Special Issue
日本事務器 創業100周年に向けて描くシナリオ IoT、海外進出を見越した戦略を立案
2013/10/24 19:55
週刊BCN 2013年10月21日vol.1502掲載
オンプレミスとクラウドの両輪
NJCには、情報システムの基盤からアプリケーションソフトの開発・運用・保守までを一気通貫で提供する力がある。全国に営業・サービス拠点を設置しており、どこに所在するユーザー企業・団体にも、均一のサービスを提供することによって、全国区のSIerとしてのポジションを築いた。とくにヘルスケア、文教、食品製造、サービスの業種に強く、ヘルスケアでは病院だけでなく、介護施設や健診機関までをカバーし、ほぼすべての業務を支援できるITソリューションを揃えている。6年ほど前にトップに就いた田中社長は、クラウドのビジネスポテンシャルを見抜いて、就任直後からクラウド事業を推進。今ではオンプレミス型システムに加えて、クラウド関連サービスも提供できる体制を築いた。
「90周年を迎える2014年のキーワードは『両輪』。クラウドというコンピュータの利用形態は合理的で、もっと普及する。今後もクラウド技術の習得には労を惜しまない。ただ、オンプレミス型システムのニーズもあり、今後もゼロにはならないだろう。長くお客様のシステムを開発・運用しているだけに、オンプレミス型システムの貴重なお客様の資産を引き続き守ることはNJCの責務。『オンプレミス型だけ』『クラウドだけ』ではなく、どちらも提供できることが当社の強みだ」と田中社長は話しており、両方のビジネスに対応することを基本方針にする考えを示している。
「IoT」に関連する技術を研究
NJCは、来年、創業90周年を迎えるが、田中社長はその先の姿をすでに構想し始めている。「2024年には創業100周年を迎える。まだ先の話だが、その時にどのような姿になっておくべきかを予想して、今から準備しておく必要がある。まだビジネスとして成り立っていなくても、10年先に主流になっている技術は、今から研究しておかなければならない」と田中社長はいう。田中社長が先の将来を見据えて研究テーマに挙げているのが、「IoT(Internet of Things)」だ。「IoT」とは、これまではネットワークにつながっていない(人・機器・情報を含めた)すべての「モノ」がネットワークにつながり、人を介さずに情報を受発信するという考え方。「これまでのITは、人が考えたことをデジタル化しただけに過ぎない。しかし、今後は違う。インターネット上で人やモノが入り混じって、ある秩序の元にやりとりするようになる」と田中社長は予測する。すべての「モノ」がつながる世界に向け新分野の研究を推進する計画だ。
このほかにも、データベース(DB)としてはみなされていなかったデータ(Unformatted data)の格納・分析方法、SDN(ソフトウェア・ディファインド・ネットワーク)やSDD(ソフトウェア・ディファインド・データセンター)など、IT機器・施設をソフトウェアベースで制御する技術、「Square」のような流通・小売業のビジネスモデルに革新を起こしているモバイル決済技術などに田中社長は高い関心を示し、必要となるサービスを新たなビジネスチャンスとして探り始めている。
ユーザーとの直接取引は不変
新たな技術の調査・研究とともに、NJCが長期視点で進めるもう一つのテーマが、グローバル対応だ。NJCは、47都道府県でビジネス展開する基盤を整えているが、海外展開はまだ調査研究段階。「私たちのお客様のなかでも海外に拠点を構えていて、海外拠点のITも面倒をみてほしいという要望を多くいただいているので、海外市場にはチャレンジする。国内で強い業種向けソリューションで海外でも通用するものを選りすぐって、扱っている他社製品もグローバルを視野に入れたものに徐々に変更する。来年度にしっかりと準備し、再来年度には本格的に取り組めるようにしたい」と田中社長は語っている。自社単独での展開にこだわるのではなく、必要であればM&Aすらも視野に入れ、果敢に取り組む方針。柔軟な考えでグローバルマーケットに挑もうとしている。「10年先にIT産業がどう変わっているか、お客様のニーズは何か、正直いって今の段階で明確な答えをもっているわけではない。NJCの強みは、お客様に直接会って要望を聞き出し、解決策を提案すること。このスタイルだけは、どんな時代であってもこだわる」と田中社長。エンドユーザーとの直接取引を90年もの間続けてきたことで得たノウハウと顧客基盤、そして新たなニーズに応えるための新技術をキャッチアップする俊敏性を重視する考えだ。創業100周年を迎える時には、今よりもさらに進化したNJCになっているはずだ。
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