Special Issue
デル、EMCジャパン パートナーとともに成長へ 新生Dell EMC、ポートフォリオが完成 日本市場で本格始動
2017/04/06 09:00
週刊BCN 2017年04月03日vol.1672掲載
(左から)
ソフトウェア・デファインド・ストレージ事業 担当ディレクター 林 孝浩
プライマリーストレージ 事業本部 本部長 渡辺 浩志
執行役員 アイシロン事業本部 本部長 倉橋 秀則
執行役員 パートナー事業本部 本部長 渡部 洋史
常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部 統括本部長 山田 千代子
執行役員 副社長 インフラストラクチャ・ソリューションズ 事業統括松本 光吉
執行役員 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部 製品本部 本部長 上原 宏
コンバージドプラットフォーム&ソリューションズ事業本部 本部長 浮田 竜路
データ保護ソリューション事業本部本部長 今井 浩
「ワン・カンパニー」としてスタート
統合会社として、昨年9月に米国で誕生したデルテクノロジーズ。世界180か国に拠点があり、全従業員数が約14万人、連結売上高約740億ドル規模の、最大手ITベンダーとしてスタートを切った。米国以外はビジネスの継続性を重視し、現地法人の統合を順次行うという方針から、日本では現段階で2社体制でビジネスを手がけているという状況だが、「両社のITシステムやファシリティ、営業評価や報奨制度を含めた売り上げ・利益管理、報告・レポーティングラインなど、機能を統合した」と松本光吉・執行役員副社長インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括は説明する。最も重要な営業面についても、「窓口を一本化している。これによって、実質的に“ワン・カンパニー”として、お客様やパートナー様をさらに支援できるようになった」と松本副社長は強調する。ワンストップでITインフラを提供
デルテクノロジーズの「Dell」ブランドの製品には、クライアントPC、ワークステーション、シンクライアント、IoTゲートウェイなどの製品がある。「Dell EMC」ブランドの製品には、サーバー、ネットワーク、ストレージ、データ保護製品、SDS(ソフトウェア・デファインド・ストレージ)の他に、いま話題となっているコンバージドインフラも含まれる。松本副社長は、「ワンストップでITインフラのすべてをお届けすることができる」とアピールする。統合効果を発揮したハイパーコンバージドインフラ(HCI)
ワンストップでITインフラストラクチャを提供するポートフォリオが完成し、パートナーにとってはDell EMCとパートナーシップを組めば、さまざまなユーザーニーズに対応できる。なかでも、統合効果を発揮している製品がハイパーコンバージドインフラ(HCI)だ。HCI製品の「Dell EMC VxRail」「Dell EMC VxRack」のプラットフォームに、世界x86サーバシェアNo.1(*)のDell EMC PowerEdgeサーバーを採用し、Nutanix製ソフトを搭載したDell EMC XCを含めて、HCIについて業界随一の品揃えを提供している。また、世界シェアNo.1(*2)のデータ保護製品「Dell EMC Data Domain」とPowerEdgeサーバーを連携させたバックアップソリューションや、高性能なSDS製品の「Dell EMC ScaleIO」にPowerEdgeサーバーを組み合わせた事前検証済みの製品もリリースし、統合による製品競争力の強化につなげている。
さらに、「今後、グループ内の中長期的な製品シナジーが期待できるのはフラッシュの領域だ」と松本副社長は強調する。オールフラッシュストレージの領域では、「Dell EMC XtremIO」などの製品で同社は世界No.1のシェア(*3)をもち、また、スケールアウトNASの「Dell EMC Isilon」でもオールフラッシュ化を進めるなど、業界をリードしている。現在、サーバー内蔵用途にもフラッシュの採用が急速に進んでおり、今後、ストレージとサーバーの両方の用途で、新技術の早期投入や標準化でDell EMCが益々、業界をリードする可能性が高くなることが予測される。
(*)出典: IDC Worldwide Quarterly x86 Server Tracker 2016Q4 「世界出荷台数」
(*2) 出典: IDC Worldwide Quarterly Purpose Built Backup Appliance Tracker 2016Q4「2016年世界出荷金額」
(*3) 出典: IDC Worldwide Quarterly Enterprise Storage Systems Tracker 2016Q4「2016 年世界All Flash Array 出荷金額」
3年間で127億ドルの研究開発投資
Dell EMC製品の今後の成長を占ううえで、見逃せないのが他社を圧倒する研究開発投資だ。具体的には、デルテクノロジーズ全体として、過去3年間で研究開発投資額は127億ドル(日本円で1兆4200億円超)にのぼる。直近では45億ドル(日本円で5000億円超)だ。松本副社長は、「これによって他社が追従できない技術を開発でき、サーバーやネットワークだけでなく、HCIやオールフラッシュで時代の最先端を走っていく」と断言する。市場カバレージ x プロダクトポートフォリオの「2×2戦略」でシェア倍増へ
デルテクノロジーズは、「国内IT市場シェア倍増計画-2×2戦略」を掲げて成長を図っている。これは、「パートナーシップ」を切り口に 五つの取り組みによって実現する。一つめは、デルとEMCジャパンが「ワン・カンパニー」として機能統合による一貫したオペレーションの推進。二つめは、デジタル変革を実現するコンサルティングアプローチやハイタッチ営業の大幅強化によって、ユーザーに信頼されるテクノロジーパートナーになること。三つめが、地域ごとのパートナーシップ強化やサービス/サポートの拡充による付加価値の提供で、SIerやリセラーとのパートナーシップを深めて全国のカバレッジを強化する。
四つめは、日本初×日本発を実現するコ・イノベーション。IoTや組み込みソリューションなどを通じて、産業別の取り組みを推進する企業とのパートナーシップにより新規ビジネスを生み出していく。そして、五つめは通信事業者やクラウド事業者などとの戦略的パートナーシップだ。松本副社長は、「新たなパートナーシップに注力し、パートナーとともにシェア倍増を目指す」としている。
パートナービジネスは2倍の成長率
デルテクノロジーズが掲げた「国内IT市場シェア倍増計画-2×2戦略」は、すべての取り組みに対してパートナーシップに重きを置いていることからも、パートナーを第一に考慮した戦略であるということがわかる。かつては、デルは直販をメインビジネスに据えていたベンダーだったが、パートナーとともに成長することが重要と判断。デルはパートナーとの協業強化を模索しながら、2015年8月、パートナービジネスのトップに松本副社長が兼務したほか、パートナー事業本部の各部門にパートナー事業に精通した人材が配置されて、直販中心のビジネスモデルを大きく転換した。業界を知る精鋭が揃い、パートナーと協業するビジネスモデルに大きくシフトしたわけだ。このような歴史のなかから、パートナーの価値を最大限に引き出す戦略を導きだし、注力してきたのだ。実際、「四半期ベースでパートナービジネスが昨年同期と比べて2倍の成長率を成し遂げている」と松本副社長は自信をみせる。パートナービジネスの伸長も貢献し、2016年第4四半期の国内x86サーバー市場でも前年同期比74%増(*4)と急成長。この結果、昨年度、デルテクノロジーズが展開する180か国のなかで、日本法人が最高業績を達成し、“Rising Star Performance Award”という社内の名誉ある賞を日本法人が受賞した。デルテクノロジーズとして本格始動し、2017年2月にパートナー制度が統合されたことからも、この勢いは今後も拡大しそうだ。
(*4) 出典: IDC Worldwide Quarterly x86 Server Tracker 2016Q4「国内出荷金額」米国ドルベース
成長分野で独走する
松本副社長がパートナー事業本部長からインフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括になり、「われわれの製品・サービスを組み合わせた新しいソリューションを、パートナーとともに創造していく」(松本副社長)体制が整った。デルとEMCジャパンの社内のITシステムや制度、組織やパートナー制度、そして製品ポートフォリオなどを昨年9月から新年度にあたる2月までの約5か月にわたって整えてきた。統合が完了した今、デルテクノロジーズとDell EMCブランドが本格的に始動したといえる。「成長分野で独走する」と松本副社長。今後の事業拡大に期待がかかる。
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