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<Windows Server 2012 特集>待望の新サーバーOS「Windows Server 2012」が登場 「The Cloud OS」で変わるITビジネス
2012/10/30 19:55
週刊BCN 2012年11月26日vol.1458掲載
激変するサーバー環境、四つの観点で機能を強化
日本マイクロソフトのサーバープラットフォームビジネス本部の藤本浩司・Windows Server製品部マネージャーは、「企業の情報システムを取り巻く環境は、激変している」と状況を説明する。「クラウドが普及して、ソーシャルメディアなど新たなネットサービスが続々と登場し、データは大容量化している。システムに求められることは変化している。それらを下支えするサーバーは従来にも増して重要なツールとなる」と藤本氏は続ける。「Microsoft Windows Server 2012」は、こうした背景の下で開発され、今秋に登場した。そのコンセプトは、「The Cloud OS」である。「Microsoft Windows Server 2012」は、約180もの機能を新しく搭載したが、ポイントは大きく四つに集約される。
つまり、(1)ユーザーとパートナー企業の柔軟な開発をサポートする「オープンな開発環境」、(2)管理の負荷を減らす「一元的なシステム管理」、(3)ユーザーの利便性と管理性を高める「共通のIDとセキュリティ基盤」、(4)運用効率を高める「プラットフォームとしての仮想化」──である。
藤本氏は、「マイクロソフトは、世界でグーグルとアマゾンに並ぶクラウドベンダー。『Microsoft Office 365』や『Bing』『Outlook.com』『XBOX Live』などで、膨大なユーザーのID管理を実現している。すでに、何億人ものユーザーの顧客管理を実現し、数十億台のパソコンに対してセキュリティパッチを提供する『Windows Update』も運用している。巨大なクラウドを運用する技術をもっている証だ」。藤本氏はこれらのサービスで培ったテクノロジーとノウハウを「Windows Server 2012」に取り入れているとアピールする。
このように、マイクロソフトが培ったクラウドでの実績に加えて、将来、企業が必要とするクラウドや仮想化の機能を包括的に取り込んでユーザーが慣れ親しんだ「Windows Server」のユーザーインターフェース(UI)で提供するサーバーOSこそ、The Cloud OSとしての「Windows Server 2012」なのだ。
仮想化に、クラウド連携。180もの機能強化を実現
「Windows Server 2012」には、約180にも及ぶ新機能・強化機能が施されている。「細かいものを含めると、改善した機能は無数にある」と藤本氏は自信をみせる。それらを分類すると、次の5項目に分けられる。(1)仮想化の進化、(2)クラウドの連携、(3)ストレージ仮想化によるコストダウン、(4)Hyper-Vレプリカ、(5)モバイルワーク──がそれだ。仮想化基盤ソフトウェアである「Hyper-V」のパフォーマンス向上は目覚ましい。藤本氏は「仮想化ソフトとして、Hyper-Vはついにパフォーマンスで首位に立ち、いよいよ追われる立場となった」と話し、「Hyper-V」の進化を強調する。そのスペック向上で特筆すべきは、従来は「4」であったVM(仮想マシン)ごとの仮想CPUが「64」に拡大された点だ。VMごとにメモリも64GBから1TBへ拡充され、ホストごとのアクティブなVMも、384から1024へと増えた。「旧バージョンでは、ライブマイグレーションは1台ずつしか行えなかった。しかし、新しい『Hyper-V』では同時マイグレーション数が無制限になり、作業負荷低減と高速化を一挙に実現した。ライブマイグレーションに時間がかかるのでは無意味だ。だからこそ、徹底的に高速化を図った」(藤本氏)。
「クラウド連携」の分野での特徴的な機能が、ネットワークの仮想化とマルチテナント対応だ。藤本氏によれば、「元々のIPアドレスを保持していても、変換して利用することができる。一つの物理ネットワーク上に、複数のネットワークを構築することができる。固定でIPアドレスを割り振っている場合でも、サーバーの統合が可能だ」という。
これは、部門ごとにサーバーを立てて利用していることが多い日本企業では、とくに歓迎される機能だ。また、自社のネットワークだけでなく、クラウドベンダーが提供する外部のクラウドサービスを利用する場合も、仮想ネットワークを用いることで、あたかも一つの自社クラウドを管理するかのように利用することができる。ネットワーク設計は、GUIで行うことでき、「真のハイブリッドクラウドを実現する手段」(藤本氏)となる。
劇的なコストダウンを実現するのは、「ストレージの仮想化」だ。一般的に、ストレージは将来必要になる容量を見越しての先行投資が必要となる。しかし、「Windows Server 2012」では、あらかじめ大容量の仮想ディスクを用意し、実際の容量は随時接続していけばいい、という利点がある。「例えば、10TBのストレージのプールとしてイメージさせ、実際には10GBのディスクが数本ほど接続されているだけ、という使い方が可能。実用量の70%に達すればアラートが管理者に届くので、必要な容量のHDDを追加すればよい。これにより、投資の最適化による劇的なコスト削減効果が見込める」(藤本氏)。
重複除去もストレージのコスト削減に大きく貢献する。複数のファイルで同じデータが使われている場合、それらを抜き出して「チャンク ストア」に保存する。ストレージの実使用量を削減することで、ストレージがあっという間に枯渇する事態を防ぎ、コストを削減する。実際に日本マイクロソフトでこの機能を試した成果を藤本氏は語る。「フォルダ数270、ファイル数1499、容量(ディスク上のサイズ)133GBのある業務用のストレージに重複除去を施したところ、80.3GBに圧縮された。25%近く削減したことになる。バックアップを大量に作成するVirtual Hard Disk(VHD)は重複データが多く、最大で80%も削減されるケースもある」。
バックアップやBCP(事業継続計画)はIT管理者にとって最重要テーマだ。「Hyper-Vレプリカ」機能は二つのサーバー間で、VMの複製(レプリケーション)を行う。複製されるVMの保存先には、自社サイトへのWAN越しでの保存はもちろん、マイクロソフトや、マイクロソフトのパートナーが提供するクラウド(パートナークラウド)など、「Windows Server 2012」が動作している環境ならどこでも指定してバックアップすることができる。そして、障害や災害などの発生時には、主サーバーに代わってレプリカの仮想マシンに業務やITサービスを引き継がせるのである。
モバイルワーク対応の強化も見逃せない。RDP(Remote Desktop Protocol)の最新バージョン「8.0」がサポートされ、高速な描画を実現する「RemoteFX メディアストリーミング」機能で、ユーザーの利便性はさらに向上した。「RemoteFXはデータのタイプを検出し、タイプに応じた描画メソッドを使用する。例えば、テキストを先行して転送して描画し、次いで画像、その後に動画を送るなどで最適化し、ユーザーにストレスを与えない描画を実現した。プロトコルレベルでマルチタッチをサポートするため、タブレット端末でも利用可能になる」(藤本氏)。
迅速な移行をサポート、ユーザーの競争力強化を支援
「Windows Server 2012」の最も大きな市場は「Windows Server 2003」や「同2008」からのマイグレーションであると藤本氏は言う。「仮想化機能が大幅に強化された『Windows Server 2012』ならば、従来のようにOSを、次いでアプリケーションをというような面倒な移行作業が不要になる。仮想化の基盤の上に『Windows Server 2003』のイメージを移行して運用することも可能。仮想ストレージならば、高額なストレージ機器に多額の先行投資をすることなく、必要に応じて買い足していけば十分に間に合う」。エディションについても大幅に見直された。「DatacenterエディションとStandardエディションの機能は同一で、異なるのは、使用することができる仮想インスタンスが前者は無制限に対して、後者は二つまでと制限されている点。仮に四つのインスタンスを使用したい場合は、Standardを二つ購入するなどで、追加すれば問題ない」。また、世界の動向と日本の市場の傾向の違いとして仮想化の集約率が挙げられる。「海外では、1台のサーバーに多数のVMを搭載し、集約率を上げている。一方、部門ごとにサーバーを用意するパターンが多い日本では集約率が低く、仮想化のメリットを最大化できているとは言い難い。だからこそ、改めて日本のユーザーのサーバー統合を推進したい。今後は利用形態やアプリケーションに合わせてベンチマークをつくる予定だ」(藤本氏)。
仮想化によるサーバーの集約、レプリカによるBCP対策、コスト削減や業務効率向上につながる機能など、ユーザー企業が「Windows Server 2012」に乗り換える動機や理由は十分に満たされている。「クオリティが高いので、SP(サービスパック)まで待たなくてよい、というのが私たちとパートナーの共通意見。早期導入のユーザーからも高評価のフィードバックをいただいている」と、藤本氏は市場の反応を話すとともに、「Windows Server 2012」への素早いマイグレーションこそが、企業の競争力を一段と高める原動力になると強調する。
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