Special Issue
<BCN Conference 2015>インテル 「BCN Conference 2015」特別講演 新しい仕事術を提唱
2016/02/04 19:55
週刊BCN 2016年02月01日vol.1614掲載
ITは効率化のツールから経営戦略そのものになる
執行役員
セールス・チャネル事業本部本部長
次いで、IoTの観点からインテルの活動を解説した。インテルはCPUの会社というイメージが定着しているが、従来、PC、サーバー、ストレージ、ネットワークインフラの分野でビジネスを展開している。そのノウハウやテクノロジーをIoTの世界に広げている。監視カメラ、車載機器、キオスク端末、ロボティクス、さらに、デジタルサイネージ、ATM、POSレジ端末、プリンタなどの複合機にもインテルプロセッサが搭載されている。
現在、IoT機器は全世界に約150億台が存在し、東京五輪が開催される2020年までには、ネットワーク接続する機器は500億台、やり取りされるデータ量は、44ゼタバイトという天文学的な数字になると予測されている。そして、あらゆる機器・端末がネットワークにつながることで、ユーザー企業を取り巻く環境やワークスタイルが急速に変化している。井田執行役員は、「かつて、ITはビジネス効率化のための一つの道具だった。だが、ムーアの法則の提唱から50年の進化を経て、今や経営戦略に不可欠なものになりつつある。その一つがIoTソリューションに代表されるものだ」と述べた。
ITの進化で、膨大な情報へのアクセスやオペレーションを、いつでもどこでも行うことができるようになり、迅速でリアルタイムな意思決定が可能となった。また、クラウドやモバイルアプリの普及はタクシー配車サービスのUberやSNSのFacebook、リテイラーのAlibabaのように新しいビジネスモデルを創出し、少人数規模の会社が巨大な既存エコシステムを脅かすことも現実に起こっている。井田執行役員は、「この進化はエンタープライズと呼ばれる大企業に限ったことではなく、地方都市における中小企業にこそ大きく影響する」と指摘する。
革新的アイデアは「人」が生むワークスタイルの変革は必須
ある調査によると、ワークスタイルの変革が必要と感じる企業は8割以上だが、約5割の企業は実施していない。一方、実施している企業はイノベーションの創出、つまり革新的なアイデアやそれを創出できる人材の確保が変革の目的としている。「ITの進化を理解し、それとうまくつき合うことで、都市と地方の境がなくなって、革新的なアイデアが生まれ、差異化や競争力の強化につながる。結局は人ありきで、革新的なアイデアは『人々』から生まれる」と井田執行役員は強調する。そのうえで、「テクノロジーを利活用し、いかに優秀な人材を確保し、彼らのアウトプットを最大化する仕組みづくりができるかが重要。これは日本、とくに地方でのビジネスを考えた場合、一つの地方都市の技術力が世界で受け入れられる大きな可能性を秘めたチャンスだ。われわれは、そのテクノロジーの進化に対応して、うまくつき合っていく必要がある。これらのテクノロジーを利活用したアイデアが、これからのビジネス成功のカギ」とした。
そして、作家のスティーブン・ジョンソン氏の話を引用し、アイデアは“閃く”といった大げさな表現で語られるが、実際はネットワークが集まるというイメージに近い。さまざまなことが脳内で結びつき、アイデアの形をなす。その時の脳の活性化されている部分の細胞図は、まさにネットワークそのものという。井田執行役員は、「一見関係のない事象やアイデアが将来、大きな変革につながることは、変化の速度が速い現代では次々に起こる。これをビジネスチャンスとするなら、今まで以上にアイデアの共有を容易にするワークスタイルが必要だ」と訴えた。
世界では、20年までに46%の従業員がインターネット・ネイティブな世代になる。この世代をどう活用するか、高齢化の進む日本で、他国との競争力をどう確保するかが大きな課題になっている。また、すでに世界中で37%の従業員が複数拠点で勤務している。一方、日本は約5割の企業がモバイル端末を使用した社外勤務をしておらず、在宅勤務は約8割の企業が未導入。東日本大震災以降、BCPも含めて、働く場所の見直しが検討されたにもかかわらずだ。クラウドの普及で変わりつつある環境整備をどうするかが、今後の大きな課題といえる。
今や地の利が不利といった部分は減少し、どこにいても、アイデアや創造性によって大きなチャンスにつながる時代がきている。しかも、労働生産性で日本は主要7か国で最下位の7番目だ。「私たちを取り巻く環境が進化するなか、働き方も進化する必要がある」と井田執行役員は強調する。具体的には、“アイデアの共有を容易にするワークスタイル”、“場所や時間にとらわれないコラボレーション”など、ビジネスに求められているものが変化しているという。「従来は『会社に行くこと』で長時間労働が評価されていた。しかしこれからは、『ビジネス課題を、よりよい方法で解決していく』という概念に変革し、従業員の創造性を高めるコラボレーションを推進していくことが、成功のポイントだ。そういった概念にいち早く移行した企業が、すぐれた人材を雇用し、彼らの働きやすい環境を整えて、勝ち組としてビジネスの中心になる」としている。
はじめの一歩を踏み出すことが「バタフライ効果」につながる
そのために、「まずは、はじめの一歩を踏み出すこと。ほんのわずかな変更・改善から始めましょう」と井田執行役員は呼びかける。そのわずかな変更・改善を、正しい場所で、適切なタイミングで行うことが劇的な効果の違いとなる。つまり、バタフライ効果につながるというのだ。バタフライ効果の一例として、インテルが提供する最新テクノロジーを導入すると、ワークスタイルがどう変わるかを示した。
従来、会議開催準備に費やしていた無駄な時間(ケーブルの断線、ドングルを忘れた、データのコピーなど)を1回3分とし、それが企業内で1日5回あると1日15分のロスとなる。1か月では5時間、1年では労働時間(8時間)換算で1週間以上ものロスだ。それがワイヤレスディスプレイの「Pro WiDi」技術やワイヤレス・ドッキング機能を使用すると、すぐに大画面の外部モニターや外付けキーボード・マウス、外付けHDDや他周辺機器につなぐことができ、ロスがなくなる。また、PCの新形態「Compute stick」や「NUC」は省スペース化につながり、新しい活用を可能とする。
そして最後に取り上げたのが、「インテルUniteソフトウェア」だ。これはCore vProを搭載したPCの1台がホストとなり、他のPCのファイルをホスト側で表示できるようにする技術だ。「Pro WiDi」の発展版でもあり、最大20台のPCを接続できる。1台のホストPCを会議室に1台、ケーブル不要で、ワイヤレスでセキュアな環境が実現できる。井田執行役員は、「Coreプロセッサは第6世代を迎え、Windows 10とのコンビネーションでさらにパフォーマンスが向上した。これらの技術は小さな変化・改善と思われるかもしれないが、後に大きくビジネスに影響をあたえるかもしれない」と展望を述べた。
また、ユーザー事例として、マンションにおける管理運用業務の変革をビデオで紹介。以前、担当者は業務に使う大量の書類をもち歩くことが負担となっていた。それが電子化とタブレット端末の利用で不要となり、業務負担と紛失リスクが低減。社内システム連携や情報共有による業務効率化に加え、現場で写真を撮って詳しい状況報告に役立てるなど、顧客へのスピーディな提案により顧客満足度も向上した。
最後に井田執行役員は、「ITを利活用することで、ワークスタイルを変革し、競争力を強化することが、バタフライ効果となって、劇的な結果を生む。これが日本の活性化につながっていく。インテルは皆様とともに、この活性化に取り組んでいく」と力強く宣言した。
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