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<x86サーバーメーカー座談会 2013>メーカー各社、SMBの領域を攻める ――SMBやデータセンターが活況 新たな分野での伸長に期待

2013/06/27 19:56

週刊BCN 2013年06月24日vol.1486掲載

x86サーバーの差異化は可能
独自技術で拡販へつなげる

──x86サーバーは技術的な差異化が難しいともいわれていますが、各社のこだわりや独自技術、差異化のポイントなどについてお聞かせください。

芝本(富士通) 当社では、「高集約」という点にこだわっています。DCやブレードサーバーでも、「高集約」は欠かせないキーワードになっています。また、「高信頼」も重要なポイントになっています。当社は以前から、社会システム、メインフレームを提供しており、揺るぎない信頼を得ています。さらに、これまで培ってきたノウハウやサポートについても、差異化の大きなポイントになっていると思います。

高群(日立製作所) 当社の場合「高性能」「高信頼」が特色です。ハイエンドのブレードタイプになりますが、複数のサーバーブレードを一つに結合して高性能なサーバーをつくるサーバーブレード間SMP(Symmetric Multi Processor)という独自機能を提供しています。BladeSymphonyでは、全てのモデルで、Virtage(バタージュ)というハードウェアベースの論理分割機構をもっており、Virtageの上でHyper-VやKVMを動かしています。これらは非常にユニークな差異化のポイントといえるでしょう。「高信頼」では、高品質に加えて、ロングライフサポートモデルを設定し、7年間(最長10年間)の長期製品保証を実現しています。

 SMB市場に限っていえば、スーパーキャパシタを使って、電池交換の必要がないモデルやタワー型サーバーにUPSを内蔵しているモデルなども提供しており、高い評価を得ています。

木村(デル) 当社のサーバーは、リモート管理に特徴があります。iDRAC 7(デルリモートアクセスコントローラ)を使うことで、拠点が離れている場所でもRAID構成や各種デバイスの状況確認が行えます。

 差異化という点では、I/Oに注目しています。特に当社の場合は、NAND型のフラッシュをどのように活用していくのかという点で、知恵を絞っています。SATAやSASではなく、NVM Expressという新しい標準化を提唱しながら、それを採用した製品をいち早く提供しています。

小林(日本IBM) 先ほども「10年先を見据えたシステム」ということでご紹介しましたが、この「10年先を見据えた」という将来のテクノロジー動向を正確に捉え、現時点で、将来のテクノロジーに対応できるように実装できることが、他社との差異化ポイントだと考えています。10年先を見据えるには、それなりの裏づけが必要です。CPUやメモリベンダーと将来のプランについて、情報を共有し、継続して使っていただけるインフラとして提供しています。また、インテルによる仕様を超えてメモリを利用できるx86サーバーアーキテクチャ「第五世代 Enterprise X-Architecture」(eX5)なども、大きな差異化ポイントになると思います。

本永(NEC) 当社がこだわる省電力の技術、ftサーバーやHAサーバーのノウハウを活用した可用性の技術など、サーバーに関する独自の技術はいくつかあり、今後も進化していきますが、仮想化の導入が進む今こそ、サーバー単体の差異化だけでなく、システムとしての差異化が重要になってくると考えています。

 当社はサーバーやストレージ、ネットワーク、I/Oまで含めた幅広いアセットを持っていますが、特にSDN(Software-Defined Networking)に注目しており、新しいネットワーク技術である「OpenFlow」をベースに開発された「プログラマブルフロー」を世界に先駆けて製品化するなど、積極的に取り組んでいます。これらは、ネットワークの仮想化には欠かせない技術だと言えるでしょう。

日立製作所
情報・通信システム社
ITプラットフォーム 事業本部
高群史郎 第1パートナービジネス部 部長
Fumio TAKAMURE


<キーワードは「高性能」「高信頼」。
当社独自機能であるSMPやVirtageなどが、
差異化のポイントになっています。>

戦略製品はパートナーと連携して販売
垂直統合型の製品やビッグデータがカギ

──最後に、今後の戦略と、市場に投入する新製品についてお聞かせください。

本永(NEC) 4/3に発表しました垂直統合型プラットフォーム「NEC Solution Platforms」のラインアップに、中堅・中小企業向けの「Application Platform for Partners」を用意しました。これは、パートナー様のシステムインテグレーションノウハウと当社のプラットフォーム製品を融合した共同開発モデルで、プラットフォームはシステム設計から構築、検証までを済ませたインフラ基盤として出荷されるため、最小限の設定だけで稼働できます。

 是非ともパートナー様と一緒に、ビジネスを拡大させていきたいと考えています。

高群(日立製作所) 当社の強みであるサーバー・ストレージ・ソフトウエア横断ソリューションの拡充や、日立独自開発のサーバー技術であるVirtageについてもその特長をいかしていきたいと考えています。

 統合型という観点では、日立統合プラットフォーム Hitachi Unified Compute Platform(UCP)を拡充していきます。現在IaaS基盤モデルとPaaS基盤モデルを投入していますが、統合システム運用管理のJP1で培った運用ノウハウを取り入れるなど、特徴のあるソリューションとなっています。

芝本(富士通) 「PRIMERGY」は、最新技術のTime To Marketは継続していきます。 垂直統合型の製品では、仮想化・クラウド基盤「FUJITSU Integrated System Cloud Ready Blocks」や データベースシステム「FUJITSU Integrated System HA Database Ready」などの用途別のラインアップを増やしていく予定です。垂直統合型製品は、標準的な運用手順も盛り込んでいるため、パートナー様の導入・運用負荷を軽減できます。これによりパートナー様は、より上位のソリューションに注力でき、富士通はパートナー様にお客様へのイノベーション提案をしやすいインフラ環境を提供していきます。

木村(デル) コンバージド・インフラストラクチャーの関連では、アクティブ・インフラストラクチャという体系をつくっています。これは、ネットワーク、ストレージ、サーバー、さらにはその上のアプリケーションを単一のコンソールで管理できるうえ、過去のデータに基づいてプロビジョニングを自動化するというソリューションです。現在はアメリカでのみ先行発売していますが、今後はアジアでも展開していく予定です。

小林(日本IBM) 当社が発表したSoftware Defined Environmentの実現に向けて、当社が提供する管理ソフトウェア「IBM Systems Software」を拡張し、サーバー/ストレージ/ネットワーク製品も拡充していきます。また、4月に発表した「仮想アプライアンス・センター」を、より多くのパートナー様にご利用いただきたいと考えています。当センターでは、パートナー様のソリューションを仮想アプライアンス化するご支援をするのですが、これにより、お客様はアプリケーションをより容易に展開可能にするだけでなく、保守作業などの大幅な削減を可能にします。このような取り組みを今後も普及させていくことで、新しいバリューチェーンとエコシステムの創造に寄与し、ISV、SIer、お客様がそれぞれのビジネスを推進できるよう、IBMは支援していきたいと考えています。

──長時間にわたって貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。新しい需要の掘り起こしや、市場を活性化させる手厚いパートナー支援施策など、サーバー市場の活性化に期待しています。

富士通
統合商品戦略本部
PRIMERGY ビジネス推進統括部
芝本隆政 統括部長
Takamasa SHIBAMOTO


<キーワードは「モダナイゼーション」と「イノベーション」です。
ワークスタイルの変革やAR(拡張現実)など
新しい技術が重要な要素になってきています。>

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外部リンク

NEC=http://www.nec.co.jp/

デル=http://www.dell.co.jp/

日本IBM=http://www.ibm.com/jp/

日立製作所=http://www.hitachi.co.jp/

富士通=http://jp.fujitsu.com/