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「Amazon S3」準拠のストレージシステム構築ソフト「Cloudian」、エンタープライズに向けた販売を強化
2013/02/28 19:55
低コストのオブジェクトストレージシステムを構築
「Cloudian」は、ストレージシステムを構築するソフトウェア製品。複数の汎用サーバーにインストールすると、各サーバーの内蔵ディスクを仮想的に一つのストレージ領域として統合し、複数のユーザーが同時にシステムを共有できるストレージシステムを生成する。一般的な専用ストレージ装置は、データ容量がひっ迫してくると、新しい装置に買い替えたり、データを移行したりする必要がある。「Cloudian」で構築したストレージシステムは、容量に余裕がなくなったときにサーバーを追加するだけで、システム全体の容量を拡張することができる。ストレージ装置の購入には数百万~数千万円の費用がかかるが、「Cloudian」なら数十万円のサーバーを導入するだけですむ。また、経営企画室長の本橋信也取締役によれば、「『Cloudian』の販売はサブスクリプション制なので、初期コストを抑えて導入することができる」という。
「Cloudian」で構築するストレージシステムは、オブジェクトストレージというデータの配置がフラットな構造で、フォルダやディレクトリなどの階層構造をもつファイルストレージシステムと異なる。このため、データの格納場所に制約がなく、データを簡単に移動できる。さらに、「多拠点のデータセンター(DC)に複数のサーバーを配置しても、ネットワークを経由してひとつのストレージシステムとして機能することもできるので、遠隔地へのバックアップやアーカイブに最適」(本橋取締役)という。また、それぞれのサーバーが分散処理を行ってデータを自動で複製するので、仮に一つのDCが災害で停止しても、残りのDCで運用を継続することができる。
「Amazon S3」のAPIに完全準拠
最大の特徴は、アプリケーションとのインターフェースに「Amazon S3」に準拠したAPIを備えていること。これによって、クラウドストレージの事実上の標準となっている「Amazon S3」と連携するアプリケーションやアプライアンスは、接続先を変更するだけで、「Cloudian」システム上で利用することができる。ウェブアプリケーションだけでなく、企業内のストレージシステムとクラウドストレージサービスとを接続するゲートウェイ製品、企業内ストレージシステムに保存したデータをバックアップ・アーカイブする製品など、対応する製品は幅広い。「Amazon S3」に接続するインターフェースを備えたアプリケーションやサービスはすでに数百種類あるが、「Cloudian」は、すでにその多くから公式に認定を受けている。2月7日には、米CommVault Systemsの提供する統合ソフトウェアプラットフォーム製品「CommVault Simpana」との互換性が検証されたことを発表している。
これまで「Cloudian」は、国内では「ニフティクラウド」を提供するニフティや「Biz ホスティング クラウド・エヌ」を提供するNTTコミュニケーションズなど、主にパブリッククラウドに採用されてきた。しかし「Cloudian」は決してクラウド事業者がストレージサービスを提供するための製品というわけではなく、活用範囲はエンタープライズの領域に及んでいる。
例えば、コンプライアンスなどの観点から不特定多数のユーザーが利用するパブリッククラウド環境にデータを保存できない企業は、自社専用のプライベートクラウドの基盤として「Cloudian」を活用して、データのバックアップ/アーカイブができる。また、バックアップするデータの重要度によってプライベートクラウドとパブリッククラウドで保存先を使い分けて、ハイブリッドクラウドとして利用することもできる。
こうした背景から、クラウディアンは、エンタープライズに向けた拡販体制を強化している。従来のパートナーであるクリエーションライン、コアマイクロシステムズ、クララオンライン、科学情報システムズ、日本テレマティーク、TOUA、伊藤忠テクノソリューションズ、ソフトバンク・テクノロジー、NTTソフトウェアに加えて、1月30日には、新日鉄住金ソリューションズが販売パートナーとなった。
本橋取締役は、「パートナーと協業して『Cloudian』をエンタープライズの領域に広げていきたい。30日間無料の『Cloudian 評価版』を用意しているので、ぜひ活用してほしい」とアピールした。
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