Special Issue
KCCSグループ 情報セキュリティへの不安解消を支援する 日系向けは直近で約2倍に伸びる
2013/06/27 19:55
週刊BCN 2013年06月24日vol.1486掲載
情報セキュリティに商機あり
日系企業のIT支援策として力を入れているのが情報セキュリティ分野である。中国における情報セキュリティ秩序への不安などを払拭するべく、クラウド型ネットワークぜい弱性診断サービス「nCircle PureCloud」の販売を2012年末に開始した。上海法人の京瓷信息系統(上海)有限公司(KCSS)の中井一夫総経理は、「中国に進出する日系企業は、IT機器を客先に設置するオンプレミス型よりも、クラウド型のほうが好まれる」ことから、米nCircle社のアプライアンス型のぜい弱性・リスク管理システム「nCircle IP360」をベースにクラウドサービス化した「nCircle PureCloud」は、中国市場においても大型商材と位置づけている。
KCCSグループは情報セキュリティ商材の品揃えに早くから力を入れており、上海法人においても「日本でKCCSグループが取り扱っている情報セキュリティ商材を中国市場で順次展開することを検討する」(中井総経理)と、販路整備に積極的に取り組む。ほかにも、ITシステムコンサルティングサービスやネットワーク構築などについて、地元企業向けのシステム構築(SI)にも今後注力していく。
新たな10年へ向けての変革
これまで、日系SIerの中国拠点といえば、日本向けのオフショアソフト開発を中心としたビジネスが主流であったが、円安や中国の人件費の高騰によって、ビジネスモデルそのものを見直す時期にきている。KCSSも設立から10年余りが経過し、中国地場における地産地消型ビジネスの拡大へと変革を求められている。KCSSでは新たな10年へ向けて、中国地場市場に向けたITサービスの拡充に力を入れている。2012年の中国の情報サービス市場は、前年比28.5%増の2兆5000万元(約40兆円)と日本の情報サービス市場の約2倍へと拡大。情報セキュリティ領域だけを挙げても、近年ではサイバー攻撃が社会問題化しており、セキュリティ対策の強化が声高に叫ばれるようになった。
KCCSグループでは、情報保護やコンプライアンスのソリューションとしてTripwire製品の有用性にいち早く着目し、1999年から日本国内で販売・サポートを行ってきた実績がある。具体的にはIT統制やIT運用管理の「Tripwire」や、ぜい弱性・リスク管理の「nCircle」など情報セキュリティ関連の品揃えが充実しており、ノウハウの蓄積もあることから、こうした強みを生かすかたちで中国での情報セキュリティ関連事業の強化に取り組んでいく方針だ。
加速するKCCSグループの海外展開――中国でアメーバ経営、ASEANでERPを展開
KCCSグループは、中国・上海に「アメーバ経営コンサルティングサービス」を主軸に据えた法人「京瓷阿美巴管理顧問(上海)有限公司(KAMC)」を2012年6月に設立している。さらに、13年4月にKCCSグループの東南アジアにおける戦略拠点として、シンガポール法人「Kyocera Communication Systems Singapore Pte. Ltd.(KCSG)」を開設したことで、中国・上海のSI会社であるKCSSを含めてアジア3法人体制へと拡充した。また、シンガポール法人を中心にERP(統合基幹業務システム)ベンダーのインフォアや、現地通信キャリアのKDDIシンガポールと協業することで、ASEANに展開する中堅どころの製造業ユーザーをターゲットとしたERPの導入支援サービスを今年から本格的に立ち上げている。ERPは販売管理から会計、生産管理までSaaS型で提供するものだ。さらに、今年7月にはベトナムでの拠点開設も予定しており、中国に加えてASEANでの事業拡大を推進。事業フィールドを広げるとともに、進出する日系企業および京セラグループ拠点のサポート体制強化と地場に貢献する事業を目指し海外展開を加速している。
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