Special Issue
<ストレージメーカー座談会 2014>メーカー各社のあの手この手 好調から飛躍を目指して
2014/06/26 19:56
週刊BCN 2014年06月23日vol.1535掲載
小島(デル) 製品では、昨年8月に当社初のオールフラッシュストレージ「Dell Compellentオールフラッシュ自動階層化ソリューション」を発売しました。これは、書き込みにSLC(Single Level Cell)を使用し、読み込みをMLC(Multi Level Cell)専用にすることで、I/Oのパフォーマンスと容量をうまくバランスできるようにしています。この製品が、市場に受け入れられています。
さらに、サーバーサイドのフラッシュと自動階層化フラッシュストレージを融合する取り組みを進めています。サーバーサイドのキャッシュプールをTier 0、CompellentサイドはTier 1/2/3にして、サーバーも含めて自動階層化を行っています。
iSCSIストレージの「EqualLogic」は、オールSSDやハイブリッド型のモデルなど、SSD比率が昨年からかなり高くなっていて、販売単価を上げる取り組みがうまく進んでいます。「EqualLogic」は、IDCの調査では、22四半期連続で国内iSCSIディスクストレージシステム市場で出荷金額シェアNo.1を達成しました。
パートナー施策でとくに力を入れているのは、他社にない特徴や、尖ったアプリケーションをもつベンダーと組むこと。そのパートナー様が強い部分で、いっしょにソリューションをつくっています。例えば、VDI構築に優れたパートナー様、マーケティングデータの分析を本業とするお客様のノウハウのパッケージ化や、医療データのシェアリング、PACS(医療画像処理システム)など、ニッチな市場も含めて、アプリケーションレイヤに踏み込んだソリューションの創造に取り組みました。それが、今後一番の差異化につながると考えています。
藤原(NEC) 全国的に拡がりを見せる「仮想化」ですが、単体ではなくシステム全体での提案に注力しました。信頼性はもちろんですが、仮想化することで格段に増えるデータへの対応、状況に応じたフレキシブルな容量追加や削除など、外付けストレージが効いてくる点はたくさんあります。こういったポイントを提案時に盛り込めるよう、支援しました。
一方で、「ストレージは難しい」というイメージは今でも残っています。もともと「iStorage」は、簡単に導入・運用できるインターフェースになっていますが、パートナー様が販売でお困りのときには、当社から技術者を派遣してサポートする取り組みを行っています。
また、パートナー様向けの技術者認定プログラムも継続実施しています。おかげさまで「iStorage」では、昨年1年間で認定取得者が1.5倍に増えました。ほかには、災害対策として手軽にスタートできる遠隔バックアップサービスの仕組みを、パートナー様向けにアレンジして新たなソリューションとして提供しています。これはNECが提供しているデータを遠隔地に転送するサービスのスキームをベースに、パートナー様のデータセンター(DC)を活用した、パートナー様のお客様向けのソリューションです。導入のハードルが高いといわれる災害対策を、手軽に導入していただくきっかけとして活用いただければと考えています。
小島由理夫
ストレージ・ビジネス本部
本部長
ストレージ製品全般の販売を統括。EqualLogicおよびCompellentの買収に伴い、5年前からビジネスの立ち上げと買収後の事業インテグレーションを担当する
コンパクトな「Dell SC4020」なら、小規模なAll Flash構成、Hybrid構成から大規模構成への拡張が可能。エンタープライズクラスのストレージがもたらす自動階層化などのメリットを、きわめてお得な価格で手に入れることができます。
●2014年はさらなる成長を 各社のフラッシュ製品が出揃う
──ここからは、今後の取り組みについてうかがいます。まず今年発売する製品について、その新機能や強みなどを教えてください。
藤原(NEC) 比較的容量単価が安価で導入しやすいeMLC(enterprise Multi Level Cell)というSSDをサポートします。当社では1年前からSLCという方式の高速なSSDを販売していますが、HDDと比較すると価格面でのハードルが非常に高い。しかし、eMLCではこの問題を解決し、不安視される書き込み制限についても監視・アラームが可能で、また保証期間内であれば、書き込み回数の上限が近づいたeMLCを無償で交換可能など、導入のハードルを一気に下げてくれることでしょう。
ほかには、SANストレージ「M100」をバックアップストレージ「HS3」に直結してバックアップできるソフトウェアがあります。バックアップサーバーが不要で構成がシンプルになるため、「外付けのストレージは面倒」と思っているお客様への提案商材としてオススメです。
また、ビッグデータの活用に最適な、大容量で安価な新アーカイブストレージの「HS6」を発売しました。
小島(デル) 当社には、買収したCompellentの技術を基にした「フルイド・データ・アーキテクチャ(Fluid Data Architecture)」という自動階層化ストレージ技術があります。この自動階層化ストレージと買収したRNA Networksの技術を組み合わせて、「Dell Fluid Cache for SAN」を発売しました。複数のアプリケーションサーバーのフラッシュをRDMA over Converged Ethernetで接続することでフラッシュプールを作成します。このフラッシュプールでデータをキャッシュすることで、アプリケーション性能の飛躍的な向上が可能になります。データはフラッシュプールやフラッシュストレージでその複製をもつので高可用性を担保しています。これを、先ほど述べた自動階層化ストレージを提案する、今年イチ押しの施策として推進します。
また、フラッシュストレージの「民主化」の観点で、「Flash price at disk」という、SSDのフラッシュストレージを、HDDと同等の容量単価にまで引き下げる価格戦略も打ち出しました。デルのフラッシュストレージは価格の柔軟性があるので、パートナーの方々にマージンを稼いでいただけると考えています。
波多野(日本IBM) 「ビジョンおよびコンセプト」「製品」という二つのアプローチを考えています。
ビジョンでは、先月、ビッグデータ分析やクラウド基盤を支える新しいストレージ製品群「Software Defined Storageシステム」を発表しました。データの増加に対して、従来のストレージ・システムや管理手法はやがて限界を迎えます。IBMは、Software Defined Storageによって、場所を問わないデータの自動管理を行い、アクセスの飛躍的な高速化と、迅速にストレージ基盤を拡大する能力を提供します。IBM Watsonの商用利用が始まるなど、お客様のあらゆるデータ・タイプへ無限の拡張性を低コストで提供する画期的な環境を構築することができます。
こうしたビッグデータへの取り組みの一方で、既存のストレージ基盤の効率化によるコスト削減に向けた新製品も投入しています。新しい「IBM Storwize V7000」は、圧縮専用エンジンによって、データを最大5分の1にリアルタイム圧縮します。他社製ストレージを含めて圧縮可能で、ストレージコスト全体を大幅に削減できます。「増え続けるデータに限りある予算で対応する」という命題へのソリューションとして、パートナー様にも大きなメリットになる商材です。
当社には、テープをファイルシステムとして使える製品「Linear Tape File System(LTFS)」があり、従来のディスクよりも高速なシーケンシャルアクセス、同様の操作性、容量単価の大幅削減を実現するソリューションです。こうした製品の活用で、ビッグデータ対応や、蓄積したデータの利活用を促進できます。IBMのテープドライブは日本で開発しており、今後、最も技術革新の可能性が高いストレージ装置といわれていますので、ぜひ注目してもらいたいですね。
波多野敦
システム製品事業本部
ストレージセールス事業部
事業部長
国内のストレージビジネスを担当。メーカーや通信、メディアなどの分野で営業職を経験。前職ではサーバービジネスを担当していた
「Storwize V7000」は、アクティブなプライマリデータのリアルタイム圧縮を可能にしたエンタープライズ・クラスの仮想化モジュラー・ストレージです。既存のストレージを含め、ストレージ導入・運用コストを大幅に削減します。
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外部リンク
日本IBM=http://www.ibm.com/jp/ja/