Special Issue
アマゾン ウェブ サービス ジャパン AWSのパートナーが全国に拡大中 地方発の新ビジネスでクラウド採用が活発化
2016/09/15 19:55
週刊BCN 2016年09月12日vol.1644掲載
急成長を続けるAWS
2006年3月に米国でスタートして以来、クラウド市場を牽引している「アマゾン ウェブ サービス (AWS)」。2016年第2四半期の決算では、前年同期比で58.2%増という急成長を続け、今年のグローバルの売り上げが1兆円を大幅に超える見通しであることを発表した。パートナー
アライアンス本部
本部長
AWSの登場によって、システムリプレース時などの“オンプレミスからクラウドへ”、新規システム構築における“クラウドファースト”といった流れができたが、その多くは先進ユーザーの多い首都圏であった。「クラウドは場所を選ばないのがメリット。ただ、エンジニアの数、ユーザーの先進性などの違いで、地域への波及が都心よりも若干遅れていた」と今野本部長。しかしながらここにきて、首都圏以外でもクラウドの利用が増えているという。
ユーザー企業にとっても、運用負荷の軽減や短期間の環境構築など、クラウドを活用することで得られるメリットは多い。その証として、今野本部長は、「AWSを採用したユーザー企業は、そのメリットを実感すると他のシステムもAWS上で構築する傾向が強い。すでにこのようなリピートのサイクルが何回もまわっているお客様も多い」と実感している。
各地で導入が進むIoT
“デジタルトランスフォーメーション”というキーワードが、このところ注目されている。勘定系システムや業務システムといった伝統的なIT活用とは別に、新規ビジネスや新たなビジネスモデルなどで活用されるITを指す。例えばIoTによって創出される新たなビジネスモデルも、その一つとされる。そして、IoTで欠かせないのがクラウドの活用だ。「IoTに関しては、固有のニーズが地方に多数ある。例えば北海道では、センサを活用した融雪情報コントロールや乳牛の管理などにAWSが使われている」(今野本部長)。また、GPSを活用した農耕機の自動運行、ハウス栽培の温度管理などでも、AWSを利用したIoTの活用が進んでいる。もちろん、IoT活用の本丸とされる全国各地の工場でも、AWSの利用が広がっている。
IoTを始めるにあたって、難しいのはIT環境のサイジングとその効果の予想である。どれだけのデータ量になるのか、どれだけの処理が発生するのかといったことは、始めてみないとわからない。また、IoTを導入しても、期待したほどの効果が得られないかもしれない。試行錯誤を繰り返すことで、ようやく成果が得られるということもある。
このような不安定要素が多い環境では、IT資源の調達が容易で拡張も簡単なクラウドが最適である。万が一期待した効果が得られなくて仕切り直しが必要となっても、AWSであれば利用を止めればよい。AWSでは「AWS IoT」をはじめ、「AWS Lambda」「Amazon Kinesis」「Amazon Machine Learning」など、IoTの導入で必要となる高いレベルの使い易いサービスを用意している。センサなどの環境を用意して、AWSのサービスを組み合わせることで、すばやくIoTを始めることができ、導入コストも小さいというわけだ。
AWSはIoT以外の分野においても、ユーザーニーズを先取りするかたちで新たなサービスを次々と投入している(図1)。「AWSが投入するサービスは、常に顧客に向いている。新サービスや新機能の9割以上は、顧客から要望を聞いて内容を決めているからだ。今年は8月までに524の新機能をリリースした。昨年は722で過去最大だったが、今年もそれと同等かそれを上回るペース」と今野本部長はいう。その有効性は、実際にユーザーでもあるアマゾン・ドット・コムで証明済みだ。
心強いエコシステムとコミュニティの存在
お客様がクラウドへの流れは確実だと理解してはいても、いざ取り組むとなると、新しいノウハウが必要となるため、不安に思うこともあるはず。そこで活用したいのが、AWSのパートナーエコシステムである。多種多様のパートナーがAWSを基軸に各種ビジネスをしており、AWSのサービスに更なる価値をお客様に提供している。さらに各地で有志が立ち上げたコミュニティ「Japan AWS User Group(JAWS-UG)」が活性化している。北は北海道から南は沖縄まで50を超える支部があり、勉強会や研究会など、リアルな情報交換の場として活動している。活用スケジュールなどの詳細は、JAWS-UGのウェブサイト(https://jaws-ug.jp/)で確認することができる。クラウドに対するユーザー企業の認識の変化が日本全国に波及しつつあり、JAWS-UGの各支部も年々盛り上がってきている。
お客様のニーズに答える第一歩「APNに参加する」
このような広がるお客様のニーズに答えていくため、AWSは、「AWS Partner Network(APN)」というパートナープログラムを提供している。これは前述したパートナーエコシステムを拡大、サポートするためのプログラムである。大きくAPNコンサルティングパートナー(SIパートナー)とAPNテクノロジーパートナー(ISVパートナー)の二つに分かれていて、8月時点で前者が155社、後者が219社となっている。APNにはパートナーのレベルに応じた階層が用意されている。例えばAPNコンサルティングパートナーは「プレミア」「アドバンスド」「スタンダード」の3階層で構成され、階層に応じた特典やトレーニング、ファンド支援等のプログラムが用意されている(図2、図3)。ただし、階層ごとに求められる要件が設定されていて、それをクリアしなければ認定されない。
「AWSのパートナーになるのは簡単ではない。要件を厳しくしているのは、それがお客様のためであり、最終的にはパートナーのためになると考えているからだ。ぜひとも越えていただきたい」(今野本部長)。2016年時点でAPNコンサルティングパートナーの最上位層であるプレミアには、世界46社のうち、日本企業が5社含まれており、国内のクラウドビジネスをリードする存在となっている。
APNパートナーになるためには相応の時間がかかる。ビジネスプランの提出や複数の導入事例などが必要とされるからだ。そこでAWSは、ビジネスプラン策定のサポートやビジネス拡大に関するノウハウの紹介なども行っている。また、APNパートナーとなる準備段階として「レジスタード」というパートナーレベルを用意(図3)。レジスタードは、ウェブ登録だけで参加できる(https://www.apn-portal.com/AWS_Partner_ApplicationJapan)。「レジスタードでも技術情報やトレーニング受講特典などが得られる。AWSビジネスを始める取り掛かりとして、ぜひご活用いただきたい」(今野本部長)。
APNが都市から全国に拡大
APNパートナーは、大都市圏のSIerやISVが中心だったが、クラウドの普及とともに日本全国に拡がりつつある。とはいえ、「まだまだ不足している」と今野本部長は捉える。「AWSの成長とともにAPNパートナーが増えてきたが、足りない状態が続いている。とくに地域でのパートナーが不足している。IoTなどによって、地域でのIT活用が新たな展開を迎えようとしていて、地方創生も追い風となっている。発想した新しいビジネスをすぐに具現化できる。そのプラットフォームを提供するのがAWSの役割だ。クラウドは、まだまだ広がっていく」。加えて、既存システムの更新に伴い、ハードウェアを新たに調達せず、クラウドへ移行する案件も広がっているという。APNパートナーとして、すでに多くのSIerやISVが参加しているため、今からでは遅いと感じるかもしれない。もちろん、そのようなことはない。クラウドを応用した新たな分野にコンピュータシステムが使われはじめている。また、イノベーションを引き起こし、市場を牽引するAWSのパートナーになるメリットも大きい。
「顧客ニーズに合わせた多種多様なサービスを揃えるAWSのサービスやAPIは、クラウドサービスにおいてデファクトスタンダードになりつつある。単なるサーバーの置き換えではなく、これからの真のクラウドの使い方を会得することができる」と今野本部長は説明する。
ユーザー企業のグローバル展開においても、AWSを活用すれば対応しやすい。多くのパートナーにとって課題となりがちな海外でのハードウェア調達が不要になるからだ。小規模なSIerでも、大規模な案件を担うことが可能になる。「日本のAPNパートナーでも、海外で必要に応じて支援を受けることができる。AWSをきっかけにグローバル対応を始めるパートナーも多い」という。
AWSは、APNパートナーの事例やAWS対応ソフトウェアをそれぞれ冊子にまとめて無償で提供していて、AWSのウェブサイト上でも同様の情報が公開されている(https://aws.amazon.com/jp/solutions/partner-central)。APNパートナーのビジネス拡大に向けた支援策の一つだが、これからの参加を検討しているSIerやISVの参考になる。「AWSでビジネスを成功させたパートナーはたくさんある。ビジネスの拡大に必要なノウハウも蓄積していて、いつでも提供できる。その支援の輪を全国各地に広げていきたい」と、今野本部長。地域でのクラウド活用が本格化することを見据え、今後、日本各地でパートナー説明会を実施するなど、APNパートナーの拡大に取り組んでいく考えだ。
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