっていたのが、マイクロソフトの複雑なソフトウェアのライセンス体系だ。「クラウドの時代に必要な新しいライセンス体系として、マイクロソフトは3年前にCSP(Cloud Solution Provider)プログラムを発表し、全世界で対前年比400%と、急速に売り上げを伸ばしている。日本でも1400社を超えるパートナーが参加。売上ベースで1000%と10倍の成長を遂げている。CSPは今やマイクロソフトの主軸ライセンスプログラムとしてグローバルで戦略的に投資をしていく」と山本業務執行役員は実績と今後の意気込みを語る。CSPの一番のメリットは、パートナーがマイクロソフトのソフトウェア製品を自社のソリューションやサービスに組み込んで自社ブランドとして自由に販売できる点だ。いわゆるクラウド時代のソフトウェア製品のOEMである。また月額従量課金体系で、必要な分だけを使用し使った分の対価を支払うというシンプルな課金モデルも可能となった。そして、ライセンスモデルごとに複数のシステムが存在し、諸条件が複雑になっていたものが、一つのシンプルなプラットフォームに統合される。「契約書、価格表、見積もり、発注、請求から支払いまで、一つのシステム上でサポートされるため、パートナーもシンプルに効率的なオペレーションが可能になる」と山本業務執行役員はメリットを語る。
CSPプログラムを通じてマイクロソフトが目指すのは、パートナーがユーザーのデジタルトランスフォーメーションを実現していくため、マイクロソフトが「プラットフォーム」となることだという。パートナーに対してクラウド製品と仕組みや情報をパートナーセンターという場を通じて提供していく。「パートナーの方々が主役となって、ユーザーの前面に立っていただく。マイクロソフトはその後ろで、縁の下の力持ちとして支援していく。従来の『ライセンスプログラム』とは、理念からしてまったく 違うものだ」と山本業務執行役員は強調する。
デジタルトランスフォーメーション時代に成功するパートナーの4要素
デジタルトランスフォーメーション時代に成功するパートナーの4要素として、山本業務執行役員は次を挙げる。1.他社にない差異化した強みをもっていること。
2.デジタルを駆使して、セールスとマーケティングのパワーを最大化していること。
3.ITテクノロジーを使って、オぺーレーションを自動化し、最適化していること。
4.顧客生涯価値(Lifetime Value)の最大化。一顧客に、どれだけ大きな価値を提供できるか、顧客から得られる利益をどれだけ最大化し、顧客獲得維持にかかるコストを最小化できるか。
これらの要素を生かし、CSPパートナーとして成功を収めた事例も数多く出ている。
日本ワムネットは、超大容量高速転送サービスを広くビジネス展開するため、インテックの技術支援を要請。インテックは転送スピードと安定性、スケーラビリティを評価して、Azureをサービス基盤に採用し、CSPを選択することで負荷の増減や、コスト超過となるリスクの回避も可能とした。
中小企業の総務部向けにIT部門のマネージドサービス「CSドクター」を提供するコムネットシステムは、CSドクターにOffice 365を組み込み、ワンストップソリューションの提供を実現した。従来、Excelで行っていたソフトウェアのライセンス管理を、ダイワボウ情報システムが提供するIkazuchiを使い、管理・運用の効率化を図っている。
レノボ・ジャパンは、自社製品にWindows 10 E3/E5を融合させ、セキュアなクライアント環境を月額モデルで提供した。さらに、2020年のWindows 7サポート終了を見据え、セキュリティなどの機能アップデートを継続的に提供するWindows as a Service(WaaS)の展開をマイクロソフトと共同でスタートする。働き方改革やセキュリティソリューションとしての展開も予定している。
CSPにおける2018年度の
三つの集中投資エリア
日本マイクロソフトでは、「より多くのサービスを」「より多くのパートナー様に」「より使いやすく」することをCSPにおける今年度の集中投資エリアとしている。具体的には、まずCSPで利用できるクラウドサービスやプランを拡大。Azure Stack、Windows E3/E5、Microsoft 365 Businessや仮想デスクトップ向けにVDAを利用できるようになる。EAやOpenライセンスと比べ、CSPで利用できるサービスや機能に差があったが、その差が無くなり、CSP独自の価値の提供が可能になる。
次に、CSPを利用するパートナーの利便性向上では、従来の月額課金だけでなく年額一括課金も選択できるようにする。ユーザーの予算に合わせて柔軟に提案内容を調整することが可能になる。
CSP管理ツール「パートナーセンター」も進化する。リセラー向け機能の拡張や発注管理機能に加え、最新のオファリング、プログラム情報を確認できる統合ポータルとしても拡充する。CSPに関わる機能をパートナーセンターに集約することで、パートナーは必要な情報を一元管理できるようになる。
「クラウド製品はすべてCSPで提供できるようになった。Windows 10 E3/E5はCSP用ライセンスが提供され、引き合いの多かったAzure Stackも加わり、DynamicsはCSPでの提供がベストな形態になった。インセンティブの獲得要件も緩和した。デジタルトランスフォーメーションの推進を担うプラットフォームとしてパートナーに活用いただけるよう、今後もCSPの改善を続けていく」と山本業務執行役員は強調する。
さらに、パートナー販売支援の施策であるインセンティブも大きく強化している。
川瀬 透
パートナーマーケティング統括本部
ソリューションマーケティング本部
本部長
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