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<社会インフラ向けソリューション特集>日立システムズ 「社会インフラ事業グループ」を新設 2020年までに売り上げ倍増へ
2014/04/10 19:55
週刊BCN 2014年04月07日vol.1525掲載
寺尾浩俊 社会インフラ事業グループ 社会情報サービス事業部長、
鏡原正路 社会インフラ事業グループ 社会営業統括本部本部主管
「東京五輪」を視野に
日立システムズが社会インフラ領域に注力する理由は主に二つ。国内の社会インフラの老朽化対策ニーズの高まりと、アジア新興国を中心とする成長市場の社会インフラへの投資拡大にある。日立グループ全体でも、社会インフラ事業に経営資源を重点的に割り当てており、ビジネス的にも大きな成功を収めつつある。だが、SIerである日立システムズは、日立グループのITソリューション事業を担う中核会社とはいえ、単独で担える社会インフラ事業は限られている。そこで新設の「社会インフラ事業グループ」を軸に、日立グループと連携して展開する事業領域と、日立システムズが主体的に拡大を目指す事業領域の両方をバランスよく伸ばしていく。例えば、日立製作所が強みとする鉄道分野では、日立システムズが日立グループの一員としてビジネスに参加する。都市部で導入の機運が高まっているライト・レール・トランジット(LRT)や、ライト・レールのバス版に相当するバス・ラピッド・トランジット(BRT)に適用できるITシステムについては、「日立グループとの連携ビジネスで培った当社のノウハウが生かせる分野」(山中大三郎・常務執行役員社会インフラ事業グループ長)と自信を示す。
少子高齢化や産業構造の変化で、都市交通のあり方も変わりつつあり、高齢者や女性、子どもなどが利用しやすいきめ細かな交通サービスが求められている。そこで、LRTやBRTを想定した交通社会ソリューション「ハイパーダイヤ(Hyperdia)」の開発を推進。時刻表(ダイヤ)作成や運賃管理、整備管理などの輸送業務を支える情報システムと、旅客向けに運行状況の通知や経路検索などのサービスを提供するシステムを有機的に組み合わせたものだ。「ハイパーダイヤ」には、日立製作所とともに鉄道やバス事業者向けのシステム構築を長年にわたって取り組んできたノウハウが生かされており、これらシステム一式をメンテナンスフリーのクラウドサービスとして事業者に提供している。さらに旅客向けサービスとしては、「東京五輪の開催で外国人旅行客が増えることが見込まれるので、各国語に対応することもできるようにした」(寺尾浩俊・社会インフラ事業グループ社会情報サービス事業部長)と、次世代交通サービスにふさわしい機能を充実させている。
全国300の保守拠点をフル活用
もう一つ、日立システムズが社会インフラ事業を推進するにあたってアドバンテージとなっているのは、全国およそ300拠点で展開するサポートだ。IT会社は橋梁やトンネルをつくることはできないが、こうした設備を点検して、得られたデータをシステムに入力し、維持管理や設備更新の計画策定支援といったBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供できる。とくに、全国規模で保守サービス網を構築している同社は力量を存分に生かすことができる。社会インフラを維持管理するシステムとして日立システムズが開発した「CYDEEN(サイディーン)社会インフラ維持管理システム」は、同社が提供するフィールドサポートを含むBPOと組み合わせて活用していくことを想定している。国や自治体、あるいは社会インフラ設備を運営する企業だけではカバーしきれない部分をサポートしたり、クラウド型で提供する「CYDEEN 社会インフラ維持管理システム」によって設備の状況を可視化することで、効率よく維持やメンテナンスができるよう支援していくわけだ。
日立システムズは、「モノ(社会インフラ設備)」「情報(ITシステム)」「ヒト(全国およそ300か所の保守サービス拠点)」の三つをキーワードとして、「データ収集」「解析」「可視化」「分析予測」「フィードバック」といったプロセスを確立していくことで、「社会インフラ領域に向けたサービスの競争力をより一段と高める」(鏡原正路・社会インフラ事業グループ社会営業統括本部本部主管)ことを狙う。
国内では、少子高齢化に対応する新交通システム、橋梁やトンネルの老朽化対策などの引き合いが多いが、目をアジア新興国に向ければ、今まさに社会インフラを整備するための投資が旺盛に行われている。日立システムズは、中国に多くのビジネスパートナーを抱え、ASEAN主要国やインドに拠点を展開していることから、「国内で培った社会インフラ向け情報システムを、海外市場に展開することも積極的に進める」(山中常務執行役員)と、意欲を示している。社会インフラ関連事業の売上高については、2020年までに現在の倍にあたる400億円の達成を目指している。
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