Special Issue
セゾン情報システムズ なぜ、「HULFT」と「DataSpider」が AWSで注目されているのか 「AWS re:Invent 2015」で「Think Big」賞を受賞
2016/06/02 19:55
週刊BCN 2016年05月30日vol.1630掲載
クラウド時代もHULFT
小野和俊
常務取締役
CTO
テクノベーションセンター長
兼 アプレッソ 代表取締役社長
HULFTの販売開始は1993年。メインフレームによる集中処理から、分散型システムへとダウンサイジングが進む時期にリリースされた。さまざまなプラットフォームが登場するなかで、データ連携を実現するツールとして支持され、実績を残してきている。
そのHULFTが今、Amazon Web Services(AWS)などのパブリッククラウドを取り扱うクラウドインテグレータの間で注目されているという。クラウド化の進展が、企業システムのさらなる分散化を推し進めているというのが理由だ。
データを確実に転送する
クラウド活用が進んでいるとはいえ、多くの企業はオンプレミスのIT資産を抱えている。すべてをクラウドに切り替えるのではなく、部分的にクラウド化するという対応が多いためだ。業務によっては社外にデータを置くことを嫌うことから、何らかのシステムが社内に残るというケースは今後も続くと考えられる。そうしたなかで問題なのが、システムの連携である。パブリッククラウドとオンプレミス環境が共存するハイブリッドな環境では、すべてのシステムが社内ネットワーク上で稼働していたときのツールが機能しないケースがあるからだ。パブリッククラウド上のシステム間でも同様である。
「パブリッククラウドを採用した企業では、システムの連携で苦しむケースがみられる。社外のネットワークを経由することによって、社内で使っていた仕組みが機能しないのが原因だ。また、インターネットではセキュリティや転送スピードも課題となる」と、小野CTOはハイブリッドクラウド環境での問題点を指摘する。
そこで、HULFTである。ハイブリッドクラウド環境では、データ連携を確実に実施するためのソリューションが必要とされているというわけだ。「HULFTは、データを確実に転送することに加え、強固なセキュリティ対策が施されていることや、回線の安定化にも貢献する」と、小野CTOは語る。
なかでもポイントは、“データを確実に転送する”ところにある。データを送りっぱなしにしない、受手の受信確認で終わることもない。そのデータがしかるべきシステムに渡されて、しっかり活用されるところまでを管理の対象にできる。「こうしたワークフローが伴うファイル転送の仕組みは、独自で開発することが多かったが、実績と信頼性の高さからHULFTが選択されるようになってきた。パブリッククラウドの活用は、社内ネットワーク内でのデータ連携とは違う問題が必ずでてくる。HULFTの歴史は長いが、クラウド時代においても、その有効性は増すばかりである」と、小野CTOはニーズを感じている。ニーズと期待の高さから、米アマゾンウェブサービスの年次イベント「AWS re:Invent 2015」では、セゾン情報システムズが「Think Big」賞を受賞。同賞に選ばれたのは、世界でたった9社であった。
HULFTとDataSpider
HULFTとともにクラウドで活用されているのが、アプレッソのデータ連携ツールのDataSpiderである。「HULFTとDataSpiderの関係は、API同士がつながっているイメージ。それほど密に連携しているので、複数システムのデータ連携を容易に実現する」と小野CTOは説明する。例えば、AWS上で複数のシステムが稼働している場合、ファイル転送をHULFTが担い、各システムにデータを渡す役割をDataSpiderが担うというかたちで利用されている。とくに基幹システムがAWS上で稼働するケースが増えたため、周辺システムとの連携でDataSpiderのニーズが高まっているという。セゾン情報システムズは4月1日、IoT時代にマッチした新しいコンセプトのHULFTとして「HULFT IoT」を発表した。セキュリティ対策や送達保証といったHULFTの品質で、IoTデバイスとシステムをつなぐソリューションである。IoTでは、取得するデータ量を把握しにくいなどの理由から、スケールしやすいパブリッククラウドを採用することが多い。ただ、クラウドを活用するには、前述したようなデータ連携における課題があるため、IoT分野においてもHULFTが必要とされているのである。なお、DataSpiderはHULFT IoTとも密に連携していて、IoTデバイスから得たデータによるシステム連携などで活用できるようになっている。
分散型システムの普及時に登場したHULFTが、クラウド時代、そしてIoT時代を迎えても、その勢いは増すばかりだ。今後もHULFTは、“データを確実に転送する”というシステムの根幹にかかわるニーズに対して、信頼性で応えていく。
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