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<統合運用管理 特集>富士通 クラウドと既存環境のトータルな運用管理を効率化 現場ニーズにマッチした使いやすさを追求

2012/12/20 19:55

週刊BCN 2012年12月24日vol.1462掲載

 クラウドや仮想化の普及とともに、企業情報システムがより複雑化している。その一方で、24時間365日のビジネス継続やビジネス環境の急速な変化に対応するため、安定したサービスと変化に素早く対応できる企業情報システムを、運用負荷・コストをできるだけ抑えながら実現していくことが求められている。こうしたニーズに対応するのが、富士通の統合運用管理ソフトウェア「Systemwalker(システムウォーカー)」だ。ITILをベースにクラウド基盤と既存物理環境のトータルな運用管理を効率化し、ビジネスの発展とICT統制を可能にする。

求められる運用管理の実現イメージ

クラウド、仮想化時代のニーズに対応

ミドルウェア事業本部
サービスマネジメント・
ミドルウェア事業部
西條寛
事業部長
 クラウドと仮想化技術は、急速に普及している。企業の情報システムでは、プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、オンプレミス型システムが混在する環境があたりまえになってきた。仮想化技術の進化で、システムの構成を変更する回数も増えている。システムがより複雑化する環境では、運用管理の負荷とコストは従来よりも増加している状況だ。

 システムを運用管理する担当者へは、仮想化によるシステム構築時間の短縮に対応したサービス提供時間の短縮やトラブル対処のスピードアップが要求され、さらに人の介在によるミス削減など安全性を確保した上で人件費削減などによる低コスト化も求められている。

 ミドルウェア事業本部サービスマネジメント・ミドルウェア事業部第三開発部の桝野弥千雄マネージャーは、「現在の情報システム管理者には、以前よりもスピードを上げるなかで安全で低コストな運用を実現するという難題が課せられている。そうした課題に対し、『Systemwalker』は、自動化と可視化をキーワードに製品化を進めている」と強調したうえで、次のように解説する。

 「『Systemwalker』は、トラブルの原因分析から対処、運用操作手順(ワークフロー)、災害発生時の復旧まで自動化する。可視化では、システム構成情報を一元管理し、イベントと性能、操作ログといったシステム稼働情報を見える化し、自動化機能と連動させることで、統制のとれた統合運用を実現する」。

 「Systemwalker」は、「ITIL」に基づき、安定稼働(ICTシステム管理)とサービスの最適化(ICTサービス管理)、ICT運用の統制(ICT構成管理)を実現する豊富な製品群を用意している。

 「Systemwalker」の強みは、これら豊富な製品群と、「CMDB(構成管理データベース)」というデータベースを中核にして、運用プロセスからシステムの操作までを簡単な操作で統制できることにある。さらに、他社の運用管理製品の統合も可能で、マルチプラットフォーム/マルチベンダー環境の統合管理を実現する。現在は、富士通製品以外に五つの運用管理ツールに対応している。

 ミドルウェア事業本部サービスマネジメント・ミドルウェア事業部の西條寛事業部長は、「ハードとソフトの利用状況を自動認識して簡単・安心に使用することができる当社独自の技術『スマートソフトウェアテクノロジー』で、必要最低限のパラメータを入力するだけでセットアップが済むなど、操作性にはこだわっている」と強調する。

構成情報(CMDB)を中核とした運用連動の例

富士通のシステム運用ノウハウを生かす

 「Systemwalker」の製品群のうち、代表的な製品の特長をみてみる。

 まず、自動化ツールの「Systemwalker Runbook Automation」。これまで運用手順書に従って人が行っていた運用作業を、運用プロセスデータとしてシステムに定義することで、運用管理作業全体の自動化を実現する。物理サーバーと仮想サーバーの情報を、「CMDB」が自動収集し、運用プロセスを自動適応する機能が特長で、運用管理者はサーバーの増減を意識せずに管理することができる。「『CMDB』の情報と運用が連動する機能は、他社の管理ツールにはない強み」と桝野氏は力説する。

 自動運用プロセスでは、システムごとに異なるプラットフォームの違いを“吸収”する。作業の目的に応じた、運用操作のモジュールを使用することで、異なるOSでも同じ操作で運用することができ、作業者のスキルに依存しない運用作業が可能だ。同製品には、富士通が運用する国内最大規模のデータセンター「富士通館林システムセンター」の運用で培ったテクノロジーとノウハウを取り入れている。

運用フローの作成は、ドラッグ&ドロップで簡単に行うことができる

システムの各要素を単一画面で監視

ミドルウェア事業本部
サービスマネジメント・
ミドルウェア事業部
第二開発部
清水英雄
シニアマネージャー
 可視化ツールでは、「Systemwalker Centric Manager」と「Systemwalker Service Quality Coordinator」がある。「Systemwalker Centric Manager」は、システムの導入や監視、トラブルの復旧を支援するツールで、サーバーやネットワーク、アプリケーションソフトなど、システムのさまざまな構成要素を単一画面で監視できるほか、メインフレームの運用管理も可能だ。

 さらに他社の運用管理ツールを含めて統合監視可能で、他社製品が検知したイベントまで統合して監視することもできる。

 24時間365日サーバーを運用する環境では、監視のために新たにエージェントソフトを導入するのは困難だが、「Systemwalker Centric Manager」はサーバーを止めず、システムの構成も変更せずに監視できるというインストールレス機能を備えている。また、運用監視サーバーを二重化し、トラブル時も監視を継続できるので、障害イベントを確実に検出することができる。

 「『Systemwalker Centric Manager』は、ビジュアルな監視画面でトラブル発生箇所を簡単に把握できる」とミドルウェア事業本部サービスマネジメント・ミドルウェア事業部第二開発部の清水英雄シニアマネージャーは語る。

システム品質を見える化

 一方、「Systemwalker Service Quality Coordinator」は、システム品質の見える化を可能にするツールだ。業務品質のレポート表示をはじめ、独自の分析技術とクラウド運用で培ったノウハウにより、物理・仮想リソースの利用状況まで、さまざまな角度から可視化・分析し、ICTシステム全体の維持・最適化を支援する。

ミドルウェア事業本部
サービスマネジメント・
ミドルウェア事業部
第三開発部
桝野弥千雄
マネージャー
 特長は、富士通が現場ヒアリングで収集した運用ノウハウを180種類ものレポートテンプレートで提供したり、富士通が手がけた約90件のSI案件のノウハウを元にした予兆監視機能を提供していることだ。サービス品質劣化の原因を特定し、その対策を示すなど、プロアクティブ対応に役立てることができる。

 また、過去との性能比較により、設備投資による効果の見える化や、収集した性能情報から将来的なサービス品質や性能のボトルネック項目を予測するなど投資効果の見える化にも貢献。仮想環境での必要なサーバー数や業務アプリケーションごとに必要な仮想リソースとサーバーの配置方法を提示するなど、リソース調達計画も支援する。

SMB向けの製品を投入

 運用管理製品は、ある程度の規模をもつユーザー企業向けの製品というイメージがあるが、「Systemwalker」は中堅・中小規模のシステムでも導入できる製品になっている。実際、IT機器の消費電力を抑えることを目的に、20台ほどのサーバー電源のON/OFFを自動運用・管理するために導入するユーザーも東日本大震災以降に増えているという。

 さらに富士通では、来年初旬にSMB向けに機能を絞り込んだ「Systemwalker」の新製品を投入する。西條氏は、「中小規模システムを対象に開発した製品であり、サーバー台数で4~5台のユーザーにも使ってもらえるよう、必要な機能に絞り込み、使いやすさに強く配慮した。ぜひ、導入を検討してほしい」と語っている。
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外部リンク

富士通=http://jp.fujitsu.com/