Special Issue
ニフティ、IoT分野で高まる存在感、IoT活用のソリューション事業を加速
2016/10/11 19:54
1年あまりで100件超の引き合い
ニフティは、2015年5月から独自の「IoTプラットフォーム」サービスを開発・提供しているが、「プラットフォームだけではIoTを活用したビジネスは立ち上がらない」と、上野貴也・執行役員/CIO(兼)クラウド事業部長は打ち明ける。そこで、「IoTの『I』をカタチに」をコンセプトに、企業のIoT活用を包括的に支援する「ニフティIoTデザインセンター」を2015年7月に開始した。企業の新規事業創出、業務効率化、カスタマリレーションの改善といった各種課題解決に、IoTというアプローチで挑むパートナーとして、ビジネス、テクノロジー両面の「デザイン=設計」からインテグレーションまでをトータルで支援している。「IoTの実現には、通信やクラウド、データ活用なども含めたトータルデザイン、さらにデザイン後の実行フェーズまで含めると、多くのナレッジ、機能が必要になる。いわば『IoT活用のエージェント』が必要だ」と上野執行役員は分析する。「ニフティ IoTデザインセンター」では、スタートから約1年で100件を超える引き合いがあり、うち10件程度がすでに具体的な取り組みを開始している。IoT活用に頭を悩ませている企業が多いことがわかる。具体的な取り組み例としては、温浴施設内の混雑状況の可視化だ。混雑回避やスタッフ配置の最適化を支援するために、今年の4月より実証実験を開始した。その有用性が確認できたため、9月からは、温浴施設内の混雑状況をリアルタイムに表示するサービスのトライアルを開始している。これは、温浴施設側の業務効率化の課題解決と、利用者の満足度向上に応えるための実証実験だ。
また、オムロンのIoT製品「環境センサー」の事例も興味深い。各市場領域でのセンシング技術を新たに生まれるサービス市場に展開するために、「プロダクト提供モデル」のパートナーにニフティを選択した。マーケティング段階での企画面から、専用アプリの開発まで、プロダクトデバイスの付加価値創造について支援している。
IoTは「事業部門」が主役に
ニフティでは、IoTの適用分野を、大きく「インダストリー」と「コンシューマー」の二つに分けて捉えている。前者はファクトリー・オートメーション分野など、すでに幅広く実用化されているのに対し、後者は「これから開拓していく分野で、成功事例がまだ少ない」(上野執行役員)という。先の温浴施設内の例など、一般利用者(コンシューマー)がIoTによって直接的なメリットを享受するシーンが今後は増えてくる。このコンシューマー分野において、ニフティ IoTデザインセンターのような機能が求められている」と上野執行役員は語る。ニフティ IoTデザインセンターへの引き合いをみると、「ITを担当する情報システム部門ではなく、事業部門が多くのシェアを占めている、この点がクラウドと大きく異なる」(上野執行役員)という。パブリッククラウドサービスのニフティクラウドは、純粋にITリソースを必要とする情報システム部門や、業務アプリケーションのプラットフォームを必要とするSIerなどが主な顧客層だったが、IoTに関しては、「売り上げや利益を伸ばしたい企業の事業部門からの引き合いが中心」(上野執行役員)。ここにIoTの難しさがあるという。
「運用効率化やコストダウンなど『サービス』としてわかりやすいメリットのあったクラウドとは異なり、IoTは『概念』である。事業部門がIoTの可能性を感じ取り、どこかに相談したいと考えたとき、クラウドのようにプロダクト化されていないIoTは、そもそもどこに相談したらよいかわからない」(上野執行役員)。このような状況下において、ニフティ IoTデザインセンターの機能が大きな役割を果たすという。
IoTの価値は“データ”
ニフティ IoTデザインセンターでは、ビジネスプランナーやアジャイル開発者など専門の異なる複数のスタッフでチームを組んで、企業のプロジェクトに対応する。上野執行役員は、「課題の深堀りからシステム設計(プロダクト創出が目的であればビジネス設計を含む)、プロトタイプ制作、評価に加え、これらすべてに横たわるデータ活用の機能まで、IoT活用の設計からアウトプットまでトータルで支援している」と話す。どんなプロジェクトでもポイントとなるのは、データ活用の機能だ。上野執行役員は、「ニフティはIoTの価値を『IoTにより独自に収集されるデータから生み出されるアクション/アウトプット』だと定義している。いわば『データの価値化』といえる。そのために必要なクラウドの機能としてIoTプラットフォームがあり、今秋にはデバイスからのデータ収集機能、機械学習やデータ可視化などのコンポーネントを追加していく」と説明する。また、上野執行役員は「仮説にもとづき、データドリブンで継続的にアクションを起こし続ける手段として、IoTは非常に有用だ。なぜならIoTは常に最新のデータを手元に届けてくれる」と語る。
上野執行役員はさらに、「このフローのように仮説にもとづいたデータ取得から分析、アクションまでの『IoTデータのフィードバックループ』をデザインし継続実行できるかどうかが、各々の市場競争に影響してくるはずで、そこをお手伝いできるのがニフティ IoTデザインセンターの強み」とアピールする。
従来のITが「TCO(ITの総保有コスト)」で測られるのに対して、IoTは「課題解決や新規ビジネス創出に対する投資と考えている企業が大半」(上野執行役員)という。この点が、IoT活用ビジネスの伸びしろが大きいといわれる根拠である。IoT市場の今後について上野執行役員は、「これからは、インダストリーだけではなくコンシューマー領域でのIoT成功事例が多く出てくる。IoTを通じてデータを上手く活用し、データドリブンで継続的にアクションを回転し続ける企業が成功条件になる。IoTが広く生活者に普及するためのブレイクスルーは事例だと考えている。弊社でもお客様の協力のもと積極的に支援事例を公開し、市場形成の一助となれるよう推進していきたい」と話す。今後、どのようなIoTビジネスの事例が出てくるのか非常に楽しみである。
【用語解説】
IoT活用とは
IoTとは(1)情報の発生源となるデバイスと(2)クラウド側で処理するビッグデータ分析を組み合わせ、これまでみえていなかった事象をつまびらかにして(3)新しいサービスの創出につなげる手法だ。IoTやそのプラットフォーム単体での価値ではなく、IoTで集まるデータを活用して、新しいサービスやビジネスを立ち上げ、売り上げや利益を伸ばすのがIoTの真価である。- 1
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