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富士通 サーバー選定の「新基準」。選ばれるサーバーの三つの視点とは?  第三回「省」――三つの省力化で追求する「エコな運用」

2014/03/13 19:55

週刊BCN 2014年03月10日vol.1521掲載

 サーバー製品は「個性」がみえにくいといわれるが、運用ツールや管理ソフトウェア群などの差異、さらにはメーカーの姿勢や思想の違いによって、明確にその違いはみえてくるはずだ――。「FUJITSU Ser ver PRIMERGY(PRIMERGY)」を展開する富士通は、複雑化したICT(情報通信技術)システムのスリム化と運用の改革を「統」「柔」「省」という三つの取り組みから提案することを打ち出した。本連載では、これらの取り組みを解説してきたが、今回はいよいよ最終回。インフラ全体を一元的に運用するための取り組み「統」、物理・仮想環境を包括したシンプルなネットワークを構築するための取り組み「柔」、そして今回が、「省エネ」「省オペレーション」「仮想化による省減」を三本柱とする取り組みである「省」について解説する。

TCO削減への根強い要求

 ICTのあり方を見直す大きな契機となった東日本大震災。当時を振り返って、「震災は大きな転換点となりました」と語るのは、富士通IAサーバ事業本部IAサーバ事業部ボリュームサーバデザイン部の部長、鈴木修一氏だ。「消費電力削減のニーズに続いて、運用管理コスト削減の要望が急速に高まりました。このようなニーズに応えるために、富士通は『サーバー運用の省力化』を提案します」と話す。

 「統」と「柔」の取り組みは、サーバーシステム全体を対象範囲としていた。しかし、「省」はサーバー単体に落とし込んだ取り組みである。「『省』は『省エネルギー』『省オペレーション』『仮想化による省減』という三本柱の構成です。省力化への小さな積み重ねが、最終的にはサーバーの運用コストを大きく削減します」と、富士通IAサーバ事業本部IAサーバ事業部ボリュームサーバデザイン部マネージャーの辻孝由氏は語る。

「省エネ」を実現するデバイス

IAサーバ事業本部
IAサーバ事業部
ボリュームサーバデザイン部
部長 鈴木 修一 氏
 省エネルギーの実現では、サーバーを構成するデバイスの省電力化が第1のキーポイントとなる。

 「PRIMERGYの基本設計から見直しました。まず挙げられるのが排熱ファンの制御の最適化です。富士通研究所にて開発した、400か所の同時監視が可能なボードを使って、筐体内の温度/エアフローを観測しながら、ホットスポットの発生状況を確認することにより、排熱ファンの自動制御を最適化しました。その結果、排熱ファンの消費電力を8%低減、さらにファン以外でも、部位ごとに消費電力を“見える化”するなどの改良を重ねました。これにより、データセンターに適したチューニングに成功しました」(鈴木氏)。

 第2のキーポイントはファシリティの省力化だ。データセンターの総消費電力を抑制するには、冷却機器にかかるコストを下げることが有効だ。そのため、機器の冷却に外気を使用する「外気冷却」などのニーズにも対応した。従来、PRIMERGYは動作温度として10℃から35℃までをサポートしていたが、40℃という高温状況にも対応可能な「高温環境対応モデル」の提供を2012年6月に開始。さらに5℃から40℃までの動作温度を実現し、オプションで選択できる「アドバンスド・サーマルオプション」も2013年9月から提供している。


 「アドバンスド・サーマルオプション対応のPRIMERGYを活用することで、データセンターの空調コストを削減できるほか、空調設備を装備しないチラーレスデータセンターも実現可能です。空調温度を1℃緩和すると消費電力を約10%削減するといわれています。したがって、プラスマイナス5℃の動作温度の幅を拡張できるというのはコスト削減に大きな効果をもたらすのです」と、鈴木氏は説明する。

 また、データセンターを安定的に稼働するためには、停電などによる瞬断の対策も重要になる。一般的にはUPS(無停電電源装置)が利用されるが、初期コストが高くなる要因にもなっていた。そこで、かねてより検討されていたのがバッテリユニットをサーバーに内蔵するという解決策だ。富士通のサーバー内蔵型のバッテリユニットは約5年の長寿命を誇るニッケル・水素充電池を採用しており、初期コストの削減に寄与している。

 国内最大のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーでは、サーバー内蔵型のバッテリユニットを採用したことが大きく貢献し、データセンターなどのエネルギー効率を示す指標の一つであるPUE(Power Usage Effectiveness)において「1.044」という驚異的な高効率を達成した。

自動制御で「省オペレーション」

IAサーバ事業本部
IAサーバ事業部
ボリュームサーバデザイン部
マネージャー 辻 孝由 氏
 次なる「省力化」の対象は「オペレーション」だ。管理・運用業務を自動化するなど、人手がかかる工数や負荷を軽減することで「省オペレーション」を実現する取り組みである。

 省オペレーションのカギとなるのは、「リモートマネジメントコントローラ(iRMC)」だ。iRMCはPRIMERGYに標準搭載されている運用ソフトウェアで、サーバーの状態監視や障害対応の自動制御、遠隔操作での管理や保守などを可能にする。

 「PRIMERGYでは、専用のプロセッサであるiRMCを搭載しています。一般的なPCサーバーでは管理ソフトウェアもCPUで処理するため、CPUに余計な負荷をかけていますが、PRIMERGYでは独立したプロセッサであるiRMCが管理タスクを集中的に動作させるので、パフォーマンスが劣化しません」と、辻氏はメリットを強調する。

 iRMCは消費電力の制御を自動化する。例えば、夜間バッチの作業中は消費電力を抑えた動作にしたり、処理量の多い昼間はパフォーマンスを優先したりと、スケジュール設定による柔軟な運用ができる。強制的に消費電力を抑制するキャッピングも可能なので、節電目標の達成に役立つだろう。


 また、iRMCが優れているのはサーバーのOSに依存することなく、サーバー管理の環境を構築できる点だ。iRMCはファームウェアとして提供されるため、OSよりもハードウェアに近いところで動作し、OSの種類に左右されず、統一されたソフトウェアによって管理を行える。そのため、OSに依存せず管理ソフトウェアを統一できる。OSの種類ごとに管理ソフトウェアを使い分けるなどの無駄を省けるため、管理業務を省力化できるのだ。

 さらに、iRMCはネットワークの機能も備えているので、リモートでの管理が可能となる。辻氏は、「iRMCの機能の一つ『アドバンスト・ビデオ・リダイレクション』によって、遠隔地のサーバーのコンソール画面を管理者の手元に表示して操作できます。通常のリモートデスクトップはOSが起動するまで画面が表示されませんが、iRMCはビデオ信号を直接取得しているのでBIOS画面やOS起動時の画面も表示します。この二つの機能によって、まるでローカルのコンソールを操作するかのようにリモートサイトのサーバーを管理・設定できます」と語る。従来は管理者がアップデート内容を把握しておく必要があったが、現在、iRMCが自動で情報を取得して管理者へ通知する機能を開発しており、管理者の負担はなく、常にサーバーを最新状態に維持できる。まさに「省オペレーション」の実現である。なお、アドバンスト・ビデオ・リダイレクションはビデオ録画が可能で、作業記録を保存できる。


仮想化効果を最大化する
高パフォーマンス

 仮想化技術はサーバー統合によって管理台数を減らし、省力化を実現する。仮想化の効果を最大化するためには、いかに従来機よりも高いパフォーマンスを発揮させるかがポイントになる。

 辻氏は、「仮想化のポイントは高速化です。PRIMERGYでは最新CPUや最速メモリの搭載による基本性能の向上に加え、I/O性能の向上のための機能も盛り込み、システム全体での性能向上と最適なサーバープラットフォームの提供を実現しています」としている。

 ディスクのI/O性能指標であるIOPS(I/O perSecond)を高めるためにPRIMERGYに実装されているのが、SSDのほか、Cache CadeとFastPath技術によるRAIDの高速化である。Cache CadeはアクセスをSSDに振り分けるなどしてストレージのI/Oの高速処理を実現する技術。FastPathは一部の処理を無効にして無駄な処理を省き、SSDとコントローラの間のIOPSを向上させる。これらにより、PRIMERGYは最大83%のI/O性能の向上を実現しているという。

 辻氏は、「富士通における仮想化の取り組みの全体像は、ハードウェア、ミドルウェア、アプリケーションと幅広い分野に渡っていますが、『省』の取り組みではPRIMERGYの基本となるハードウェア性能の向上に力を注いでいます」と強調する。

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 「統」「柔」「省」の三つの取り組みによって、PRIMERGYがいかにしてシステム運用を変えるのかを解説してきた。サーバー管理者の課題は多方面へ広がっており、求められるスキルも高まっている。属人化の防止と業務の標準化を実現するには、「シンプルな運用」がかつてないほど重要になっている。この連載を通じて、PRIMERGYが理想的なサーバー運用を実現し、ICTのスピーディーな活用、さらにはTCO削減に大いに貢献するということがおわかりいただけただろう。

富士通株式会社
URL http://jp.fujitsu.com/platform/server/primergy/
TEL 0120-933-200 (富士通コンタクトライン)
受付時間 9:00~17:30(土・日・祝・年末年始除く)
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外部リンク

富士通=http://jp.fujitsu.com/