Special Issue
インターネットイニシアティブ(IIJ) パートナーと共に拓く新たなモバイル市場 法人・個人の両市場でサービスを拡大
2013/05/30 19:55
週刊BCN 2013年05月27日vol.1482掲載
法人用モバイル市場をけん引するIIJ
サービス戦略部
サービス企画1課長
「かつてモバイルといえばノートPCを社外へ持ち出すだけだった。現在はスマートデバイスの種類や機能も増え、従来とは比較できないほどモバイル活用の幅は拡大している。利用者や端末の認証、社内やクラウドへ接続するアクセスセキュリティの強化など、IIJは顧客の要望に合わせたモバイル環境を提供してきた」とサービス戦略部サービス企画1課長の青山直継氏は振り返る。
IIJが参入した2008年当時、3.5G(第3.5世代)への移行と定額化の動きが本格化していた。「下り3.6MBの利用料が1回線8000円以上した時代だ。この後にLTEが登場し、将来的には高速データ通信が有力な選択肢になるとわれわれは予想していた。LTE以降のモバイル時代に対する布石として早期参入すべきという経営判断があった」(青山氏)。
IIJのモバイルサービスは、キャリア(NTTドコモ、イー・モバイル)とレイヤー2(データリンク層)で接続された交換機を独自に運用し、日本最大規模のIIJバックボーンネットワークに直結している。こうした確かなインフラの上で、一般的には2段階の料金体系を、より細かな3段階化したり、固定IPアドレスサービスの提供をしたりするなど、法人ユーザーのニーズに応えることでビジネスを伸ばし続けてきた。
「法人市場では、エンタープライズの顧客にはIIJが対面営業による直販を展開し、SMB市場はパートナーとの協業を推進している」と青山氏は説明する。直販ではモバイル機器やサービスを単品としてだけでなく、クラウドや付帯するサービスなどを含めた包括的ソリューションとして提供する。すなわちモバイルは、「クラウドサービスなどをセットにした付加価値の高い提案」(青山氏)の構成要素としての機能をもつのである。SMB市場では回線や機器単品での販売も少なくないが、エンタープライズ向けと同様にパートナーが提供するSMB向けの製品やアプリケーション、ソリューションなどと組み合わせて販売しているケースが多い。
青山氏は、「2012年度はチャネル開拓を強化してきた。アライアンス締結も進み、今年度は成果が現れる。今後はパートナー経由の施策の重要度が増していくと考えている」としている。
個人市場への浸透も狙う
ネットワークサービス部
モバイルサービス課
担当課長
「スマートフォンの普及に伴い、モバイル端末の中古市場は拡大した。同時にSIMを購入してSIMフリー端末で利用するという使い方の認知も徐々に広まりつつある。そうしたユーザーはコミュニケーションツールやSNSなど、データ通信だけができればいいという場合が多い。このように用途を限定して2台目を所有するユーザーが増えている。今、まさに、SIMフリー端末、MVNOを含むモバイル通信サービスの多様化、アプリケーションの充実の3点が揃い、ユーザーは“端末・モバイル通信サービス・アプリケーション”を自由に組み合わせることができるようになった。これがこの市場の大きな変化であり、この点に個人市場の可能性があると見ている」と青山氏は話す。
同社ネットワークサービス部モバイルサービス課担当課長の佐々木太志氏は個人消費者の特性やIIJの対応を次のように説明する。「SIMフリー端末とMVNOを自ら選定する個人顧客は感度が高い。そのため、よりよい製品・サービスを見つけたら短期間で移行してしまうなど、市場は流動性に富んでいる。その変化を的確に予測することは難しい。顧客の声を真摯に聴き、そのニーズを感じながら、自分自身も一人の消費者と捉えて、市場を自らつくっていくことが重要だと考えている」。
流行や市場が向かっている方向と真逆なことをしても注目を引かないし支持も得られない。常に顧客の一歩前、二歩前を進んでいく。「IIJは方向性を間違わずに顧客の前を歩いていく」と佐々木氏は話す。
MVNEとしてモバイルビジネスを支援
IIJは、MVNOとして自社ブランドのサービスを展開する一方、MVNEとしてパートナー企業のモバイル事業立ち上げを支援してきた。IIJのモバイルパートナービジネスは、(1)法人取次、(2)法人再販、(3)個人取次、(4)個人再販などパートナーの業態に応じた協業の形を提供している。法人向けでは、SMB市場に顧客基盤を持つSIer、NIerと協業し、SMB市場にフィットしたサービスを供給している。また、個人向けには、複数のISP向けにモバイルサービスをOEM提供したり、イオンなどの量販店でのサービス取次を拡大している。IIJへモバイルビジネスの新規参入を検討する企業からの相談も増えているという。「モバイルビジネスへの参入を検討する企業がモバイルキャリアと直接交渉するのは、技術面やコスト面で、かなりハードルが高いが、MVNOであるIIJと組めば、スモールスタートでのMVNO事業の立ち上げが可能」と青山氏は話す。
最近、IIJで引き合いが増えているのは、ワイヤレスM2M分野と個人向けビジネスに関するものだという。ワイヤレスM2M分野では、クラウドサービス「IIJ GIO」と合わせたネットワーク基盤の提供を推進し、例えばタクシーの車載機としてタクシー無線のVoIP化ソリューションなどでの協業事例がある。一方、個人向けでは、店頭での取次モデルに加えて、「IIJモバイル MVNOプラットフォームサービス」としてOEM基盤サービスを展開し、スピーディーなMVNO事業の立ち上げを実現している。「インフラとしての安定性、蓄積してきたネットワーク運用ノウハウで信頼いただいている。設備のプロビジョニングと利用動向の推移や変化の予測については、ISPとして長い経験を有している。一般消費者向けにはIIJの企業ブランドの認知向上がこれからの課題だが、目新しく、付加価値の高いサービスを展開し続け、エンドユーザーに支持されるサービスを提供していきたい」(佐々木氏)。
モバイルビジネスの参入を検討する企業としては、SIerやサービス事業者が多いということだが、「自社の製品やソリューションの強みにモバイルを加えて付加価値を高めることがMVNOビジネス成功のポイントになる」。(青山氏)
ワイヤレスジャパンで販売店頭を再現
ワイヤレスジャパンでは「M2M」「パートナービジネス」「法人向けスマートデバイスの活用」の三つのテーマでブースを展開する予定だ。展示の目玉は、イオンの販売コーナーの再現。IIJmioを取り次いでみたい顧客や、個人向け市場へサービス展開を考えている事業者などへ、取り組み事例などを紹介する。MVNE(仮想移動体サービス提供者)として支援するパートナー事例も紹介するほか、モバイルビジネスに関心がある企業が、IIJとどのような組み方ができるかなどを紹介する予定だ。【Case Stydy】イオンリテール
「IIJmio」でSIMカード市場をけん引するイオン
協業による商品開発でお客さまニーズに応える
総合スーパー業界1位のイオンは、いち早くSIMカードの取り扱いを始めた企業だ。ウェブ直販ですでにお客さまの評価を得ていたIIJmioの店頭取扱いを2012年に開始し、お客さまの声をIIJへ迅速にフィードバックしながら商品・サービスの改良を協力して行ってきた。大手キャリアの代理店事業はビジネスモデルが完成されている反面、差異化が難しい。一方、日々お客さまと接するなかで発見するニーズをメーカーやMVNO(仮想移動体通信事業者)へと伝えて共に製品・サービスをつくるSIMカードは特長を強調できる戦略商品になる。 2012年、IIJmioの店頭販売を開始
住居余暇商品企画本部
デジタル統括部
イオンニューコム事業部
商品部・営業企画部
新規事業マネージャー
辻 久司 氏
イオンリテール内の携帯電話ショップ(契約代理店)の展開も担当しているイオンニューコムがSIMカード(以下、SIM)の取扱いを始めたのは2011年。日本通信の製品の取扱いが先行した後、2012年からはIIJmioも店頭のラインアップに加わった。「IIJmioはウェブ直販ですでにお客さまから高い評価を得ていた。ウェブとは異なる販売チャネルとして実店舗が加わることで、多くの幅広いお客さまにサービスを提供することが協業の目的だ」(辻氏)。
販売店とMVNOの協業が市場をつくる
現在のSIM市場はブレイクスルーが起こる直前だろうと辻氏はみている。「お客さまの動向はこの1年で変化してきた。SIM取扱い開始当初のお客さまは高いITリテラシーをもつ方が中心だった。そうしたお客さまはSIMについてよく理解しており、デバイスも自ら調達でき、購入の動機もデータ通信専用の2台目の所有が目的であるなど明確だった。しかし最近、通信費の負担に悩む主婦層に対して、家計を助ける新しい存在としてSIMが浸透しつつある」と辻氏は言う。幅広い商材を扱うイオン。そのお客さまの多くは節約志向が強いのが特徴だ。「お客さまの生活費(家計)における通信費圧縮のニーズにSIMは応えられる。実際に使ってみた主婦がその費用対効果のすぐれた点を実感し、クチコミで広がっている」(辻氏)。
主婦にとどまらずあらゆる年齢層や属性のお客さまを受け入れる実店舗をもち、販売員がフェース・トゥ・フェースで接する窓口対応を行うことこそが、SIMの普及の原動力となっている。店頭が販売チャネルとなったことで、イオンとIIJ双方が新しいお客さまの開拓に成功している。従来からの携帯電話ビジネスは飽和状態にある。しかし通信でつながることによる利便性については、まだまだ市場拡大の余地があるとイオンでは考えている。
「イオンは商人文化の企業。常にお客さまのニーズに応える商品を提供することを第一に考えている。SIMは『特定の目的に特化した使い方を提案できる』格好の商材だ。オールマイティな携帯電話ではオーバースペックだった携帯電話市場の空白地帯を埋めることができる。イオンはビジネスパートナーであるIIJなどMVNO事業者と共にお客さまに多様な選択肢を提供していく」。このようにイオンでは、SIMは携帯電話とは競合せず、お客さまのニーズの違いに合わせて相互補完するアイテムであると考えているのである。
IIJの柔軟さと迅速性が商品開発を加速
対面販売のメリットは3点あると辻氏は説明する。「商品のよさを直接説明でき、提案を行える点。お客さまはイオンという実店舗があることで、SIMは新しいカテゴリーの商材ではあるが安心して利用できる点、そしてイオンの店舗や店舗間のネットワーク自体がインフラやコンテンツとして機能する点。これらが相乗効果を生み、バリューを高めている」。SIM商品開発ではMVNOとの連携が欠かせない。イオンはIIJについて「技術やインフラの安定性の高さはいうまでもなく、お客さまのニーズに真摯に耳を傾ける企業だ。柔軟性が高く、要望があればすぐに改善する商品開発力をもっている。『ライトスタートプラン』はそうした背景から生まれた商品であり、イオンのSIM販売ビジネスの推進力となっている」と高く評価する。
今後のSIM市場について辻氏はこう予測する。「試行錯誤を繰り返しながらではあるが、確実に成長していく分野だ。データ通信がより身近になることで、お客さまの利便性はますます高まっていくだろう。これからも通信事業者様と共に商品を開発していきたい」。
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