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<業務ソフトメーカー座談会>“特需のあと”をどう生き抜くか クラウドへの流れが本格化

2014/04/24 19:56

週刊BCN 2014年04月21日vol.1527掲載

●特需が残した「ゆがみ」

──岡本社長から少しお話がありましたが、とくに消費税改正特需の刈り取りでは、サポートリソースの拡充も含め、工夫が求められたと思います。どんな施策を展開されたのでしょうか。

岡本(弥生) 保守サービスとして、1シリーズ前の「弥生 13 シリーズ」から、「“あんしん”キャンペーン」を展開しています。新規ユーザーには無償、バージョンアップユーザーには特別優待価格で、最大15か月間の「あんしん保守サポート」を提供するというもので、「弥生 14 シリーズ」でもキャンペーンは継続しています。保守サポートの一環で次期バージョンが提供されますから、お客様が買い控えせずに安心して早めに買っていただく要素にはなったと思いますが、需要の全体像は想像より大きく、結果的に直前に購入が集中したということです。

水谷(PCA) 旧バージョンのユーザーが割引料金で最新製品にバージョンアップすることができ、消費税改正対応プログラムも無償提供される早割キャンペーンを7月から展開しましたが、早くから販売パートナーに提示したことで非常に効果がありました。四半期ごとに割引の内容を変更し、とにかく早く申し込んでいただいたお客様に、優先的により安く提供する取り組みを徹底しました。結果的に、四半期の締めの時期に需要が膨らんで、年間での大きな成長につながりました。

 製品戦略で他社と違うのは、2013年、当社は大きなバージョンアップや新製品のリリースを行いませんでした。消費税改正対応に専念するためです。こうした大きなイベントがあるときは、不具合を出すのが一番お客様にとってご迷惑をかけることになりますので、サポートや消費税改正対応プログラムの動作検証の人員を大幅に増やしました。販売パートナーとも連携し、「売っておしまい」ではなく、丁寧にお客様をフォローする体制をつくったことで、ご評価いただいていると思います。

和田(OBC) 2013年の5月と6月に、全国の各拠点で戦略発表会を行い、ここでOBCの今後の消費税対応やクラウド戦略をパートナーにお伝えしました。その後、10月からエンドユーザー向けイベントの「奉行フォーラム2013」を全国15か所で開催し、そのなかで消費税改正対応セミナーなども展開して非常に盛況でした。今年1月以降も、ユーザー向けに「奉行体感フェア」を開き、パートナーと協力しながら、最終的な商談の場を設けました。

 最新製品の前バージョンまでは保守サービスの一環で消費税改正対応プログラムを提供することにしましたので、どちらかというと保守サービスへの加入促進に力を入れましたが、実際はバージョンアップのニーズも非常に多かったので、導入支援のリソースもひっ迫している状況です。この状況は、5月の連休明けあたりまで続くとみています。こうした特需によって、ある種の「ゆがみ」をどう修復するかが経営の大きな課題になると考えています。

宇佐美(OSK) 当社は、消費税改正対応を売り文句にしたキャンペーンをやりませんでした。「SMILEシリーズ」は、消費税の改正も見据えてつくってきましたので、保守サービスでアップデート対応が可能なバージョンが他社よりも幅広いのが強みです。保守サービスでの対応を着実に行ってきました。

 それにしても、年明けからはコールセンターに電話が殺到しています。かつてと比べるとユーザーがそれだけ増え、保守に対する認識もお客様のなかで高まっていることで、非常に手応えを感じてはいるのですが、やはりまだアップデートが終わっていないお客様もいらっしゃいますので、4月も引き続き、最終的なフォローをしていきます。なお、消費税10%に向けても、同様に保守サービスで対応する方針です。

上野(応研) 現行製品の「大臣NXシリーズ」のお客様は、保守に加入していただいていれば、その範囲内で対応プログラムを提供させていただきました。それ以前のバージョンについては、「大臣NX」へのバージョンアップをお願いしました。

 当社主催のセミナーや、パートナー主催のセミナーに当社の講師を派遣するなどして、お客様への啓発活動も積極的に行ってきました。3月中旬の時点でも、そのニーズは消えておらず、追加で開催している状況です。

 また他社同様、コールセンターもフル稼働してリソースがひっ迫している状況です。

 パートナーとは、既存のお客様のバージョン情報や保守サービス加入状況などの情報を共有して、対応が必要なお客様から優先的に営業をかけるという販売戦略を協力して実行しました。これが大きな成果につながったと感じています。

オービックビジネスコンサルタント(OBC)
和田成史 氏

クラウドの第一弾を打ち出します。OBCの大胆な変化をみていただけると思いますし、業務ソフトの大きな変革をリードしていきます。

●保守契約が谷間を埋める

──2014年は、「特需」の反動にどう備えるかが各社共通の大きな課題になりそうですが、そのために何に注力していくのか、戦略をお聞かせください。

岡本(弥生) 山が高ければ高いほど、それだけ谷は深くなります。クラウドも次の成長の柱として期待はしていますが、谷を埋めるという意味では、まだまだと考えていて、より重要になってくるのは、保守サポート加入者を増やすことだと捉えています。もともと「あんしん保守サポート」にご加入いただいていれば、今回の消費税改正対応も今後の法令改正対応も、追加の負担なく対応できるようになっています。今回の消費税改正では、新規のお客様ももちろんいらっしゃいましたが、非常に多くの更新需要がありました。こうしたお客様に、先ほどお話しした「“あんしん”キャンペーン」を引き続き訴求していきます。15か月間無償もしくは特別価格で保守サポートを体験していただくことでその価値をご理解いただき、その後、通常料金で継続してご利用いただくことができれば、谷もそれほど深くはならないでしょう。

 そのために非常に重要な存在の一つが、会計事務所の当社パートナー網である弥生PAP会員です。直近で5500事務所ほどですが、「弥生ドライブ」を使うには「あんしん保守サポート」に加入している必要がありますので、サポート加入を後押しする要素になっています。

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外部リンク

OSK=http://www.kk-osk.co.jp/

応研=http://www.ohken.co.jp/

オービックビジネスコンサルタント=http://www.obc.co.jp/

ピー・シー・エー=http://www.pca.co.jp/

弥生=http://www.yayoi-kk.co.jp/