Special Issue
<新興ストレージベンダー座談会>ストレージの新たな概念を生み出す 新興だからこその強みで市場活性化へ
2015/10/28 19:56
週刊BCN 2015年11月02日vol.1602掲載
出席者(写真左から)
ヴァイオリン・メモリ森山輝彦
システムエンジニア本部長
ティントリジャパン
東 一欣
SEマネージャー
ピュア・ストレージ・ジャパン
阿部恵史
マーケティング部長
(司会・進行 『週刊BCN』副編集長 佐相彰彦)
1~2年で「フラッシュファースト」に
高技術や低コストでディスクを上回る
──まず、国内ストレージ市場についてお聞きします。市場全体は微増のなか、フラッシュなど新しい技術を使うストレージはかなり伸びているといわれていますが、どう捉えていますか。 東(ティントリジャパン) 容量が少ないDAS中心の時代からSANやNASなどの共有ストレージが主流となり、今はフラッシュ、さらにSDS(Software-Defined Storage)など仮想化による新しいストレージの形態が登場しています。それだけに、ストレージ市場はかなり多様化しています。市場全体の伸びは微増ではあるものの、今の顧客が求めるスピードに対応するフラッシュ、高い柔軟性を実現する仮想化などを意識したストレージは、大幅に伸びていくと考えています。
阿部(ピュア・ストレージ・ジャパン) 市場全体として、金額の伸びはわずかですが出荷容量が大きく伸びています。今注目されているのが、容量の拡大で蓄積されたデータの活用です。ビッグデータを活用してビジネスの成長につなげていくなど、お客様の要求・要件が変わっていくなか、ストレージ市場の中身(機器)も変化しています。HDDなど従来型機器が担う領域が小さくなる一方、フラッシュなどが担う領域が拡大するなど、転換期に差しかかっています。すでに米国では、主要なストレージベンダーはキャッシュ以外のデータ保存領域でフラッシュを採用しており、ストレージシステム選定においてフラッシュファーストの流れが到来しています。日本もその流れに追随し、1~2年以内にフラッシュファーストがあたりまえの時代になると考えています。
森山輝彦
システムエンジニア本部長
東 すでに2.5インチフォームファクタでは、SSDが容量密度でHDDを上回っており、コストもまもなくSAS-HDDを上回るでしょう。3.5インチのSATA、NL-SASのHDDはまだ当分コスト的に優位ですが、遠くない将来にコスト差がなくなるにつれてストレージ階層化のTier0や1(オンライン)だけでなく、Tier3、4(ニアライン、オフライン)などにもフラッシュが使用されていくと思います。
各社それぞれの強みを生かし
市場をけん引していく
──フラッシュ優位の話が出ましたので、自社製品の強みを教えていただけますか。 阿部 当社の基本姿勢は、ディスクストレージが担ってきたDB、アプリケーション、BIなど、ミッションクリティカルな領域を対象とした製品展開です。ディスクストレージにはないパフォーマンスを、トレードオフにならずにプライマリストレージに要求されるデータ保護機能を確実に担保して高い信頼性を実現していることが強みです。しかも、購入しやすい価格で提供している。ハードウェアについては、できるだけ自社開発をしないで、市場で多く出回っているパーツを調達してコストを抑える一方、独自のストレージOSによって優位性を出しています。また、当社はForever Flashという独自のサポートプログラムを提供しています。これは、保守サービス契約を継続していれば、保守契約の範囲内で3年ごとに新しいコントローラが無償で提供され、従来型ストレージのようなシステムの買い替えやライセンスの再購入、データ移行などを必要としないシステムの無停止アップグレードが可能となるビジネスモデルです。これによって、ランニングコストを下げ、TCOを抑えることができるようにしています。
森山 当社は、2008~09年にいち早くフラッシュ製品を投入して市場をリードしてきました。当初は、とにかくハイスピードを求めるお客様を対象に展開してきましたが、その需要がほぼ行き渡ったこともあって、現在は「Violin V2」と呼ぶ「Violin 7000シリーズ」を投入してプライマリ市場の開拓を進めています。この製品は従来の5分の1程度の容量単価を実現し、データプロテクションを含め、機能性、使い勝手、フットプリントにもすぐれ、運用改善に貢献します。当社は設立当初から、フラッシュストレージを一から自社開発してきましたので、技術では他社の2~3年先を進んでいると自負しています。そこに新機能を加えることで、新しいアプライアンス型のフラッシュストレージが提供できるのです。これまでは、「速いが高価」というイメージでしたが、今は速くてコストでも納得できる製品としてアピールしています。
東 一欣
SEマネージャー
──ユーザー企業に対するアプローチについては、どのようにお考えですか。
森山 前述のように、創業時はTier0を対象にハイスピードを求めるハイエンド市場に特化した製品戦略を進めてきました。今は、4~5年前にハイブリッドな階層化ストレージを導入したお客様が、そろそろ更新期を迎えようとしています。その9割以上は、プライマリシステムでオールフラッシュは使用していないので、こうしたお客様をターゲットに、Tier1からTier2まで領域を広げて、スピードだけではなく運用面などの優位性も訴求して、顧客開拓を進めていきたいと考えています。
東 技術的な話ですが、従来のHDDを主体としたストレージは、データの最小単位として512バイトのセクター・サイズ、エンタープライズ向けには、それにチェックサム用の8バイトや16バイトを加えた520バイトや528バイトのセクター・サイズをもとに、RAIDやLUN、ファイルシステムが設計されていました。これに対して、フラッシュは読み書きを8Kや16Kバイトのページ単位で、書き換えや消去を512Kバイトから2Mバイトのブロック単位で行います。その違いがあるため、従来型ストレージアーキテクチャでは、フラッシュをうまく活用することができないこともあります。そこがSSDが万能ではないといわれる所以でもあり、その解決にはSSDありきで設計された専用機器が望ましく、われわれがSSDアーキテクチャをお客様に提供できるメリットは多いと考えています。
阿部 当社は、プライマリストレージの置き換えを創業からの目標としており、現在もプライマリにおいてストレージがネックになっている課題を解決することで、市場を拡大するとともに、市場のあり方自体も変えていくことを目指しています。「イノベーションのジレンマ」といわれるように、大手ストレージベンダーが一気にフラッシュにシフトすると既存のHDD事業などを破壊しかねません。そこで、フラッシュとHDDを使い分けてフラッシュストレージへの移行を時間をかけて緩やかに行いたい、いわばソフトランティングしたいと考えています。一方、私たちのような新興ベンダーはその縛りがないので、お客様にとってベストな製品を直ちに提供できます。その強みを最大限に生かしていきたいと思います。
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