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サイバー大学 DXがもたらすチャンス ビジネスをどう変えるのか

2017/09/21 09:00

週刊BCN 2017年09月18日vol.1694掲載

 基調講演では、サイバー大学IT総合学部の勝眞一郎教授が登壇し、「デジタルトランスフォーメーションの現在と未来――デジタルは、わたしたちのビジネスをどう変えるのか――」をテーマに、デジタル技術がビジネスにどのようなインパクトを与えるのかを解説した。

デジタルトランスフォーメーションとは
その本質をみつめなおす

 ユーザー企業を取り巻く環境は、ITシステムが「アナログ」から「デジタル」に移行しつつある。さらに、「クラウド」「ビッグデータ」「アナリティクス」「モバイル」「ソーシャル」「セキュリティ」など、第3のプラットフォームを活用することで、新しいビジネスモデルや新たな体験を生み出す「デジタル革命」を促す提案が求められている。また、「IoT」や「人工知能(AI)」なども時代の趨勢となっている。

 SIerやディストリビュータがユーザー企業にソリューションを提供するうえで、その役割が大きく変化してきているといえる。このような状況のなか、どのような商材、サービスがビジネスチャンスになるのか。
 

勝 眞一郎
IT総合学部教授

 勝教授はまず、キーとなる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」について詳述した。トランスフォーメーションという言葉は、20年近く前からITのビジネス業界では使われていたという。それが自動車業界、製造業でデジタルを活用したものづくりを行うようになり、DXといわれるようになった。

 では、そもそもトランスフォーメーションとは何か。勝教授は「変化、チェンジと定義する方もいるが、まったく異なるもの。サナギが蝶に変わるように、見た目はまったく変わるが、同じ生命体だ。ではDXとは何か。このトランスフォーメーションにデジタルやインターネット情報が加わったものだ」と説明した。

 知的生産の行動に即して考えると、オフィスのなかで知的成果物を生み出す際、まず現象を認識できるもっとも基礎的なことをデータ化し、そのデータを意味のある情報(インフォメーション)にしていく。さらに情報を体系化し知識(ナレッジ)へ、知識を妥当性・信頼性高く使用できる知恵へと昇華させていく。この一連の工程にデジタルを導入すると、現象をデータに引き上げるところにIoTが入り、蓄積したデータをAIを使って分析することで知識、知恵になっていく。勝教授は、この工程すべてが、「最終的にロボットに置き換わるだろう。われわれはここを加速させること、新しい現象を生み出すことに携わることになる」と説明した。

 そのうえで、「DXがもたらすチャンスとリスクを踏まえ、どうビジネスとして対応していくかが、私たちがやらなければならないことだ。また、ITベンダーは顧客に、最終的にどんな価値を提供するのかというソリューションの本質を追求していくべき」と強調した。

すでにDXは身近で起こっている
今後はあらゆる業種で拡大

 DXは未来の話ではない。身近な具体例として勝教授は連絡手段の変化を挙げた。ビジネスの現場の連絡手段として、これまではメールが一般的だった。メールは、受信側がメールを開き、情報を引き出す、いわゆるプル型だが、最近はメッセージングサービスやプロジェクト管理ツールなど、受信側が操作を行わずに情報を確認できるプッシュ型に移行しつつある、という。メールは、件名、冒頭の挨拶などの様式を重視するが、メッセージングサービスやプロジェクト管理ツールは様式よりもメッセージを重視する。そういう点では、まったく違うようにみえるが、相手と連絡を取る、という本質は変わっていない。

 マーケットリサーチ手段も、調査会社の利用から、より容易に使えるSNSに変わっているが、マーケットを知ろうとする本質に変わりはない。つまりこれがDXだという。

 今後、ITの世界ではセンサなどの性能が向上することで、時刻、位置情報、画像認識の正確性が高まっていく。勝教授は「例えば位置情報では、これまで1mの誤差が生じたものが、1cmの誤差へと精度が高まっていく」と説明した。より正確なデータを収集できるようになることで、より高度なサービスが誕生する。勝教授は「例えば、ロボットそうじ機のルンバは、家庭内の地図情報をつくることで効率よくそうじを実行しているが、その地図情報を売る構想がもち上がっている」と事例を紹介した。

 こうしたサービス事例は今後、産業分野を問わずどんどん誕生していくだろう。勝教授は「農業では、農作業の自働化が進み、生産計画も最適化される。製造業でも生産の最適化だけでなく、アフターマーケットでもDX化が進む。サービス業はユーザーの囲い込みを目指して、さらに個別ニーズへの対応が進む。また、ネットの普及で都市部と山村部という二極分化が進むだろう」とした。

 勝教授は最後に「DXが加速するなか、働き方改革に向け、企業はアウトプットの定義や成果など、考え方を変えていかなければならない。また、DXで同じ業態でもマーケットが大きく変わるが、そこにいる人は替えられない。そこで人を変える教育(人材育成)が重要になる」とし、講演を締めくくった。
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外部リンク

サイバー大学=http://www.cyber-u.ac.jp/