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ソフトバンク コマース&サービスの次なる1手 ~ICT基盤を支える注力ソリューション~

2017/03/09 08:00

週刊BCN 2017年03月06日vol.1668掲載

仮想化インフラは新しい時代に突入 ソフトバンクC&Sの技術集団によるHCI実況報告

 2016年はサーバーインフラの新たな選択肢として、3ティアの仮想化インフラではなく「ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)」を選ぶユーザーが増えてきた。17年は、さらに多くのユーザーが、HCIを選択するようになると考えられる。「Cisco Systems」や「Dell EMC」、「Hewlett Packard Enterprise(HPE)」、「Nutanix」製品をはじめとした、HCIの有力ソリューションを幅広く取り扱うソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンクC&S)は、パートナーへの技術支援などを通じて、HCIビジネスの普及に向けた取り組みを積極的に推進している。今回は、ソフトバンクC&Sの技術者が「Nutanix」と「Dell EMC VxRail(VxRail)」を中心にHCIの魅力と本音を語る。

●エキスパートが語る、いま最も熱い技術

 「仮想化技術のよい所と、分散方式でデータを管理する新しい仕組み、この両方をうまく取り込んでいるのがNutanixだ」と説明するのは、MD本部技術統括部第1技術部1課の小川正一氏だ。「コントロールVM(CVM)が外出しの仮想アプライアンスとして提供されるため、ハードウェアやハイパーバイザーからの依存がなくなる。さらに、ストレージベースのスナップショット機能やレプリケーションを行えたり、高速にデータを複製できる機能を有していたりと、仮想化環境で求められるストレージ機能が詰まっているのもNutanixの魅力だ」と続ける。

 一方、MD本部技術統括部第1技術部1課の長濱歳也氏は、「VxRailも分散アーキテクチャという言葉だけではNutanixと変わらないが、vSANという仕組みが大きな特徴。I/O処理がハイパーバイザーに最も近いカーネルレベルで密接に動作するので、無駄がなくシンプルだ。また、従来のストレージの運用で手間のかかっていたRaid/LUNといった仕組みを排除し、特別なソフトウェアをインストールする必要がないので、今までvSphere環境を使いなれた人には違和感なく扱えることがいい。ストレージのことを意識することなく運用できるのがVxRailだ」と語る。
 

●ユーザーからの引き合いが急増 パートナーの提案活動も活発に

 MD本部技術統括部第1技術部1課の熊谷哲人氏は、「ユーザーのIT部門では近年、セキュリティやコンプライアンスなどの課題が増えているが、IT人材は不足していて、インフラの面倒をみている余裕がなくなってきている。このような背景から扱いやすいHCIが好まれているのではないだろうか」と説明する。
 

(左から)MD本部 技術統括部 第3技術部1課 萩原隆博氏
MD本部 技術統括部 第1技術部1課 小川正一氏
MD本部ハードウェア統括部 サーバー・ストレージマーケティング室ストレージ推進課 上竹宏幸氏
MD本部 技術統括部 第1技術部1課 長濱歳也氏
MD本部 技術統括部 第1技術部1課 熊谷哲人氏
ICT営業本部プラットフォーム販売推進統括部 仮想化クラウド販売推進部市場開発課 大塚正之氏

 HCI自体の考え方やそれを実現するためのソリューションも以前から世に出ているが、16年から急激に引き合いが増えてきたという。ICT営業本部プラットフォーム販売推進統括部仮想化クラウド販売推進部市場開発課の大塚正之氏は、「ソフトウェア ディファインドストレージ(SDS)の技術は以前から確立されていたが、性能面の不安を払拭するフラッシュストレージの容量単価が、16年頃から下がったことで、現実的に使えるものとなってきた」と、ストレージ技術を例に挙げて背景を説明する。

 これらテクノロジーとユーザーの背景が合致したことにより引き合いが増えているというのが現在の状況だ。なお、HCIに対するユーザーの姿勢は地域性があり、ユーザーもパートナーも、IT人材は東京に集中しがちなことから、人材不足が顕著な地域でこそHCIのニーズが高いようだ。

 西日本地区でHCIプリセールスを担当する、MD本部技術統括部第3技術部1課の萩原隆博氏は、「西日本ではNutanixをはじめとしたHCIの引き合いが強くなっている」と前置きしたうえで、「パートナー様もHCIの提案活動を強めている。実は、これまでの仮想化基盤においては『どこから買っても同じ』といった意識がユーザーにあり、価格競争に陥りがちだった。そこへ『Nutanixにしかできないこと』『VxRailにしかできないこと』といった差異化ポイントを用意して提案されるパートナー様が成果を上げている」という。

 また、差異化のポイントとしてはHCI上で稼働させる各種アプリケーションなどもあげられる。例えばHCIを基盤としたVDI環境といったようなかたちで付加価値をつけていくのだ。

 「HCIにはさまざまなアプリケーションをのせることができる。HCIを利用すれば安定した基盤の導入が迅速に行えるようになるため、パートナー様はHCI基盤とともに得意分野のアプリケーションを付け加えた提案が可能となり、より差異化が図りやすくなっている」と熊谷氏は状況を説明する。

●パートナーの提案・導入を支援 「仮想化健康診断」の提供も

 NutanixとVxRailは同じくHCIとして分類されるものの、製品にはそれぞれ異なる特徴があり、提案や営業活動にも影響するという。Nutanixは運用管理を簡単にできるようにする方向性が強く、VxRailは仮想化のデファクトスタンダードとなっているVMwareベースのため、ユーザーが受容しやすいという具合だ。また、VxRailはソリューションを構成する各ソフトウェアコンポーネントも実績が豊富で、Dell EMC、VMwareという信頼感のあるブランドがあり、パートナー、ユーザーともに安心ができる。

 とはいえ、導入・運用における全体的なメリットとしては似通った部分が多い。これまでのサーバー仮想化やストレージに関するスキルが提案や構築に役立つという点だ。ソフトバンクC&Sでは、NutanixやVxRailをはじめとしたHCIについて、今まで培ってきた技術力をベースとして、パートナー向けに、営業力や技術力を高めるための支援も行っている。

 「例えば提案に関しては、HCIに欠かせないネットワーク機器やバックアップソリューションなどのアドバイスが可能だ。また当社では、仮想環境におけるリソース状況などを可視化する『仮想化健康診断』サービスも提供しており、HCIの提案においても導入時や増強時に活用していただくことができる」と大塚氏はアピールする。

●HCIでNo.1を目指すさまざまな販売支援を提供

 ソフトバンクC&Sでは、パートナーがHCIビジネスを拡大できるよう、スキルアップの機会を積極的に提供している。セミナーやハンズオンなどのイベントを全国各地で実施しているほか、バウチャーチケットを提供しパートナーに有償トレーニングを受講してもらうことでスキル取得・資格取得の機会を提供。また、提案時には客先への同行説明などの人的な営業支援を行うほか、検証用の貸出機も用意している。

 萩原氏は、「例えばNutanixに対しては『説明がいいことづくめで、かえって何かあるのではないか』と疑問を抱く方もいるが、Nutanixは細かい部分までアーキテクチャをオープンにしている。われわれが一通り説明し、理解が進むうちにファンになったエンジニアも多い。HCIは関係者全員にメリットがある基盤。われわれは仮想化案件の見積もり依頼があれば、HCIでも見積もりを提出させていただき販売機会の創出をしている」という。

 HCIはユーザーにとって、構築時や拡張時だけでなく、日々の運用の負担も軽減されるなど魅力あるインフラだ。パートナーにとっては、独自の付加価値をつけた提案が容易で、また頻繁な増強依頼も期待できることから、ユーザーと長いつき合いを可能にする商材といえる。

 ソフトバンクC&Sは、HCIにおいてNo.1を目指すとしている。MD本部ハードウェア統括部サーバー・ストレージマーケティング室ストレージ推進課の上竹宏幸氏は、「HPEがSimpliVityの買収を発表するなど、HCIビジネスは今後ますます盛り上がる。そのなかでNo.1を実現するには、パートナー様と一緒にこのマーケットを盛り上げていくことが必要。HCIは、ユーザーの運用管理の負担を削減するだけでなく、パートナー様にも『差異化・付加価値』と新たな提案機会を提供する。ぜひ一緒にHCIビジネスを取り組んでいただき盛り上げていただきたい」との考えを示している。
 

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外部リンク

ソフトバンク コマース&サービス=http://cas.softbank.jp/