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<業務ソフトメーカー座談会>“特需のあと”をどう生き抜くか クラウドへの流れが本格化

2014/04/24 19:56

週刊BCN 2014年04月21日vol.1527掲載

水谷(PCA) PCAにとっても、保守サービスの売り上げを確保することが、2014年を乗り切るための大きなポイントです。当社は、消費税率が10%に改正されるまでに、既存のお客様から一度だけバージョンアップ料をいただき、保守契約を継続していただいていれば、10%対応プログラムを無償で提供する方針です。また、すでにサポートが終了している製品からのデータコンバートも保守サービスの対象にしました。従来、保守契約率が低いことが課題でしたが、2014年はこれを向上させたいですね。保守契約率を引き上げるために、何社かのパートナーとは個別の取り組みを進めています。

 もう一つは、やはりクラウドです。売上比率が、ようやく全体の2ケタ台に乗りました。3月末にかけては、1年・3年・5年といった長期契約の「プリペイドプラン」が非常に好調でした。ここでストックの売り上げを確保できていることが反動の一つの歯止めになると思っていますし、将来的に事業の大きな柱に育てる計画です。また、iOS向けの「スマートデバイスオプション」も無償提供を開始し、2014年秋にはAndroid版もリリースする予定です。これも拡販を後押ししてくれると思っています。

和田(OBC) 今後は、バージョンアップの促進に、より軸足を置いた取り組みを進めていくことになるでしょう。これまで力を入れてきた保守サービスの加入促進と合わせて、きたる消費税率10%に向けた対応を進めていきます。

 また、10%改正の数か月後に、社会保障・税番号制度もスタートします。この制度改正も相当大きいと期待しています。保守も絡んできますし、法人コードが公開され、受発注、決済などいろいろな取引に適用されていくでしょう。人事給与系にも関連してきます。これらが、社会通念的に保守サービスに加入することの重要性が広がっていくきっかけになればいいのですが……。

 並行して、クラウドの取り組みにも踏み出します。いったん、昨年11月に「奉行i8 on クラウド」を発表しましたが、消費税改正対応のニーズが想像以上に大きく、リリースを延期した経緯があります。また、OBCの基本戦略として、マイクロソフトの技術と連携するということがありますので、マイクロソフトのクラウド基盤戦略を踏まえながら、今年のしかるべきタイミングでクラウド商材を世に出すつもりです。

宇佐美(OSK) 製品対応としては、先ほども申し上げた通り、既存製品のバージョンアップを粛々とやっていくということに尽きます。また、当社は業種別のテンプレートなどにも強みをもっています。製造業、建設・不動産、物流、アパレルなど景気がよくなってきていますので、こうした分野での販売ボリュームは、今後も確保できると考えています。ただ、「特需」がどの程度の規模だったのか読み切れないので、そこは状況を慎重に見極める必要があります。

 あとは、Windows Server 2003も2015年の7月にサポートが切れます。サーバーの入れ替えとなると、業務ソフトをカスタマイズしているお客様も多くなりますので、納期を考えると早めに準備をする必要があります。なので、早急に体制を整えたいですね。

 情報系の「eValue」もラインアップにありますので、基幹系の「SMILE」と連携した提案は、従来通り続けていきます。

上野(応研) やはり「大臣エンタープライズ」の本格的な営業展開が中心施策になります。現在、販売管理も会計もまだコアの部分しかリリースしていません。開発パートナーがカスタマイズしやすいようにいろいろな工夫を盛り込んだという大きな特徴があって、そこに大きな評価をいただいているのですが、基本機能をもっと充実させていきたいという思いもあります。また、OSKさんと同様、業種向けに必要とされる機能も拡充していきたいと考えています。カスタマイズ支援機能も改良の余地があります。2013年は「大臣エンタープライズ」を何とかローンチしましたが、2014年は次の段階に向けての手を考えていきたいですね。

 さらに、社会福祉法人の会計基準が2012年に変わり、新会計基準対応ということで「福祉大臣NX」をそのときにバージョンアップしたのですが、新会計基準の移行猶予期間が来年3月までとなっています。まだまだ新基準に対応されていないお客様も多いので、システムの移行を支援していく方針です。

ピー・シー・エー(PCA)
水谷学 氏

クラウドのトップランナーとしてさらに成長を目指します。早期に1万ユーザー獲得を果たしたいですね。

●クラウドで新たなチャレンジ

──freeeなど、クラウドネイティブの会計システムも出てきていますし、基幹系のシステムであっても、モバイル端末での利用ニーズが出てきています。そうした新しいプラットフォームにはどう対応していくつもりですか。

宇佐美(OSK) 基幹系の「SMILE」については、慎重に考えています。クラウド化の検討などはかなり以前からやっていますが、どういうプラットフォームを採用するか、データベースライセンスが高額になるのではないかなど、考えなければならないことはいろいろあります。やがてはクラウドとタブレットの時代になっていくだろうと思いますが、投資の規模とタイミングは見極めなければなりません。

上野(応研) 「大臣エンタープライズ」を開発するなかでチャレンジしたのが、タブレット端末からLTEの高速通信を使って基幹システムのデータにダイレクトにアクセスできるようにするということでした。時期的にマイクロソフトの「Surface」が盛り上がっていたときでもありました。「大臣NX」でも、「販売大臣NX」の一部分の機能を実装した「販売大臣NXスマート」というアプリを用意しています。これを拡販のトリガーにしていきたいですね。

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外部リンク

OSK=http://www.kk-osk.co.jp/

応研=http://www.ohken.co.jp/

オービックビジネスコンサルタント=http://www.obc.co.jp/

ピー・シー・エー=http://www.pca.co.jp/

弥生=http://www.yayoi-kk.co.jp/