Special Issue

<ストレージメーカー座談会>2013年も20%を超える成長を目指す パートナーと共にSMB市場を開拓

2013/03/21 19:56

週刊BCN 2013年03月18日vol.1473掲載

小松原(デル) まずは、ストレージのデルという認知度の向上、ブランド強化に取り組みます。今年1月中旬からはテレビCM、雑誌広告も展開しています。このなかで打ち出しているのが「Fluid Data アーキテクチャ」というビジョンです。ストレージは、唯一ソフトウェアが標準化されていない世界。だからこそ差別化がききやすい。デルの「Fluid Data アーキテクチャ」は、各ストレージが相互に接続してデータが自動的に行ききし、最適なストレージに最適なデータが最適なコストで保存するための技術です。現在も、その取り組みは進行中で、数年のうちには完成を見込んでいます。ブランド強化を通じて、ユーザー、パートナー様からの認知と信頼性をさらに大きく向上させたいと思います。

 もう一つの注力ポイントは仮想化ソリューション、特にVDI分野の強化です。昨年は、仮想インフラ対応バックアップソフトのAppAssure、IT管理のQuest Software、シンクライアント機器のWyse Technologyを買収し、ポートフォリオの強化を進めています。これら一連の買収を通じて、成長性の高いVDI分野でトータルソリューションを提供し、そこにストレージも含めた販売を推進していきます。

 最後はコンバードジド・インフラストラクチャ(ITシステムの統合化)の戦略強化です。リファレンスアーキテクチャとして、ストレージ製品にサーバーやネットワーク機器、ソフトウェアを統合化した「vStart」を投入していますが、昨年買収したGale Technologiesの運用管理ソフトを使い、より上位層をカバーするソリューションを提供していきます。

志渡(日本HP) やはり、パートナー様のビジネスを拡大するための施策に注力していくことを大きな柱としています。とくに、昨年12月に発表した新製品「HP 3PAR StoreServ 7000シリーズ」は、これまでハイエンド向けであった3PAR製品のレンジを拡大し、ミッドレンジに向けてチャネル販売をターゲットとした製品です。この製品を前面に出した販促活動を強力に進めていきます。

 3PAR新製品は、昨年から掲げている「HP Converged Infrastructure」という戦略に基づいて、ストレージ製品戦略を実行しています。つまり、3PAR製品というストレージ単体だけの販売ではなく、コンバードジド・インフラとして、サーバー、ネットワークも含めたすべてを一つのソリューションとして提供していきます。そのためにも製品や技術の知識に加えて、どのような売り方をすべきかをご理解いただけるようにパートナー様を支援する活動を地道に進めていきます。

馬場(日立製作所) 当社では以前、別々に事業展開していたサーバー、ストレージ、ソフトウェアなどの事業を、昨年、ITプラットフォーム事業本部として統合しました。これにより、単品売りではなく、個々の製品を組み合わせて売るプラットフォーム・ソリューションの提供を強化しています。特にVDIやビッグデータなどの旬なテーマに向けて、お客様の課題解決に繋がるよう、最適な商材の提案、ソリューション提供に注力していきます。

 パートナー様に向けては、前述したCloud on-Rampの強化を進め、これをパートナー様のサービスとして販売してもらうよう、一体となってビジネスを立ち上げていきたいと考えています。そのためパートナー様がもつ製品との共同広告やイベント、セミナーの開催などの活動に取り組んでいます。

ターゲットとする市場に向けて
最適な製品を提案する

──企業規模・業種のセグメントがあるなかで、とくにターゲットとする市場はありますか?

馬場(日立製作所) Cloud on-Rampの強化を進めるうえで、第一のターゲットはクラウドサービスを提供されている事業者の方々です。具体的には通信事業者、サービスプロバイダ、大手SIerなどがおられますが、自社での展開、あるいは当社のクラウドサービスをご利用いただいての展開など、さまざまなかたちでのサービスの提供形態を用意しています。

志渡(日本HP) 当社は、ハイエンドからSMBのお客様まで、あらゆるご要望にお応えできる製品とサービスのラインアップを揃えていますし、規模や業種を含めて、とくにここだというターゲットは定めてはいません。全方位でビジネスを推進します。

小松原(デル) 当社の主要なターゲットはミッドマーケットレンジ(100~5000人規模)のお客様です。例えば、VDIソリューションでは2000~3000のクライアント数を抱えておられて、その管理に悩んでおられる企業の方々が想定されると考えています。ほかにも、仮想化にはすでに取り組んでいるものの、VDIによって管理をよりシンプル化したい方々、さらにはBYOD(私用デバイスの業務利用)への対応を検討されている方々などを想定しています。

藤原(NEC) 販売パートナー様に向けてということでは、パートナーの方々がもつオリジナルパッケージとの連携を進めて、各業種・業務に向けたより使いやすいストレージを提供していくことだと考えています。SANストレージは業務パッケージと密接に結びついてしまうため、現状のシステムにアドオンさせることが難しいという特性があります。一方、バックアップ製品は単体でアドオンによる販売ができるため、そこを攻めたいと思います。ただ、バックアップ製品はラインアップも多いので、どのポジションにどの製品を進めるべきかをしっかりと整理して提案していきます。

雨堤(EMCジャパン) ミッドレンジ~ローエンドストレージ市場で昨年含め急激にシェアを伸ばせているのは、パートナー様のお陰です。今年もEMCとしてSMBは最も注力する市場であり、ご協力いただけたパートナー様には、より多くの収益を上げて頂くプログラム等を開発しました。これらを活用していただき、さらにシェアを伸ばせるものと期待しています。

日本HP
志渡 みず絵 担当マネジャ


仮想化環境はサーバーだけでなく、ストレージ構築が重要なカギです。そのためパートナー様とともに、ストレージの必要性を強く訴求していきます。


「HP 3PAR StoreServ7000」

HP StorageはハイエンドからローエンドまでSAN、NASの豊富なラインアップが揃う。主な製品として「HP 3PARStoreServ7000(スリーパー)」「HP StoreVirtual(LeftHand)」、スケールアウトNASの「HP StoreAll(X9000シリーズ)」

仮想化、バックアップがキーワード
2013年も20%成長以上を見込む

──今後の製品ロードマップを教えてください。

雨堤(EMCジャパン) 一つは、モバイルを含めたデータを網羅するファイルサーバー製品や、VDIなどに向けてオールフラッシュのストレージ製品を投入し、現在でもVDIインフラとしてのVNXが、パートナー様に標準ストレージとして選択されていますので引き続き強化していきます。また、EMCとVMWareの共通ビジョンとなっている「Software-Defined Data Center」の実現に向けた取り組みを進めます。これはデータセンター上のサーバー、ストレージ、ネットワーク、セキュリティをすべてソフトウェアで定義して自動化していくというフレームワークで、これによりストレージは難しいという課題の解決にも結びつきます。さらに、VSPEX(パートナー様との共同開発ソリューション)も仮想化市場に効率的に投入され始めていますので、今年はさらなる成長が見込まれています。

藤原(NEC) 1月に「iStorage Mシリーズ」の新製品として、仮想化対応や拡張性にすぐれた最上位モデル「M700」を発売しました。これによりほとんどの規模をカバーできるラインアップが揃いました。Mシリーズは、SSDをキャッシュとして使うソリューションにより、一時的な負荷による業務影響の発生を防ぐことができます。たくさんの業務が稼働している仮想化環境ではとても有効な機能で、今後もSSDを使ったソリューションは重要になると判断していますので、運用性向上のためにも強化を図ります。

 BC/DR対策に向けてはバックアップ製品の「HSシリーズ」で、よりパートナー様が販売しやすい新製品を提供する予定です。

小松原(デル) 2月20日に、重複排除機能をもつバックアップアプライアンス「DR4000」後継として、「DR4100」を発表しました。この市場は年率30~40%で伸びている有望な市場、かつSMBのお客様にまで有効なソリューションなので、圧倒的な価格競争力を武器に、市場を取りにいきたいと思います。また、買収した各企業の技術の統合段階から革新フェーズに進んでいると前述しましたが、そうした製品群を本年度中に投入できると思います。

志渡(日本HP) 昨年末の発表で新製品のラインアップが一通り揃いました。iSCSIクラスタストレージの「LeftHand」では、100万円以下のエントリモデルからハイエンドまで、スケールアウトできる製品が揃ったことで、パートナー様もお客様への提案がよりやりやすくなったと思います。

 一方、バックアップ製品では新しい重複排除技術を搭載した「StoreOnce Catalyst」を投入しました。この製品はアプリケーション/バックアップ・サーバーといった、より上位の段階でも重複排除の適用を可能にしています。これにより低帯域幅でのバックアップが可能となり、バックアップのパフォーマンスも向上します。その機能がお客様から非常に好評で、販売の強化を進めていきます。

馬場(日立製作所) 昨年5月に「Hitachi Capacity Optimization」の出荷を開始して、当社も重複排除バックアップのストレージ市場に本格参入しました。

 また、先ほどからの繰り返しになりますが、Cloud on-Ramp周りのモデルのラインアップを強化するとともに機能強化を進めます。もう一つ、フラッシュ製品についても充実を図り、ストレージの仮想機能との組み合わせによるソリューションの提供も準備しています。

──最後に今年の目標を聞かせてください。

藤原(NEC) 2012年と同様に20%成長が目標です。少なくとも市場全体の成長率は上回りたいです。そのためにも内蔵ストレージからストレージを使った健全なシステムへの移行を進めたいですね。仮想化で管理者もデータの中身が見えなくなっていることから、ニーズは大いにあると思います。

雨堤(EMCジャパン) グローバルと同じ成長の達成がミッションとして課せられているので、これまで挙げた施策を引き続き着実に進めていきます。

小松原(デル) iSCSIでは17四半期連続ナンバーワンを獲得していますが、同市場におけるリーダーポジションは当然維持します。ストレージビジネス全体では、当社はまだ、他社さんと比較すると市場のパイ自体が小さいので、他社の伸びを超える成長を目指します。よりスピード感をもって取り組みます。

志渡(日本HP) 20%を超える成長を目指します。とくに、仮想化環境はサーバーだけでなく、ストレージ構築が重要なカギとなります。パートナー様とともに、ストレージの必要性を訴求していきます。

馬場(日立製作所) 外付けストレージで国内トップシェアをもっていますが、ミッドレンジやローエンドの市場ではまだまだ弱い。そこでハイエンドの市場は確保しつつも、ミッドレンジやローエンドの市場開拓に取り組み、確実にシェアの拡大を図っていきます。

──長時間にわたり、どうもありがとうございました。

日立製作所
馬場 正彰 部長


NAS製品「VFP」をベースとしたクラウドのバックアップソリューション「Cloud on-Ramp」を、パートナー様と一体となって展開していきます。


「Hitachi Virtual File Platform 50」

VFPシリーズは本文の“Cloud on-Ramp”に対応するストレージ。その中でVFP50は小規模拠点にも容易に導入できるところが特長のモデル

関連記事

EMCジャパンとリコージャパン、SMB向けストレージソリューションで戦略的なパートナーシップを締結

NEC、バックアップストレージの新製品、膨大なデータを高速格納

デル、2013年のストレージ戦略を発表、パートナー比率を50%に拡大

日商エレ、「HP 3PAR」の販売で日本HPとパートナーアライアンスを開始

日立製作所 仮想化ストレージ「Hitachi Virtual File Platform」でデータ管理を効率化 クラウド環境へのバックアップを可能にする「Cloud on-Ramp」で販売を強化

外部リンク

EMCジャパン=http://japan.emc.com/index.htm

NEC=http://jpn.nec.com/

デル=http://www.dell.co.jp/

日本ヒューレット・パッカード=http://www.hp.com/jp/

日立製作所=http://www.hitachi.co.jp/