国内でクラウドサービスの普及を図るために必要な取り組みとして、いかに商流を確保できるかということが挙げられる。その対策の一つが、多くの販売パートナーを確保しているディストリビュータとのパートナーシップだ。ニフティはネットワールドとの協業を果たした。ネットワールドは、今年10月初旬、自社ブランドのパブリッククラウドサービス「NETWORLD CLOUD」の提供を開始する計画を立てている。ネットワールドの販売パートナーがクラウドサービスを提供することができるほか、ニフティクラウド経由で提供拡大を図る仕組みも構築。ネットワールドでは、ディストリビュータだからこそ実現できるクラウドサービスのビジネスモデルを確立する方針だ。

プリペイド方式の提供で本格化

　ネットワールドとニフティがクラウドサービスで本格的にパートナーシップを組んだのは今年2月。ネットワールドがニフティクラウドをプリペイド方式「ニフティクラウドクレジット」として提供。黒川拓生・マーケティング本部副本部長は、「ユーザー企業がクラウドサービスを利用するうえで予算を確保しやすくなっただけでなく、販売パートナー様にとってもクラウドサービスを提供拡大できる体制が整った」と説明する。

　もともと両社のパートナーシップは、ニフティが仮想化環境で自社システムを構築する際に、ネットワールドからVMware製品を調達したことから始まる。その社内システムをニフティがユーザー企業向けにサービスを提供するためにニフティクラウドを立ち上げた頃は、ネットワールドがSaaS流通販売サイト「NwaaS Style（ナーススタイル）」を提供しており、ニフティクラウドをIaaSとして提供。黒川副本部長は、「当時はディストリビュータとして、どのようにクラウド関連のビジネスを手がけていくかを模索していた」と振り返る。このようなパートナーシップがあったからこそ、今回のプリペイド方式を提案。しかも、ネットワールドはクラウド関連のポータルサイトとして「NETWORLD CLOUD MART」を今年6月に立ち上げた。サイトでは、NwaaS Styleを「NETWORLD SaaS MART」に名称変更して提供しているほか、バーチャルアプライアンスなどをウェブ上で購入することが可能な「NETWORLD vAppliance MART」を展開している。

　これによって、クラウドサービスのディストリビューションの拡大を推進。そして、現段階ではニフティとのパートナーシップによってNETWORLD CLOUDを今年10月初旬に提供する準備を進めている。

まずは三つのサービスが決め手

　NETWORLD CLOUDは、ネットワールドがニフティとOEM契約を結ぶことによってニフティクラウドを自社ブランドで提供することを実現したもの。NETWORLD CLOUD MARTで提供しているNETWORLD vAppliance MARTや、新たなサービスとしてネットワールドでも導入し、それを元に開発したオリジナルDR、さらにNETWORLD SaaS MARTも提供予定だ。黒川副本部長は、「開始時は、『バーチャルアプライアンス』『DR』『SaaS』という三つのサービスが決め手となる」という。また、ネットワールドが販売するさまざまな製品のマーケティングを担当するマーケティング本部MD部MD課の高野春菜氏は、「当社ではクラウドサービスに適した製品を多く揃えている。ニフティさんとの連携を密にしながら、販売パートナー様がクラウドサービスを提供しやすい環境をつくっていく。今後の展開としては、DRの種類の追加、セキュリティサービス、オンプレミスで対応している導入・構築支援サービスといった付加価値クラウドを提供していく」としている。

　また、NETWORLD CLOUDではネットワールドの販売パートナーがサービスを販売できるだけでなく、ニフティクラウドのユーザー企業がNETWORLD CLOUDのサービスも利用できるようにするという。ハードウェアやソフトウェアなど「モノ」を卸しているディストリビュータは、クラウドサービスが台頭しているなかで、どのように存在感を示していくかが問われていたことは否めない。しかし、ネットワールドではニフティとのパートナーシップによって、新しいクラウドサービスのビジネスモデルを構築しようとしている。黒川副本部長は、「ディストリビュータだからこそできるクラウドサービスの新しい商流を築き上げる」と意気込んでいる。