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富士通 サーバー選定の「新基準」。選ばれるサーバーの三つの視点とは? 第二回「柔」――複雑なネットワークをシンプルに繋ぐ
2014/03/06 19:55
週刊BCN 2014年03月03日vol.1520掲載
課題の解決やコストの削減を「柔」で実現
プロダクト開発統括部
ネットワーク開発部
マネージャー 西 周平 氏
最近は、SANの領域で用いられていた「ファブリック接続」をイーサネット領域でも用いる「イーサネット・ファブリック」が注目されている。ネットワークを仮想化するトレンドは、今後ますます大きなうねりになるだろうというのが市場の方向性だ。ユーザーの導入事例も増えつつあり、普及のフェーズに入ったといえる。つまり、LANとSANなどが同じネットワーク・プラットフォームに集約されているのだ。
西氏は、「スマートデバイスの増加やBCP対策の設計で重要さが増しているのは『柔軟さ』です」と説明する。加えて、「ファブリックは複数のネットワークスイッチを仮想的に、あたかも一つのスイッチであるかのように扱う技術です。しかし、どのように接続し、設定・管理すればいいのかと悩む企業は多いです」としている。そこで富士通では、PRIMERGYで、管理上の課題解決、構築コストや運用コストを削減するために「柔」という取り組みを展開している。
ネットワーク同士の接続時も、同一ベンダーの機器で構築できるとは限らない。そのため互いのプロトコルなどを考慮した設計・接続をしなければならず、高度なスキルが求められる。ならば、構築・運用をシンプル化して管理を簡単にする新しいアプローチが必要だ。富士通では、「柔」の取り組みでサーバーを中心とするネットワークの柔軟さを確立して、サーバーシステム全体での最適化や簡単な接続と管理を可能にするアーキテクチャを提供している。
求められるのはシンプルさ
PRIMERGYは、物理・仮想環境の両方を包括しつつ、サーバーやストレージ、ネットワークに接続可能なシンプルな仕組みを追求している。この“シンプルな接続”を実現するコアとなる技術が富士通の「コンバージド・ファブリック」だ。複数台の物理スイッチを1台の仮想スイッチに統合して構成し、ファブリックを自動構築するテクノロジーである。「管理者は、ファブリック内部のスイッチ間の接続部分の設定などを考慮する必要がなくなります。サーバーやストレージ、外部ネットワークとの接続部分の設定を行うだけでよいので、導入・運用保守を劇的に効率化します」。西氏はコンバージド・ファブリックの強みをこのように説明する。
コンバージド・ファブリックには多数のメリットがあるが、第一のメリットは「どこでもつながる」ということである。コンバージド・ファブリックでは、アップリンクポートをあたかもサーバーのLANポートのように見せる技術を備え、サーバー管理者にとって、複雑な接続を意識することなく簡単に接続できる。本来、ネットワーク同士をつなげるには冗長構成を考慮した上で、そのためのプロトコル選定や構成設計など難解な技術が必要だったが、コンバージド・ファブリックをネットワークにつなげる場合は、新しい技術や仕様を意識する必要がなく、簡単に高機能なシステム統合が可能になるのである。
また、コンバージド・ファブリックにはいくつかの動作モードが用意されている。一つは「ホストモード」である。「ユーザー側のネットワークからアップリンクポートをみたとき、あたかも一つの大型サーバーが接続しているようにみえます。ネットワーク同士ではなく、単純にネットワークとサーバーを接続するようなかたちになります。まるで、パソコンのLANケーブルをつなぐだけで使えるような手軽さを実現しています」(西氏)という。
もちろん、従来通りのネットワークとして利用したい場合は「ネットワークモード」を利用すれば問題ない。もう一つのモード「SANモード」では、FCoE(Fibre Channel over Ethernet)のスイッチとして動作。管理者は、ファブリックを仮想的に分割した仮想ファブリック単位でこれらのモードを自由に使い分けることができる。
物理・仮想のスイッチとサーバーをGUIで管理
コンバージド・ファブリックの強みの一つとして、プロファイル情報をファブリック全体で共有している点が挙げられる。西氏は、「ファブリック全体でプロファイルの設定情報を共有します。そのため、1台にトラブルが生じても機器を交換するだけで機器の設定情報がファブリックから流し込まれます。ネットワークの冗長設定も引き継がれるので、管理者は設定情報のバックアップと復元の手間がなくなります」と説明する。増設作業においては、従来ならば、1週間から1か月程度は必要になる作業が、ネットワークに限っていえばわずか数分から数十分に短縮できるのである。ネットワークそのものの設定が自動になるので、付随するネットワークの設定も自動になるなど、大規模サーバー群の管理者にとっては業務の劇的な効率化を実現することになる。
また、複数の物理的なスイッチで構成されるネットワークの上に、仮想ファブリックを設定できる。これらの仮想ファブリックは最大3000まで構成でき、それぞれが独立したネットワークとして動作する。「あたかも物理的にネットワークを分けているかのように動作します。この仮想ファブリック上で従来のVLANを動作させることも可能です」と、西氏は強調する。
多機能なファブリックをネットワークのスキルなしで設定・管理するには、GUIにすぐれた管理ツールが必要となる。それがコンバージド・ファブリック・スイッチを簡単に設定するツール「FUJITSU Software ServerView Fabric Manager(SVFAB)」だ。「VMware vCenter Server」「Microsoft System Center 2012」など他社の統合管理プラットフォームを利用している管理者にもプラグインで提供しており、管理者が普段から慣れたツールをそのまま継続して利用できる。
「SVFABを使うことによって、物理・仮想のスイッチや物理・仮想マシンもまとめて“見える化”して設計、管理できます。Top of Rack用のスイッチ、スイッチブレード、管理ツールのSVFABを組み合わせてコンバージド・ファブリックを構成します。サーバー目線でのシステム管理を実現するので、サーバー管理者にとって扱いやすいのが最大の特長です」と、西氏は強調する。
管理も自動化されているのが「柔」の取り組みの最たるところだろう。西氏は、「仮想マシンのプロファイルをもっているので、ネットワーク上を仮想マシンが移動しても、SVFABが自動的に検出して移動先にプロファイルを適用します。そのため再度の設定作業は不要で、運用が非常に柔軟になります」としている。
FCoEの設定は、一般的に難易度が高いといわれるが、SVFABならばGUIで容易に操作が可能。高度なスキルを要求されるFCoEの管理は属人化しやすいが、SVFABを利用することで回避できる。PRIMERGYとSVFABを用いるネットワーク構成は、データセンターを運用する情報サービス事業者に採用された事例もある。コンバージド・ファブリックを構成して環境の複雑化を解消しつつ、リソースの効率利用を実現してコストも最適化したのである。システムを統制しながら柔軟性を担保する運用を実現するのだ。
最終回となる次回は「省」の取り組みを紹介する。
URL http://jp.fujitsu.com/platform/server/primergy/
TEL 0120-933-200 (富士通コンタクトライン)
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