Special Issue
<BCN Conference 2015>SAPジャパン 世界の先進事例にみるIoT活用のかたち IoTとIoPで「顧客の真の欲求」を満たせるベンダーに
2016/02/04 19:55
週刊BCN 2016年02月01日vol.1614掲載
製造業革命ではない「インダストリー4.0」
インダストリークラウド事業統括本部
IoT/IR4ディレクター
実際、こうした影響はすでにあらわれ始めている。例えば、ダイムラー系列のカーシェアリングサービス「car2Go」のようなモノからサービスへというアプローチもあるし、その逆にアマゾンの「Amazon Kindle Fire」のようなサービスからモノへというアプローチも存在しているのだ。
そもそもデジタルとは、超高速性や複製しても劣化がないといったフィジカルな世界では考えられないような性質を有する。
村田ディレクターは、「IT部門の人間にとっては、あたりまえのことかもしれないが、フィジカルな世界の人たちにはまだ十分に知られていない本質だと思われる」という。また、「デジタルの5大特徴」として「無料」「無制限」「時差ゼロ」「分析・予測」「明細×組み合わせ」というキーワードに沿って説明した村田ディレクターは、「要は、従来のフィジカル世界にはありえなかった異質な“飛び道具”が手に入る時代になったということ。後は、それをいかにして武器として使いこなすかがすべての企業に問われているのだ」と強調した。
ERPとIoTの本質は同じ
村田ディレクターは、「ERPとIoTの本質は同じ」との持論を示し、その理由について「どちらも現実の世界をデジタル化しデジタル・ツインを作る “サイバーフィジカルシステム”(CPS)がその本質である」という。ただし、IoT自体は目的ではない。一般的なIoT事例では、単一業務のなかで大量データの収集・分析を実行するいわゆる垂直統合型が多く見受けられるが、デジタル化の真の価値は、R&Dから、販売・CRM、サプライチェーン、生産、そして保守サービスまでを水平連携して初めて得られるのであり、これを村田ディレクターは、「IoP(Internet of Processes)」と表現。「IoPを実践するためには、業務プロセス全体のデジタル化が重要になる。それが、デジタル・トランスフォーメーションであり、現在SAPが強力に推進しているテーマである」としている。
具体的には、最新のビジネススイートである「SAP S/4HANA」によってデジタル化された基幹業務を「コア」として、そのコアと連携する四つの要素、つまりアセット(設備資産/IoT)、顧客エンゲージメント、サプライヤ・エンゲージメント、社内外ワークフォース・エンゲージメントのすべてがデジタル化されることによって、デジタル・トランスフォーメーションが実現するのである。
次に村田ディレクターは、予測保守のデモを行うことで、来場者にIoPの実例を示してみせた。
最先端のIoT活用事例とは
「まだまだIoTはERPのように標準化が進んでおらず、用途に合わせて個別開発するのが通常だ。しかし、われわれはIoTアプリケーション構築、運用のための道具を揃えたPaaSとしてインメモリ・プラットフォームである『SAP HANA Cloud Platform』を提供している」と村田ディレクターはアピールし、世界における代表的なIoTへの活用事例を紹介した。事例の一つ、独シーメンスではSAP HANA Cloud Platformを採用し、何百万の機器と何千ものアプリケーションとを結びつけるプラットフォームである「Cloud for Industry」を提供している。ITのリーダー企業の一つであるSAPと、運用面の技術(OT)リーダーであるシーメンスが共同で提供するクラウド・プラットフォームは、製造業の顧客においてITとOTとを集約化する最適なIoT基盤となっている
また、独ケーザー・コンプレッサーは、工場向け圧縮空気生成機の製造販売業から圧縮空気そのものを販売するサービス業への転換を成し遂げた。この事例は、機器に設置されたセンサから100万/日を超える大量データの収集とSAP HANA Cloud Platformによるリアルタイムな分析基盤、およびバックエンドの基幹システムとの連携によって機器の稼働状況の正確な把握と予知保全などが可能となったことによって実現したものである。
これらの事例を踏まえて村田ディレクターは、「IoPによって『儲ける仕組み』を構築することが重要であり、そのために業務プロセス側のデジタル化も必要となる。今、すべての企業はデジタル・トランスフォーメーションへと目を向けねばならないのだ」と訴えてセッションの幕を閉じた。
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