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日本事務器 ASEAN進出で海外ビジネスを本格展開 国内外でICTトータルソリューションを提供

2016/04/21 19:55

週刊BCN 2016年04月18日vol.1625掲載

 日本事務器がASEANに進出して海外ビジネスの本格展開に踏み出した。2016年4月1日、シンガポール駐在員事務所を開設。まずは、既存のユーザー企業によるASEAN進出をICTの側面から支援していく。将来的には、現地企業をユーザー企業として獲得する方針だ。国内がビジネスの中心だった日本事務器が、海外でのビジネス拡大を視野に入れるようになったのは、これまでの方向性を大きく転換したことを意味する。「お客様のビジネス拡大に寄与する」と話す田中啓一社長が目指しているのは、「グローバルICTトータルソリューションプロバイダ」だ。

「ドメスティック」な考えを捨てる

田中啓一
社長
 日本事務器は、2013年に海外進出に向けての市場調査を開始し、昨年4月に「海外準備室」を設置、本格的な検討を重ね、今年4月にシンガポール駐在員事務所を開設することになった。国内に加えて海外でもビジネスを手がけることにした背景について田中社長は、「設立から90年以上に渡りドメスティック事業に取り組んできた。一方で、お客様は海外を視野に入れて成長しようとしている。ICTトータルソリューションプロバイダを標榜している以上、海外でもお客様をサポートできる体制を整えなければならないと判断した」としている。実はこれまで日本事務器に対して、ユーザー企業が海外で拠点開設に向けたシステムやネットワークの構築など、ICTに関する相談をしてくるケースがほとんどなかったという。「これは、当社が海外に拠点がないということが一番の原因」と田中社長は振り返る。しかし、シンガポールに拠点を開設することを伝えると、多くのユーザー企業からASEANでのICT構築に関する問い合わせがきたという。シンガポールを第一の拠点に選んだのは既存のユーザー企業によるASEAN進出が顕著にあらわれているからだ。シンガポール拠点の責任者として抜擢された桝谷哲司・シンガポール駐在員事務所首席は、「お客様がASEANへの進出を視野に入れていたため、当社では3年ほど前からASEANでのビジネスを検討してきた。シンガポールで拠点を開設し、お客様の要望に応えることができる」としている。

日系企業の成長に寄与する

桝谷哲司
シンガポール駐在員事務所
 日本事務器が海外ビジネスを手がけるうえで重きを置いているのは、「ICTの側面から日系企業の成長に寄与する」(田中社長)ということだ。桝谷首席は、「まずは、海外進出をコーディネートするような立場でお客様を支援していく」という。具体的には、ユーザー企業からASEAN進出のための問い合わせを受けた段階で、日本側とのシステム連携を見据えた現地でのICTシステムを提案。日本側のシステムでも対応が必要な場合は、ユーザー企業に説明して案件へとつなげる。「当社も、日本のオフィスと連携を取りながら、お客様に対して最適な環境を提供していく」と桝谷首席は説明する。

 次のステップは、現地で日系企業を対象に新規ユーザーを獲得することだ。これまで培ったノウハウをベースに基幹業務や後方業務システムなども提供していく。加えて、業種別ソリューションの提案など、日本事務器が日本で得意としているビジネスをASEANでも展開する。日本側とのシステム連携に向けて、ユーザー企業の日本本社に対してもアプローチをかけていく考えだ。

 田中社長は、「既存のお客様を支援するのが第一段階、現地で新規のお客様を獲得するのが第二段階。これを3年以内に必ず成し遂げる」と断言する。そして第三段階では、「現地企業をお客様として開拓し現地でソリューションを提供していく。お客様が日本に進出する際の支援にも取り組んでいきたい」との考えを示している。

日本もグローバルマーケットの一つ

 日本事務器がシンガポールをベースにカバーする国は、タイをはじめとして、インドやインドネシア、フィリピン、ベトナムなどだ。ベース拠点のあるシンガポールでもユーザー企業の開拓を行っていく。「もちろん、マレーシアやミャンマー、オーストラリアも視野に入れている」と桝谷首席は意気込む。今後については、香港での拠点設置を模索しているほか、「シンガポールからサポートする国、拠点を設置してエンジニアや営業人員を配置する国など、柔軟に対応する。ローカルパートナーとも組む必要も出てくるだろう。この1年間で固めていく」(田中社長)という。

 ASEANビジネスを成功させ、「将来的には、さまざまな国や地域でビジネスを手がけていくというのが最終的な目標。また、『情報収集の拠点』として、シリコンバレーへの進出も計画中である」(田中社長)と構想は広がる。海外ビジネスが業績に寄与するようになれば、「グローバル化という点で日本をマーケットの一つとして捉える」と田中社長は事業方向性を示唆している。これは、日本のマーケットが成熟していると判断しているわけではない。「サービスが主流になりつつある時代に突入し、新興プレイヤーの参入が増えるなど、日本のマーケットが大きく変わる転換期を迎えている。まだまだ日本もマーケットが拡大する可能性を秘めている」と田中社長は分析している。海外ビジネスを伸ばし、さらに日本でのビジネスも拡大させる。これが日本事務器の戦略だ。
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